経済成長

G20議長国南アフリカが示す、デジタル公共インフラとAIに関する野心的な課題

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南アフリカはG20の議長国として、デジタル公共インフラ(DPI)とAIの拡充に重点を置いています。 Image: REUTERS

Robert Opp
Chief Digital Officer, United Nations Development Programme (UNDP)
Keyzom Ngodup Massally
Head of Digital Programmes and AI Programmes, Chief Digital Office, United Nations Development Programme (UNDP)
  • 南アフリカはG20議長国として、デジタル公共インフラ(DPI)とAIの課題に重点を置いています。
  • DPIの恩恵を最大限に活かすには、各国がこれをどのように設計および実施するのにかかっています。
  • 国連開発計画(UNDP)は G20 議長国南アフリカと連携し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、DPIとAIに関する取り組みを推進します。

デジタル技術は、経済の長期的な発展に大きな可能性を秘めています。南アフリカはG20議長国として、この変革の機会を捉え、今年のG20のデジタル・アジェンダにおいて、デジタル公共インフラ(DPI)と人工知能(AI)を優先事項に掲げています。これらは、デジタルトランスフォーメーションを支える重要な要素です。

G20議長国による過去2回の宣言を踏まえ、南アフリカは現在、DPIの社会的・経済的な動的価値をどのように測定するかについて議論を進めています。DPIは、自動的に人々や地球に潜在的な利益をもたらすのではありません。そのため、DPIによる利益を引き出すには、各国がDPIをどのように設計し、実施するかにかかっているという認識に基づいた議論が行われています。

AIの分野では、南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領による G20 Task Force on Artificial Intelligence(G20 AIタスクフォース)の設立発表を受け、G20議長国は、特にアフリカのAIにおける戦略的優先事項の推進を目指しています。これには、地域および各国のリーダーシップを通じた、アフリカ全土でAI基盤を強化するための投資とパートナーシップが必要であり、「持続可能な開発のためのAIハブ」は企業の成長に焦点を当てています。

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DPIの社会的・経済的価値を引き出す

DPIに関する議論は、南アフリカによるG20デジタル経済作業部会の中心的なテーマです。ここでは、経済や社会の長期的な発展を可能にするDPIの役割に注目。従来の費用便益分析に縛られずにDPIの価値を測るにはどうすれば良いのが重要な問いとなっています。
この問いに答えるためには、以下の側面を考慮することが助けとなるでしょう。

地域ごとの多様性

DPIマップで収集したデータの分析から、地域間に著しい違いが存在することが明らかになっています。アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカでは、DPIが教育や医療などの各分野で変革を主導。一方、アフリカやカリブ地域では、DPIを計画・試験導入している国々が、ガバナンスの欠如といった重大な課題に直面。DPIによる潜在的な影響が制限されています。主要な障壁の一つは、オンライン本人確認(eKYC)を可能にするデジタルIDおよび認証がこれらの地域で大規模に活用されていないことです。DPIの採用が進まないため、人々や政府への恩恵が妨げられています。

アフリカの勢い

アフリカでは、アフリカ連合(AU)による「Digital Transformation Strategy(デジタルトランスフォーメーション戦略)」、「AU Data Policy Framework(AUデータ政策に関する枠組み)」、および2022/2023年採択の「Interoperable Framework for Digital ID(デジタルIDの相互運用に関する枠組み)」などが進展を促し、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)および2024年のデジタル貿易プロトコルを補完。これらの枠組みは、相互運用性、有効なガバナンス、人を中心とした規制を促進しています。
一方、多くのアフリカ諸国は、依然として計画段階または試験導入段階にあります。アフリカ大陸における企業の 90% は零細・小規模・中規模企業(MSME)であり、これらが雇用の80%、GDPの40%を担っています。このうちの70%は女性による事業であり、多くが非公式な形態をとっています。DPIは、アフリカ大陸のMSMEsに対し、業務効率、資金へのアクセス、市場展開の改善などの恩恵をもたらす可能性があります。開発インパクトを軸にDPIを導入することで、さらなる雇用機会やその他の社会的利益を引き出すことができるでしょう。

UNDP(国連開発計画)は、アフリカ連合および国際電気通信連合(ITU)と連携し、各国政府、人々、そして地球のために、DPIの社会的・経済的価値を引き出す革新と実装を特定・促進するため、議長国のアジェンダを支援しています。

