不確実性の中の前進~グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2025ハイライト~

世界経済フォーラムが発表した『グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2025』によると、完全なジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)は推定で123年先と見込まれています。 Image: Getty Images
- 世界経済フォーラムが発表した『グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2025』によると、完全なジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)は推定で123年先と見込まれています。
- アイスランドが16年連続で1位を堅持しています。
- ジェンダー・パリティに向けた取り組みの加速が、経済的不確実性に対処するための成長力とレジリエンスの強化につながる可能性があります。
123年。世界経済フォーラムが発表した『グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2025』によると、これが完全なジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)達成までに見込まれる時間です。
長い時間ではありますが、2024年には132年とされていたため、過去12カ月間で11年分が短縮されたことになります。
このような進歩の理由は、たとえわずかであれ、不確実性の中で経済成長とレジリエンスを実現するには、ジェンダー・パリティが不可欠であるためだと考えられます。
歴史的に、女性と男性の両方のヒューマンキャピタル(人的資本)の開発に投資してきた国は、より持続可能かつ繁栄している傾向があります。
多様な人材プールを活用し、多様な視点から恩恵を受けることで、真の成長と生産性を促進する創造性とイノベーションが解き放たれるのです。
2025年のグローバル・ジェンダー・ギャップ
本調査では、2006年からグローバルなジェンダー・パリティへの進捗状況を追跡しており、同種の指標として最も長い歴史を誇ります。
第19版では、「政治参加」、「経済」、「教育」、「医療へのアクセス」の四つの次元における平等の状況を検討。世界人口の約3分の2、グローバル経済の約75%を占める、148カ国を対象としています。
全体として、グローバル・ジェンダー・ギャップの68.8%が是正され、前年比0.3ポイントの増加となりました。
指数は2024年に顕著な進展のモメンタムを見出し、測定された14の指標のうち11で改善が確認されました。格差を解消する本年の進捗速度は、パンデミック前の落ち込みをほぼ回復する水準に達しています。
低所得グループの上位国は、高所得国の過半数の経済圏よりも大きな割合でジェンダー・ギャップを縮小しています。
それでも、完全な平等は依然として123年先であり、完全なジェンダー・パリティを達成した国はまだありません。調査が開始されて以来、全体で4.8ポイントの格差を縮小してきましたが、経済的・政治的平等には依然として大きな格差が残っています。
ジェンダー・パリティにおける上位10カ国
アイスランドはジェンダー・ギャップの92.6%を解消しており、16年連続で首位を維持。同国は、90%以上の数値を達成した唯一の国です。一方、欧州は再び上位10位の大勢を占めています。
上位3カ国はすべて北欧諸国であり、フィンランドとノルウェーがそれぞれ2位と3位にランクインして2024年と同じ順位を維持しています。
英国は、2024年の14位から4位へと大幅上昇し、格差の83.8%が解消されています。これは主に、歴史的なジェンダー平等内閣の設立と、議会における女性議員数の増加により、「政治参加」のスコアが2024年の47.4%から2025年の64.3%に上昇したことが要因です。
モルドバ共和国も13位から7位に上昇し、トップ10に新規ランクインした国の一つです。格差の81.3%が解消されているほか、2006年以降、「政治参加」を3倍以上に伸ばしました。
ニュージーランドはトップ10にランクインした二つの非欧州国の一つですが、昨年の4位から5位に後退。もう一つの非欧州経済国であるナミビアは、ジェンダー・ギャップの81.1%を解消し、8位を維持しています。
「平等への疾走」を続ける国
全体として、今後100年以内に格差を解消する見込みの地域は三つあります。
顕著な地域はラテンアメリカとカリブ海地域であり、あと57年でジェンダー・パリティを達成する見込みです。この地域は2006年以降8.6ポイントの進歩があり、急速かつ協調的な進展が実現可能であることを示しています。
