チャートで見る、2025年のエネルギー転換

エネルギー転換とネットゼロ実現に向けた取り組みは、各国が独自の道を模索する、より複雑で多面的なプロセスへと進化しています。 Image: REUTERS/Vincent West
- エネルギー政策の焦点は、エネルギー三角形の3本柱である持続可能性、安全保障、公平性をすべて包含する方向へ拡大しています。
- 世界経済フォーラムのエネルギー転換指数は、これらの分野における各国のパフォーマンスと転換準備度を追跡しています。
- 2025年の指数は、地政学的・経済的な逆風の中で前進のモメンタムを示しています。この状況を分析した報告書から、4点のチャートを示します。
グローバルなエネルギー転換は、新たな時代に入っています。かつては持続可能性こそが究極のゴールだと考えられていましたが、今日のエネルギー政策の焦点は、エネルギー三角形の3本柱である持続可能性、安全保障、公平性をすべて包含する方向へと拡大しています。
世界経済フォーラムの最新の報告書「Fostering Effective Energy Transition(効果的なエネルギー転換の促進2025)」の分析は、こうした状況を反映しています。以下に同報告書から、現在のエネルギー転換の状況を物語る4点の主要なチャートを取り上げます。
1. エネルギー転換の進展は回復傾向
報告書の中心となるエネルギー転換指数(ETI)は、118カ国における現在のエネルギーシステムのパフォーマンス(持続可能性、安全保障、公平性の観点から)と転換準備度をベンチマークしています。
数年間の停滞を経て、2025年のグローバルなETIスコアは回復し、1.1%の改善を達成。これは、過去3年間の平均の2倍を超えるペースです。
手頃な価格と持続可能性の向上を背景に、エネルギーシステムのパフォーマンスは1.2%上昇し、2022年以来の水準に戻りました。これは転換準備度(0.8%上昇)を上回るペースであり、近年初の改善です。
全体的な勢いは前向きですが、同報告書が指摘するように、地政学的な混乱と経済的不確実性が高まる中で、これらのモメンタムが持続するかどうかには疑問が残ります。
2. 地域別平均ETIスコアは大きく相違
グローバル平均スコアは前向きなモメンタムを示していますが、地域別に見ると、状況はより複雑です。
先進国はETIスコアがグローバル平均を約16%上回り、転換を引き続きリード。欧州新興国は、インフラの近代化や教育の改善が進行を後押しし、グローバル平均を約4%上回るスコアで最も急速に変化している地域です。
アジアの新興国は、グローバル平均を約7%下回っています。転換準備度では強いモメンタムを示していますが、石炭への依存が続くこと、および多様化の不足が課題となっています。一方、世界平均を約5%下回るラテンアメリカは、インフラの改良や再生可能エネルギーの普及率の高さなど、様々な分野で成果を上げていますが、制度面の不安定さや、クリーンテクノロジーの拡大に必要な資金調達における格差は、改善すべき課題です。
中東・北アフリカとパキスタン(ETIスコアは世界平均を約8%下回る)は、太陽光や水素などの分野で大きな進歩を遂げています。一方で、この地域の進展は、化石燃料への依存と電力網の柔軟性の欠如により、依然として抑制されています。サハラ以南のアフリカは、農村部の電化や規制面での取り組みなどの分野で成果を上げています。ただし、投資の不足や制度上の障壁などの要因が、より広範なモメンタムを妨げており、この地域のETIスコアは世界平均を約14%下回っています。
この調査結果は、エネルギー転換は単一の道筋で進めるのではなく、各地域の強みや制約に合わせた戦略が必要であることを示しています。
3. 北欧が引き続き転換をリード
ETI ランキングの上位20カ国中16カ国は、再び先進国が占めています。
上位は、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ノルウェーです。この北欧4カ国は、国家として独自の強みを活かし、エネルギー多様化、クリーンエネルギーの導入、強固な政策枠組み、信頼性の高いインフラの4分野で高い評価を獲得しました。
1位のスウェーデンは、バイオ燃料と廃棄物、原子力を含むクリーンなエネルギーミックスと強固な政策により、エネルギー三角形の3本柱すべてで一貫した高得点を記録しています。
これらのトップパフォーマーは一貫して、効果的かつレジリエンスの高いエネルギー転換の道筋がどのように実現できるかを示しています。
4. エネルギー安全保障は重要だが進展は遅延
合理的な価格でのエネルギー源の継続的な確保を意味するエネルギー安全保障は、信頼性、多様性、レジリエンスの高いエネルギーシステムに依存しています。経済の安定、国家のレジリエンス、社会のウェルビーイング(幸福)の前提条件として、これは、エネルギー転換の重要な要素です。
過去10年間、多様化、電力網のレジリエンス向上、供給リスクの低減により、エネルギー安全保障は緩やかに改善してきました。しかし、2025年のETIでは、この分野が最も進展の遅い柱となっています。
これも、地域によって状況は異なります。米国を含む一部の国は、多様なエネルギーポートフォリオと堅固なインフラにより高いパフォーマンスを達成していますが、他の国は供給障害にさらされ、電力網の柔軟性に課題を抱えているからです。
地政学的不確実性が継続する中、エネルギー転換における安全保障は、国家および企業の戦略の中心的な課題であり続けるでしょう。報告書は、地政学的な変動に対応するためにも、このエネルギー安全保障の分野を加速させる必要があると指摘しています。
現在、エネルギーは気候関連課題を超えたものであり、経済競争力、産業政策、国家安全保障の核心を形成しています。
また、ネットゼロ実現に向けた取り組みは、各国が独自の道を模索する、より複雑で多面的なプロセスへと進化しています。同報告書が結論付けるように、エネルギー転換の成功は、各国がレジリエンスの高い、投資準備の整った連携アプローチをどのように構築するかにかかっているのです。
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