グローバルな協力体制

地域を通じて切り開く、グローバルな協力関係への道

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特定地域における個別の協定を複製することにより、世界的な協力を強化することができます。 Image: Getty Images/iStockphoto

Mirek Dušek
Managing Director, World Economic Forum
本稿は、以下会合の一部です。世界経済フォーラム年次総会2025
  • 世界経済が不透明な中、54カ国間の経済統合を促進するアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)に代表されるように、地域協力が有望視されています。
  • 欧州の気候変動対策への取り組みは、地域間の政策協調の重要性を示しています。
  • この寄稿文は、読売新聞に「世界経済フォーラム年次総会20日開幕「地域レベルでの取り組み、世界が目指すモデルに」として掲載されたものです。

世界は、共通の重大な優先事項を前に進めるために、多国間のアプローチが必要とされるまさに今、地政学的な混乱に直面している。

気候変動が激しくなり、経済成長の見通しは不透明で各国の対立が激しくなっている。最先端の技術からメリットを最大限に引き出すことが期待できる一方、同時に発生するリスクを抑え込む方法は見つからないままだ。このような困難な状況にあっては、各国が協力するアプローチは不可能に見えるかもしれない。

だが、前進の兆候もみられる。特に地域レベルで顕著だ。経済の強化や、エネルギー政策や気候変動対策の促進、公平なデジタルエコシステムの構築といった取り組みでは進展している。逆風に負けず、世界が目指すべき目標を達成するモデルとなるかもしれない。

経済成長

国際通貨基金(IMF)の発表によると2025年と26年の世界経済の成長率は3.3%と、歴史的にも低い見通しとなっている。そうした中で経済成長を後押しする要素の一つに、地域レベルでの統合がある。

たとえば、アフリカの発展は、各国が貿易をし、人や資本の動きが活発になることで実現している。21年に運用の始まったアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)には、アフリカ55か国のうち、54か国が加盟し、14億人の人口と3.4兆ドル(約530兆円)の国内総生産(GDP)をカバーしている。

この協定によって、経済統合が進み、輸出は5,600億ドル増え、アフリカ域内の直接投資が68%、域外からの投資が122%増えた。35年までにアフリカ大陸全体で、1,800万人の新規雇用が創出される見通しだ。国際連合は現状について、「アフリカの包摂的な成長と持続可能な開発を促す潜在的な転換点を迎えている」と評価している。

貿易インフラの改善や、為替の円滑化など、AfCFTA協定の完全実施に向けては課題も残っている。もっとも、昨年は重要な進展があった。域内の商品の流れを円滑化する「ガイデッド・トレード・イニシアチブ」は39か国に拡大した。サハラ以南の最大の経済国である南アフリカとナイジェリアも含まれている。

深刻な気候変動を食い止めるために、各国は行動を加速させる必要がある。欧州の気候に関する公約は世界で最も野心的だが、最近の分析では、50年のカーボンニュートラルは達成が難しいことが指摘されている。

20年に始まった欧州グリーンディールを基に策定予定のクリーン産業ディールは、エネルギー価格を下げ、再生可能エネルギーの割合を高めて、欧州の工業生産をよりクリーンなものに導くことを目指している。

技術の面では、世界は新たな時代の入り口に立っている。最先端の技術は、グローバル経済に4兆ドル以上の価値をもたらす可能性がある。一方で、何十億もの人々がインターネットにアクセスできない、または限られた環境に置かれている。

最先端の技術がもたらすリスクを最小限に抑える保護策が講じられない限り、技術の恩恵を十分に享受することはできないだろう。

地域連携

東南アジア諸国連合(ASEAN)は、地域的なアプローチがグローバルな目標の達成に貢献できるという例を示している。

ASEAN10か国は、デジタル貿易を促す多くの枠組みを整備した。人々が安心して利用できるオンライン環境の確保やデジタル経済への中小企業の参入を支援する取り組みもある。重要なビジネス分野における経済成長の障害を取り除くのに役立っている。

何より重要なのは、「ASEANデジタル経済枠組み協定」の交渉が今年中に妥結する見通しにあることだ。責任ある公平なオンライン環境の実現によってビジネスを強化し、成長を加速させるロードマップが提供されることになる。

アフリカや欧州、アジアにおけるこうした協力は、地政学的に不安定な時代において地域的な取り組みがグローバルな目標実現に貢献できることを示している。こうした取り組みが奏功しているのは、特定の課題を進展させるための動きだからだ。

一連の取り組みが成果を上げ、他の地域にとっての指針にあたる灯台となり、好循環を生み出すことを期待したい。

ミレク・デュシェック氏 在イラク米大使館勤務などを経て、22年から世界経済フォーラム取締役。関連会合を統括するグローバル・プログラミング・グループと、対政府関係を担う地域・貿易・地政学部門を率いている。

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