AIにおける公平性の格差を埋める

G20のAIタスクフォースは、AIにおける公平性の格差が新たなデジタル格差とならないようにするための重要な連携構築ラットフォームです。企業内を含め、中央集権的なグローバル政策から脱却し、長期的な開発と主権のために地域主導のアプローチへと移行するには、どのようにすればよいのでしょうか。この格差を埋めるには、企業や市民社会など、各経済圏における地域の関係者と連携し、AIの未来を形作る必要があります。UNDPのG20議長国南アフリカへの関与は、UNESCOやOECDなどのパートナーが主導するガバナンスに関する議論を補完し、以下の3つのテーマに焦点を当てています。

1. 成長と責任の原動力としての企業

スタートアップを含む企業の関係者は、AIの公平性を実現するための重要なパートナーであり、アフリカ大陸および開発途上国全体における成長の原動力です。各国でより責任ある取り組みと投資を進めるためには、さらなる協働と革新的なパートナーシップが必要です。2024年、UNDPはG7議長国イタリアおよび「企業・メイドインイタリー省」と連携し、持続可能な開発のためのAIハブに協力しました。このAIハブは、アフリカのステークホルダー、ITU、カイロ、ヨハネスブルグ、ラゴス、ナイロビ、サンフランシスコ、トロントなどにおける企業の関係者が共同で設計した、国境を越えた取り組みです。この進展を踏まえ、南アフリカはG20議長国として、企業が革新的な方法で主導し、コンピューティング、データ、人材といったAIの基盤に投資し、AIの信頼性と安全性を再定義するためのスペースを継続的に提供することが期待されています。

2. アフリカのAI基盤は形成されつつあり、活気がある

GPUクラスターからデータセンターを支える再生可能エネルギーに至るまで、アフリカのAI基盤はすでに形成されつつあります。南アフリカを拠点とするディープラーニング・インダバ がタスクフォースに参加することは、2025年に、アフリカ全体において行動と成果にコミットするG20議長国の姿勢を示しています。UNDPがガーナ大学と共著した「Every Languages Matter (すべての言語を大切に)」に関する解説記事では、アフリカにおいて、リソースが限られた言語のためのデータセットを導入する地域コミュニティの取り組みにインセンティブを与える必要性が強調されています。読み書き能力が低く、接続性が乏しい状況において、これらの言語のAIシステムへの統合は特に重要です。

3. グリーン・コンピューティング

現在、アフリカの人材のうち、十分なコンピューティング環境にアクセスできるのは 5% に過ぎず、オンプレミスの設備を持つのはわずか1%。これが、イノベーションにとって重大な障壁となっています。公益性とビジネスモデルを核とした革新的かつ行動志向のパートナーシップを通じ、持続可能な開発のためのAIハブは、AIの公平性に関する課題に取り組み、すべての人々のための責任ある企業の成長を促進する「Africa Green Compute Coalition (アフリカ・グリーン・コンピュート・コアリション)(AGCC)」の設計を主導しています。最近では、キャッサバ・テクノロジーズとNVIDIAがアフリカのAIインフラに関する画期的なパートナーシップを発表。企業やスタートアップと共に、長期的発展に向けて産業のバリューチェーンを転換する取り組みを推進しています。南アフリカがアフリカにおけるコンピューティング・ハブの一つであることは、AIの公平性格差を埋める可能性を強く示しています。今年、G20議長国南アフリカはアフリカ連合と手を取り合い、「AI in Africa(アフリカにおけるAI)」イニシアチブのために必要な連携と計画を構築することを目指しています。

G20 議長国南アフリカは、4月に東ケープ州で予定されている第2回会合の準備を進めており、その活力と勢いは称賛に値します。議長国の野心的な目標は、2025年の最初の会合で発表された国家DPIロードマップにおいて明確に示されており、 G20 議長国南アフリカによるテーマ、「連帯、平等、持続可能性」に的確に表現されています。

インド、ブラジル、南アフリカによるG20トロイカ宣言 や、193の加盟国が採択した「グローバル・デジタル・コンパクト」に基づき、 G20 議長国南アフリカは、DPIとAIに関する議論をさらに進展させるうえで重要な役割を果たし、アフリカおよびグローバル・サウスの優先課題をその中核に据えています。

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DPIの社会的・経済的価値を引き出す地域ごとの多様性アフリカの勢いAIにおける公平性の格差を埋める

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