サーキュラー・エコノミー

電子廃棄物のリサイクルを促進する7つの方法

Domestic appliance e-waste being recycled.

2022年には、推定620億キログラムの電気・電子機器廃棄物が排出されました。 Image: Unsplash/John Cameron

Johnny Wood
Writer, Forum Agenda
  • 電気・電子機器廃棄物(e-waste)が急速に増加しており、2022年だけで推定620億キログラムが排出されています。
  • 私たちが廃棄する携帯電話、タブレット、ノートパソコン、その他のガジェットには貴重な金属や鉱物が含まれており、その価値は年に625億ドルにもなります。
  • 世界経済フォーラムのレポートは、世界の電気・電子機器廃棄物のうち約5分の1しかリサイクルされていない現状を踏まえ、産業界によるサーキュラー・エコノミーの実践を促す構造的な変革の必要性を強調しています。

テクノロジーの進歩は、私たちの世界を変革し続けています。しかし、その結果として不要な機器があふれ、地球上で最も急速に増加する廃棄物の奔流になりつつあります。

グローバルに排出される電気・電子機器廃棄物は、2022年には12年前のほぼ2倍の620億キログラムに達しており、2030年には820億キログラムに増加すると予測されています。

The growth of global e-waste
現在、世界で排出される電気・電子機器廃棄物の量は2010年の約2倍です。 Image: The Global E-waste Monitor

国連のレポート「The Global E-waste Monitor 2024(グローバル・e-wasteモニター2024年版)」によると、2022年に発生する電気・電子機器廃棄物の総量620億キログラムは、長さ25メートルのトラック155万台を満杯にし、地球の赤道を中心に40,000キロに及ぶ渋滞を形成するのに十分な量です。

そのうち、正式に回収・リサイクルされたものは全体の22%強に過ぎないとレポートは指摘しています。

私たちが1年に廃棄する携帯電話、タブレット、ノートパソコン、その他のガジェットには625億ドルの価値があり、1トンあたりで同じ重さの金鉱石の100倍の金が含まれています。しかし現在、世界の電気・電子機器廃棄物はその5分の1しかリサイクルされていません。

ただし、手立てがないわけではありません。古い機器に含まれる貴重な金属や鉱物を再利用するために、電気・電子機器廃棄物のリサイクル率を高めることを目的とした7つのイニシアチブを紹介します。

Global e-waste generated by year.
世界の電気・電子機器廃棄物は、2030年までに7,470万トンに達すると予測されています。 Image: UNU, ITU and ISWA

1.「カラフルな」回収

英国ケンブリッジ市議会は、鮮やかなピンク色のゴミ箱を設置して廃棄小型電気製品を回収することで、通常のリサイクル回収に出されてしまう電気・電子機器廃棄物を減らそうとしています。

街にあるリサイクルボックスに入れることはできませんが、こうした電化製品には銅やリチウムのような貴重な原料が含まれているのです。

2022年に設置されて以来、約49トンの小型電化製品がこの人目を引く回収ボックスに投入され、再利用やリサイクルされました。

2. エジプトのe-wasteアプリ

このアプリでは、エンドユーザーが不要になった電化製品を専用の配送ポイントに持ち込むと、新しい電化製品の購入に使えるクーポン券を受け取ることができます。クーポン券は、スキームと提携している店舗で利用可能です。

電気・電子機器を安全にリサイクルすることは、水銀や鉛などの有害な化学物質の土壌や水路への流入を防ぐことにもつながります。

3. 英国王立造幣局の貴金属

カナダのスタートアップ、エクシール社との共同研究により特許を取得したプロセスを発明し、ノートパソコンや携帯電話、その他の機器の内部にあるプリント基板上にある金の99%を抽出することができます。

技術者たちは、室温で作動するこの迅速でサステナブルな化学プロセスの規模拡大に取り組んでおり、回収された金はインゴットに溶解して英国王立造幣局の製品に利用する予定です。

4. シンガポールの政策とコミュニティによるイニシアチブ

島国であるシンガポールでは、毎年推定6万トンの電気・電子廃棄物が発生。限られた土地でいかに対処するかが差し迫った課題となっています。

また、コミュニティレベルでは、「リペア・コピティアム」(マレー語で「喫茶店」の意味)イニシアチブが発足し、コミュニティセンターで活動する地域ボランティアのネットワークを活用して、地域の人々が古くなったり壊れたりした電気・電子機器を修理し、廃棄せずに再利用することを支援しています。

