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持続可能な開発を推進する、マルチステークホルダー・パートナーシップ

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官民連携、多国間イニシアチブ、NGOとの協力は、持続可能な開発を推進する強力な後押しとなっています。 Image: Gradika Aggi/Unsplash

Kathleen Noreau
Head of Strategic Partnerships and Professional Services, World Economic Forum
本稿は、以下会合の一部です。世界経済フォーラム年次総会2025
  • マルチステークホルダー・パートナーシップは、多様な専門知識、資金、リソースを活用し、持続可能な開発における複雑な課題に取り組みます。
  • 官民連携、多国間イニシアチブ、NGOとの協力は、一致した共有目標の持つ力を示しています。
  • EDISONアライアンスやファースト・ムーバーズ・コアリションのような取り組みは、持続可能な成長を実現するためのパートナーシップに向けた可能性を強調しています。

毎年、ダボスで開催される世界経済フォーラムの年次総会が近づくにつれ、マルチステークホルダー・パートナーシップの必要性がますます高まっているように感じます。1月にダボスに集まり、人工知能やバイオテクノロジーの可能性と懸念、グローバル経済の現実と保護主義的反応、社会的結束の欠如、そして気候変動の影響など、今この瞬間に存在する大きな世界的課題に立ち向かうとき、ビジネスリーダー、政策立案者、市民社会が協力する必要性を認識します。こうした協力は、これらの課題に取り組むだけでなく、持続可能かつ公平な成長、進歩、発展を実現するためにも重要だからです。

パートナーシップモデルの重要性

セクターを超えた協力は、単独では解決できない課題に取り組む上で極めて重要です。多様な視点を結集し、異なる見解、スキル、知識を組み合わせることにより、より革新的かつ創造的な解決策を導き出すことができるからです。さらに、資金、技術、専門知識、データ、洞察など、さまざまなステークホルダーから提供される多様なリソースを組み合わせることにより、課題に対してより大きな影響を与えることができます。そして最後に、複数のステークホルダーが関与することにより、正当性、信頼、説明責任の意識が高まり、さらに多くの協力者を引き付けるとともに、取り組みのスケーラビリティと持続可能性を長期的に高めることにつながります。

パートナーシップモデルにはいくつかの形態があります。官民連携は、規制能力、政策立案、公的な責務といった政府機関の強みと、企業の専門知識、効率性、資金力が組み合わさります。多国間イニシアチブの特徴は、複数の国や国際機関が協力し、国境を越えた課題に取り組むことです。NGOとの協力は、人道支援、環境保全、専門的な知識や地域主導の解決策を必要とする課題に注力します。

どのようなパートナーシップであっても、成功させるためのポイントは驚くほど一貫しています。連携するメンバーは、共通の目的に基づき、ビジョンと具体的な目標を共有することが必要です。協力関係における環境として、オープンなコミュニケーション、透明性、説明責任を共通の価値として重んじ、途中で障害に遭遇してもそれを維持しなければなりません。また、避けられない障害が現れた際には、進路を変え、進化する現実に適応できる柔軟性と俊敏性が求められます。

世界経済フォーラムにおけるコアリションとアライアンス

マルチステークホルダー・パートナーシップに関する実践例の検証は、それを模範する取り組みを促進することができます。世界経済フォーラムでは、2021年にEDISONアライアンスを設立し、デジタルインクルージョンの促進と、2025年までにデジタル経済の主要な3分野(医療、教育、金融サービス)において全世界で10億人が広く参加できるようにすることを目指しています。このグローバルな取り組みを牽引するリーダーの一例として、エリクソンが挙げられます。同社は、インドにおいてバーティ財団と提携し、300人の学生を対象としたSTEMプログラムを展開。その後さらに4校に拡大しました。さらに、エリクソンはマレーシア工科大学およびデジタル国家会社(Digital National Berhad)とも連携。同国の学生に5Gおよび新興技術に関する教育を実施し、初年度の学生数は1200人に達しています。

ファースト・ムーバーズ・コアリション」は、2050年までにネットゼロ排出を達成するために不可欠な、新興技術の需要を創出することを目指しています。低炭素製品およびサービスの購入に取り組む企業を結集することにより、これらの技術開発および展開を加速。特に、脱炭素化が困難な重工業および長距離輸送分野に焦点を当て、持続可能なソリューションへの革新と投資を促すマーケットシグナルを発信します。このコアリションの中核となるのが官民連携です。政府が政策支援やインセンティブを提供し、企業がこれらの技術を購入し、利用拡大することを約束します。

女性は、男性と比べて、健康を害した状態で過ごす時間が25%長いです。また、女性の健康に1ドルを投資するごとに3ドルの経済成長を引き出すことができ、女性の健康格差を解消することにより、世界経済は年間1兆ドル増加し、一人当たりのGDPが1.7%向上するのに相当すると、世界経済フォーラムおよびMckinsey Health Institute(マッキンゼー・ヘルス・インスティテュート)のデータが示しています。このような背景から、世界経済フォーラムは「女性の健康のためのグローバル・アライアンス」を設立しました。このアライアンスは、官民の協力を促進し、投資と資金調達モデルの解放、イノベーションの奨励、女性の健康に関する新たなグローバルアジェンダの設定を目的としています。同アライアンスによる女性の健康格差を解消するための取り組みの一つが、カーニーが開発中の「Gender Health Equity Index(ジェンダー・ヘルス・エクイティ・インデックス)」。この指標は、基準を定義し、具体的な推奨事項を共有することにより、組織がバリューチェーン全体でジェンダーに基づく健康格差の是正を推進できるようにするものです。同アライアンスは、この指標に基づくベンチマークを公開し、毎年発行される報告書を通じて進捗状況を追跡する予定です。

こうしたインスピレーションを与える事例があるにもかかわらず、官民連携には課題が伴います。多様なステークホルダーが関与しているため、共有目標や優先順位の一致を図ることは容易ではありません。さらに困難なのは、明確な指標を設定し、リスクを共有し、説明責任と透明性を確保し、法的および規制上の問題を克服し、政治的・経済的不確実性を乗り越え、財務上の持続可能性を維持する方法を決定することです。また、持続的な関与と長期的なコミットメントを確保するには、強力なリーダーシップと卓越したコミュニケーション能力が求められます。特に文化的な違いを乗り越えるためにはこれらが重要です。一方、成功した事例を研究し、そこから得た教訓を取り入れることにより、将来の官民連携は成功の可能性を高め、意義のある成果を達成する可能性が高まります。

持続可能な開発の課題は、単独の組織では対処できないほど複雑であり、相互に関連し、緊急性を要するものです。政府、企業、市民社会、学術界が協力することにより、より包括的かつ持続可能な解決策を生み出し、すべての人々にとってより公平かつ持続可能な未来を促進することができます。

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