猛暑が日常化する中、知っておきたいこと
気温上昇は、人々、広範囲にわたる環境、経済に大きな課題をもたらします。 Image: Unsplash/Marcus Kauffman
- 2024年7月までの14カ月間は、記録史上最も暑い月となりました。地球の最高気温記録は毎月のように更新されています。
- 自然を利用した解決策が、都市住民の暑さを和らげるのに役立ちます。
- 世界経済フォーラムの「気候と健康」イニシアチブは、ステークホルダーと政策立案者を結集し、地球温暖化の影響に対処しようとしています。
気候変動が世界中で加速する中、今月もまた最高気温の記録更新が相次ぎました。
米国国立環境情報センター(NCEI)が発表した最新の世界気候報告書によると、1850年に世界的な記録が開始されて以来、2024年7月は最も暑い月となりました。また、この月で、最高気温の連続記録が14カ月目となっています。
「7月の地表温度は20世紀の平均である15.8℃を1.21℃上回った」と報告書は述べています。また、記録的な気温の観測が14カ月連続となり、2015年5月から2016年5月までの記録を上回って最長になったとの記載もありました。
気温の上昇は、世界中で異常気象を引き起こしています。ハリケーン「ベリル」は、大西洋で史上初めてカテゴリー5に達したハリケーンとして、カリブ海のグレナダに上陸。NCEIによると、ハリケーンの発生要因となる世界的な海洋温度は、2024年7月までの15カ月間、記録的な高温を記録しました。
ヨーロッパでは、地中海沿岸諸国が連続して熱波に見舞われ、高い気温に関連する死者は数百人に上っています。アジアでは巨大な台風が大規模な洪水や土砂崩れを引き起こし、南極の海氷面積は7月としては過去最低を記録しました。
猛暑は大きな健康リスク
異常な暑さによる健康への影響は壊滅的なものになりかねません。2022年夏にヨーロッパを襲った熱波では、6万人以上が熱に関連する原因で死亡しました。2021年には、学者たちが43か国732か所のデータを分析。1991年から2018年の熱波による死亡者の死因の37%は気候変動に起因する可能性があると結論づけています。気温上昇はまた、マラリアを媒介する蚊の爆発的増加といった、より間接的な健康リスクを増幅させます。蚊は、気温上昇により繁殖力が強まるからです。
世界経済フォーラムの「気候と健康」イニシアチブは、さまざまなステークホルダーや政策立案者を結集し、温暖化がもたらす悪影響に対する解決策を策定しています。
暑さを増す気候への適応
今後数十年間、気温の上昇は人々や広範囲にわたる環境、経済に課題をもたらすでしょう。総合科学誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された論文によると、35億人以上の人々が、人間にとって快適とされる範囲を超える気温に適応する必要があるとのこと。
従来、人類は平均気温が11℃~15℃の地域に居住してきました。同論文では、世界的な人口の3分の1が、現在、地球上の陸地のわずか0.8%にしか存在しない平均気温29℃以上の地域に居住するようになると予測しています。
気温上昇への適応は、特に都市部において不可欠です。さまざまな戦略を適用することで、都市住民の適応を後押しすることができるでしょう。猛暑がもたらすリスクに対応するため、世界各地の都市で、費用対効果の高い実行可能なソリューションが実施されています。
- 米国フロリダ州マイアミ・デイド郡では、猛暑がもたらす脅威への認識を高める戦略として、毎年「ヒート・シーズン」を設定しています。
- ギリシャのアテネでは、1500年前のローマ時代の水道橋を修復しています。地域の灌漑に利用することで水道橋が通る地域は緑化され、周辺の気温が低下するでしょう。
- スペインのセビリアでは、健康への影響予測に基づく世界初の熱波の命名・分類システムを開発しています。
- シエラレオネのフリータウンでは、100万本の木を植える「フリータウン・ザ・ツリー・タウン(“Freetown the Tree Town)」イニシアチブを通じて、自然を利用した解決策を実践しています。
国連環境計画(UNEP)は、都市の樹木が暑い日の気温を1℃下げるというデータを引用し、都市の緑化を強く推奨しています。「都市の森や大きな公園は、地表の暖気を上空に押し上げ、冷たい空気を拡散させることで、その境界から1km近く離れた場所にも冷却効果をもたらします。緑地をつなぐことで風の通り道ができ、地域の気温を下げることができるのです」。
暑さが増す未来に向けた計画
同フォーラムの「2030年までの生物多様性都市に関する世界委員会」は、アドリアン・アーシュト/ロックフェラー財団レジリエンスセンターと協力し、自然から着想を得たソリューションを統合することを目指しています。その成果のひとつが、「ヒート・アクション・プラットフォーム(HAP)」の策定です。
HAPは、暑さと生物多様性の消失との相関関係を説明し、その関係を断ち切るためのイノベーションと規制の必要性を強調した上で、猛暑に対処するための多彩な手段を提供しています。
気候変動に寄与することなく気温を下げる自然ベースのソリューションは、今後ますます重要性を増すでしょう。都市における自然は、自然の生息地とのつながりとレジリエンス(強靭性)を高め、生物多様性を支えているのです。
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Louise Thomas and Will Hicks
2024年12月16日