サーキュラー・エコノミー

循環型社会を切り開く~データとトレーサビリティを再定義するスタートアップ13社~

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世界がサーキュラー・エコノミーに移行しようとしている今、製品と素材の持続可能性を確保するにはデータおよびトレーサビリティツールが不可欠です。 Image:  iStockphoto/Peshkova

Poonam Watine
UpLink Project Specialist, Innovation Ecosystems, World Economic Forum
Judith Ketelslegers
Investor Community & Circular Economy Ecosystem Lead, World Economic Forum
  • サーキュラー・エコノミーへと歩みを進める世界で持続可能性を高めるために、企業は、製品と素材の生産、使用、リサイクルの過程を追跡可能にする必要があります。
  • しかし、多くの業界においては、そのようなニーズをサポートするために必要なインサイト(洞察力)とデータの透明性を備えることに苦慮しています。
  • トレーサビリティ・フォー・サーキュラリティ」イノベーション・チャレンジは現在、プラスチック、ファッション、農業など、様々な業界においてこの課題の解決に取り組む13の革新的なスタートアップ企業を支援しています。

相互につながり合う今日の社会において、持続不可能な慣行の成果はグローバルなサプライチェーン全体に波及します。さらに、世界がサーキュラー・エコノミーへの移行を目指す中、製品や材料を「ゆりかごから墓場まで」追跡する能力は、もはや贅沢品ではなく必需品であると言えるでしょう。

アクセンチュアの最近の調査では、半数以上の最高経営責任者(CEO)がサプライチェーン全体にわたる持続可能性に関するデータ収集の強化を優先事項として指摘。しかし、10社中9社は、不十分なテクノロジーがビジネスにおけるレジリエンス(強靭性)構築の妨げになっていると言及しています。このギャップは、素材や製品のライフサイクル全体を追跡、トレース、最適化できる革新的なソリューションが、持続可能性を高めて廃棄物を削減し、透明性のある追跡可能なサプライチェーンの構築において重要な役割を果たす可能性があることを浮き彫りにするものです。

世界経済フォーラムのオープンイノベーションプラットフォームであるアップリンク(UpLink)とアクセンチュアは、このようなソリューションに取り組む革新的なスタートアップ企業を発掘するために、「トレーサビリティ・フォー・サーキュラリティ」イノベーション・チャレンジを開始しました。

廃棄物を削減し、倫理的な慣行を促進する透明性の高い循環型バリューチェーンを構築することにより持続可能性を再定義しているとして、以下の13社の画期的なスタートアップをUpLinkトップイノベーターに選出しています。

サーキュラー・エコノミーに向けた廃棄物フローのデジタル化

廃棄物の資源への転換はサーキュラー・エコノミーの重要な原則であり、いくつかのスタートアップ企業がこれを実現するためのソリューションを開発しています。クウォタ(KWOTA)は、二次素材やリサイクル素材のグローバルサプライチェーンをデジタル化することで、持続可能性に革命をもたらしています。同社のプラットフォームは、素材の流れを追跡し報告するだけでなく、リサイクルの増大による炭素削減量を検証し、リサイクル素材および炭素削減量の登録簿を作成します。

もう一つのスタートアップ企業であるリプレニッシュ(Replenysh)は、素材のライフサイクル全体を追跡する統合ネットワークとソフトウェアを開発しました。同社は、完全に追跡可能な素材のデジタル市場を確立することにより、ブランドや生産者が生産から回収、再利用まで予測可能かつサステナブルなサプライチェーンを構築することを可能にします。これにより、埋め立てられる廃棄物を削減し、素材の回収を促進します。

廃棄物及び余剰素材から新たな価値を生み出すため、ザ・サープラス(The Surpluss)は、企業が余剰素材や資源を価値ある資産に変えることを支援しています。活用されていない資源を持つ企業を思いがけないパートナーと結び付けることにより、新たな経済機会を生み出し、排出量を削減することができます。これによってセクター間の連携及びイノベーションと持続可能性を促進します。

サイケル(Sykell)は、再利用可能な資産の循環フローをデジタル化し、企業規模を拡大するとともに循環的な事業運営管理を可能とします。同社の綿密な追跡システムは、生産から再利用、最終的なリサイクルに至るまで、製品のライフサイクルの各段階に適用可能です。

プラスチック廃棄物管理の促進

包装材に関する拡大生産者責任(EPR)規則やその他のトレーサビリティ規制がグローバルに拡大するにつれて、包括的かつ効果的な廃棄物管理に対する需要が高まっています。生産者は自社製品のライフサイクル全体に対する責任を拡大し、廃棄物の追跡と労働者の補償を確実にする革新的なデータおよびトレーサビリティのソリューションを模索しているのです。