5. 修理・再利用カフェ

シンガポールにあるような、修理の知識を持つボランティアが家電や機器の耐用年数を延ばす手助けをする修理カフェや修理センターは、ヨーロッパなどに古くからあるものです。

また、フランスは、電気・電子機器の修理可能性指標を作成し、法制化後5年以内に修理率を60%に向上させることを国民議会で議決するなど、電気・電子機器廃棄物の発生を回避する取り組みを支援しています。

6. 北アフリカの電気・電子機器廃棄物法制

電気・電子機器廃棄物に関する国連の最新報告によると、北アフリカの一部の国は、電気・電子機器廃棄物の課題を解決するために法整備を進めています。

例えば、エジプトは廃棄物管理業界のための新たな規制機関を設立し、電気・電子機器(EEE)から生じる廃棄物を含む有害物質や廃棄物の輸入禁止を強化しました。

チュニジアも電気・電子機器廃棄物の規制に乗り出し、EEEの輸入に汚染者負担制度を設ける政令を起草しています。

両国とも、電気・電子機器廃棄物の収集・リサイクルセンターがさまざまなレベルで運営されています。

7. 台湾の「ベター・バイ・デザイン」アプローチ

台湾政府は、電気・電子機器廃棄物の効果的な廃棄とリサイクルを規制・管理する法的枠組みを確立しました。

この法律のもと、電子製品の製造業者や輸入業者は、リサイクルを考慮した製品設計を行うだけでなく、回収システムを確立し、電気・電子機器廃棄物のリサイクルと処分に資金を提供することが義務付けられています。

世界経済フォーラムのレポート「Circular Transformation of Industries: Unlocking New Value in a Resource-Constrained World(産業のサーキュラー・トランスフォーメーション:資源のひっ迫した世界における新たな価値の解放)」では、生産性、イノベーション、持続可能性から利益を引き出せるよう、産業のサーキュラー・トランスフォーメーション(循環型転換)をもたらす構造的な変革の必要性を指摘しています。

電気・電子製品の世界的な消費の増加、製品ライフサイクルの短縮、修理の選択肢の減少により、不要になった携帯電話やノートパソコンなどの量が急増しています。しかし、サーキュラー・エコノミーに対する考え方は変化しており、このことは電気・電子機器廃棄物の再利用とリサイクルを目指した取り組みによって、貴金属や鉱物をよりサステナブルな形で利用できる可能性があることを意味しています。

Loading...
このトピックに関する最新情報をお見逃しなく

無料アカウントを作成し、パーソナライズされたコンテンツコレクション(最新の出版物や分析が掲載)にアクセスしてください。

会員登録(無料)

ライセンスと転載

世界経済フォーラムの記事は、Creative Commons Attribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 International Public Licenseに基づき、利用規約に従って転載することができます。

この記事は著者の意見を反映したものであり、世界経済フォーラムの主張によるものではありません。

最新の情報をお届けします:

サーキュラー・エコノミー

関連トピック:
サーキュラー・エコノミー自然と生物多様性
シェアする:
大きな絵
調さしモニターする サーキュラー・エコノミー は、経済、産業、グローバルな問題に影響を与えています。
A hand holding a looking glass by a lake
クラウドソース・イノベーション
参加する クラウドソーシングのデジタルプラットフォームで、スケール感のあるインパクトを提供します。
World Economic Forum logo
グローバル・アジェンダ

アジェンダ ウィークリー

グローバル・アジェンダとなる、重要な課題のウィークリー・アップデート

今すぐ登録する

メールに記載されているリンクから、いつでも配信を停止することができます。 詳しくはこちらをご覧下さい。 プライバシー・ポリシー.

エネルギー効率改善におけるサーキュラリティ~今こそ行動すべき理由〜

Sebastian Reiter and Anis Nassar

2024年9月26日

循環型社会を切り開く~データとトレーサビリティを再定義するスタートアップ13社~

世界経済フォーラムについて

エンゲージメント

  • サインイン
  • パートナー(組織)について
  • 参加する(個人、組織)
  • プレスリリース登録
  • ニュースレター購読
  • 連絡先 (英語のみ)

リンク

言語

プライバシーポリシーと利用規約

サイトマップ

© 2024 世界経済フォーラム