また、現在の傾向が継続するならば、欧州はあと76年、北米はあと89年で達成することができるでしょう。一方、中央アジアは208年、中東・北アフリカは185年を要する見込みです。
地域ブロック以外では、同報告書は100カ国のそれぞれがたどった道のりを分析しています。
進捗の速度でグループ分けすると、他の地域よりも早く前進している地域を特定することができます。バングラデシュ、エクアドル、エチオピア、メキシコ、サウジアラビアを含む8カ国は、ジェンダー・パリティを目指して「疾走」中。
所得水準で分類すると、明確なパターンが浮かび上がります。すべての所得グループで、「経済」が先行しているのです。
ジェンダー・ギャップにまつわる4つの現状
測定された「政治参加」、「経済」、「教育」、「医療へのアクセス」に関するジェンダー・ギャップは、いずれも完全には解消されていません。
ただし、政治的・経済的次元での格差は依然として最も大きいものの、サブ指数では実質的な進展が見られます。
2006年以降、女性の割合は、上級幹部、管理者、政策立案者(平等スコアで17.5ポイント増加)、専門職、技術職(7.3ポイント増加)、閣僚職(12.6ポイント増加)、立法機関(14.7ポイント増加)における女性の割合が増加しています。
一方、経済戦略、防衛、インフラなど、現在の複雑な地政学的・経済的状況において特に重要な分野の閣僚ポストでは、女性の割合が依然として低い状態が続いています。
ジェンダー・ギャップの解消による成長の再生
同フォーラムの2025年5月調査によると、チーフエコノミストの82%が、現在のグローバル経済の不確実性は「極めて高い」と回答。ジェンダー・パリティに向けた行動を加速し、競争の公平性を確保することは、良い方向への安定化要因となる可能性があります。
一方、行動の遅れや躊躇が、未活用の人材、生産性の低下、イノベーションの鈍化、社会的な結束の弱体化を通じて、完全な平等を遅らせ、経済のレジリエンスを損なう要因となっています。
つまり、女性が利益を得れば、全員が利益を得るのです。
国連持続可能な開発目標(SDGs)を達成する2030年まで5年を切った今、各国においてはこれらの取り組みを強化し、行動を加速させる時です。
ジェンダー・パリティを推進するための5つの方法は、次のとおり。
1. 労働力参加と上級管理職:女性の労働力参加率は向上しているものの、性別に基づく産業の分業は依然として存在し、女性は医療や教育など、低賃金で人中心の産業に集中しています。産業横断的な男女の代表性のバランスを改善することにより、テクノロジーの変革と人口構造の変化の中で、創造性とイノベーションが促進され、賃金格差が是正されるでしょう。
2. 教育投資の成果:女性は高等教育において男性を上回る成果を上げる傾向が強まっています。一方、労働力やリーダーシップ役割における女性の割合は依然として低く、高等教育を受けた上級管理職の女性は29.5%に過ぎません。このミスマッチは、スキル獲得に向けた準備を経済的参画やリーダーシップに結びつける、構造的的な非効率性を浮き彫りにしています。若年層がグローバル労働力の中心となる中、意思決定者は、男性と女性の労働力を統合することで、長期的な人材の恩恵を享受する機会を得ることができます。
3. キャリアパス:特に女性の間で、雇用年数と昇進が比例しない非線形のキャリアパスが一般化しています。人口構造と労働力構造の転換に対する経済的な解決策として、ケアエコノミーは依然として十分に活用されていません。養育者や介護者に必要な様々なワークライフバランスを支援する強固なケアシステムは、人員計画と経済生産性を向上させることができます。現在、女性は男性よりも55.2%高い確率でキャリア中断を経験し、その期間はより長く(男性の13.9カ月に対して19.6カ月)、これは主にフルタイムで育児を行うことが理由です。
4. 政治的リーダーシップ:世界的に、女性は政治分野、特に立法機関において著しく代表性が不足しており、議会議員に占める女性の割合はわずか3分の1未満です。立法機関において、ジェンダー平等を義務付ける161の機関がありますが、そのリーダーシップは依然として主に女性です。女性は、経済、インフラ、防衛などの閣僚ポストでも代表性が過小であり、このことが国家の優先事項や公共投資の形成に具体的な経済的影響を及ぼしています。
5. 法的枠組みの役割:進歩の主要な障害は「実施のギャップ」です。これは、ジェンダー平等法とそれらを執行するためのインフラとの乖離を指します。調査対象国では、ほぼ普遍的に実施のギャップが存在しています。高度な法的枠組みを有する国でさえも、具体的な支援には大きな差が見られます。高い法的基準を採用するだけではジェンダー・ギャップを解消することはできません。政策を実際のジェンダー・パリティという成果に結びつけるためには、強固な実施メカニズムが不可欠です。
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