この課題を解決するために、スタートアップ企業であるクリーンハブ(CleanHub)は、AI(人工知能)駆動型のガバナンスプラットフォームを開発しました。このプラットフォームは、廃棄物を収集する組織が、廃棄物(特にプラスチック)を収集から最終処理まで追跡、トレース、検証することを可能にします。もう一つの新興企業、サーハス・ウェスト・マネジメント(Saahas Waste Management)は、インドを重点化。同社のトレーサビリティ・ソリューションは、調達とリサイクルにおける検証と証明を提供することにより、生産者、輸入業者、ブランドオーナーが透明性と正確性を確保することを可能にするものです。

ジーヴォ(GIVO)は、特にナイジェリアのサービスが行き届いていない地域を対象に、技術イノベーションと物理的インフラを組み合わせたソリューションを提供。同社のテクノロジー・プラットフォームは、モノのインターネット(IoT)とGPSを使用して、素材の流れをリアルタイムで監視し、排出物を追跡し、ステークホルダーへの支払いを透明化します。また、同社は、地域社会がリサイクル活動に参加できるオフグリッドの太陽光発電施設も運営しています。

倫理的かつ透明性の高い農業サプライチェーン構築

安全性が高く改ざんが不可能なブロックチェーンによる記録管理機能と、IoTのリアルタイムのデータ収集およびモニタリング機能を組み合わせることにより、サプライチェーンははるかに透明性が高く、追跡可能なものになります。これにより、最終的には持続可能性と透明性を高めてサーキュラー・エコノミーをサポートすることが可能になるでしょう。

しかし、断片化されたサプライチェーンは、多くの業界、特に農業において、依然としてトレーサビリティ上の課題となっています。ベクスト360(Bext360)は、ブロックチェーン技術、IoT、モバイルアプリを活用して、農産物や国際商品向けのエンドツーエンドのトレーサビリティ・プラットフォームを構築することにより、この課題に対処。このプラットフォームにより、農場から消費者までのリアルタイムの追跡が可能になり、製品の真正性だけでなく、倫理的な調達も保証されます。

同様に、倫理的な調達のためには、農業のサプライチェーン全体で信頼できるデータが必要です。この分野で活動するもう一つのスタートアップ企業、トレースX(TraceX)は、ブロックチェーンネットワークを使用してサプライチェーンの様々なステークホルダーを結び付けることにより、この課題を解決しています。これにより、信頼性が高く検証可能なデータのシームレスな交換が可能となるのです。

食品の品質を向上するとともに廃棄物を削減

生鮮食品業界は、品質を維持しつつ廃棄物を削減するという大きな課題に直面しています。

新興企業であるネオリシックス(Neolithics)は、AIベースの検査システムを開発することで、この課題に対応しています。このプラットフォームは、農産物の内外の特徴に関する詳細な洞察を提供するとともに、サプライチェーン全体で在庫を最大限に活用し、廃棄物を最小限に抑えるためのより良い意思決定を可能にします。

海上物流の可視性を高め、より良い資源管理を実現

ロジスティクスは、グローバルなサプライチェーンにおけるトレーサビリティの向上に重要な役割を果たし、商品の出荷地から到着地までの効率的な追跡と管理を保証します。

この分野の新興企業であるドックフロー(Dockflow)は、海上物流におけるコンテナの可視性を向上させることで、これらのプロセスの非効率性を解決することを目指しています。同社はブロックチェーンとIoT技術を活用し、コンテナと貨物のリアルタイムの追跡と監視サービスを提供。これにより、サプライチェーンのあらゆる段階で透明性と説明責任を確保します。

サプライチェーン全体にわたる倫理的な調達の確保

オープンスタンダード、積極的なモニタリング、データセキュリティを通じて、Mesur.ioは包括的なサプライチェーンインテリジェンスを提供し、電子機器、繊維、食品生産などの業界全体で持続可能性、透明性、効率性を向上させます。同社のプラットフォームは、リアルタイムの追跡、リスク管理、コンプライアンス検証を提供することにより、複雑なサプライチェーンをナビゲート。また、サーキュラー・エコノミーの原則に沿った製品設計を支援し、よりサステナブルな未来への移行を推進しています。

繊維業界は特に細分化が進んでおり、サプライチェーンは製品のトレーサビリティと製品表示の検証に苦慮しています。トラストレース(TrusTrace)は、サプライチェーンのトレーサビリティとデータ管理のためのプラットフォームを開発し、市場をリードしています。同社の使命は、ブランドがバリューチェーンの影響を知り、証明し、改善するために必要なデータを提供することであり、リアルタイムのデータ収集を活用して繊維製品のトレーサビリティを改善するプラットフォームを開発しています。このプラットフォームはすでに、世界最大のファッションブランドの多くがサステナビリティへのコミットメントを達成するのに役立っています。

こうした革新的なスタートアップ企業13社は、データ、ブロックチェーン、AI、IoTの力を活用することにより、持続可能性を高め、廃棄物を削減し、業界全体で倫理的な実践を確保する、透明性が高く追跡可能なサプライチェーンを構築しています。これらのテクノロジーがさらに進化を続けるにつれ、よりサステナブルでグローバルなサーキュラー・エコノミーを構築する上で重要な役割を果たすことになるでしょう。

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