グローバルアジェンダの解決に向けた歩みをリードする中堅国
地政学的な激動期には、「中堅国」がグローバルアジェンダの解決に向けた進展を左右します。 Image: Unsplash/Francois Olwage
- インド、サウジアラビア、アラブ首長国連邦などの中東諸国は、グローバルアジェンダの解決に向けて前進する上で大きな役割を果たしています。
- 地政学的な激動期にある今、特に中東を中心とした中堅国のリーダーシップが、安全保障、環境、テクノロジーなどの重要課題の解決に向けた進展を左右します。
- 2024年4月28日から29日にかけて開催された「グローバル・コラボレーション、成長、およびエネルギー」特別会合では、地政学的・経済的環境の分断化が進む中で、世界の成長を再活性化するための新たな道筋に焦点が当てられました。
今日最も差し迫った課題や将来最も有望な機会は、国境に縛られるものではありません。経済の強化、集団的安全保障の改善、気候変動への対応、フロンティア技術の恩恵を解き放つことができるかどうかのすべては、協力的なアプローチにかかっています。しかし世界は、協調という課題が、対立的なマインドセットに取って代わられる危険な状況に向かうリスクを抱えています。
2023年9月、ニューヨークで開催された国連総会の冒頭で、アントニオ・グテーレス事務総長はこのように述べました。「グローバルな課題が山積しています。しかし私たちは、団結してそれらに対応することはできていないようです」。
たとえば、国連の17の持続可能な開発目標(SDGs)のうち、2030年の期限までに達成できる目標はわずか12%しかありません。
しかし、明るい話題もあります。
2023年12月のG20サミットで、開催国であるインドは「南半球」の代表を対話に参加させることを優先し、気候変動資金や世界債務などに関する共同宣言で世界最大国の首脳を合意に導きました。この成果は、事前には不可能だと予測されていたことです。
同年11月に、ドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)では、アラブ首長国連邦が「すべての参加者にとってインクルーシブで安全な空間」を主導することを約束し、締約国は化石燃料から再生可能エネルギーへの転換に初めて合意しました。
そして、2024年4月末、サウジアラビアと世界経済フォーラムは、世界中のリーダーを招集し、北と南の協力関係の強化に焦点を当てた特別会合をリヤドで開催。
これらに共通しているのは、成功の大部分が、インクルーシブなアプローチと、インド、サウジアラビア、アラブ首長国連邦など、いわゆる「中堅国」のリーダーシップによるということ。これらの国々は、世界の超大国ではなくとも、グローバルアジェンダの解決の駒を進める上で大きな役割を果たしています。
地政学的な激動期にある今、特に中東を中心とした中堅国のリーダーシップが、安全保障、環境、テクノロジーなどの重要課題の解決に向けた進展を左右することになるでしょう。というのも、世界で最も差し迫った課題のいくつかに対するソリューションは、この地域を通過するだけでなく、これら中堅国が提唱してきた協力的なアプローチを必要とするからです。
世界の安全保障に関しては、湾岸諸国、特に、サウジアラビアのリーダーシップが喫緊の危機であるウクライナとガザの2つの問題の解決に不可欠です。2023年8月、サウジアラビアは自国第二の都市ジッダで、ウクライナの和平協議を主催しました。これは、北と南の主要政党がテーブルに着くために不可欠なものでした。
また、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード皇太子は、2024年初めにリヤドで会談し、ウクライナの和平計画を実行に移す方法について話し合いました。
リヤドも、ガザでの停戦交渉のために当事者をまとめる重要な役割を担っています。1月にスイスのダボスで開催された世界経済フォーラムの年次総会では、サウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハーン・アール・サウード外務大臣が、イスラエルがパレスチナ人自治区との2国家解決に向けた措置を講じた場合、イスラエルを正式に承認するとの約束を改めて表明しました。
気候変動に関しては、公平で成長を促進するグリーンエネルギー転換は、中東の資本がそれを前進させる手助けをしなければ成功しません。この地域は世界の石油の約30%、天然ガスの約23%を生産しており、多くの国が将来のグリーン電力のリーダーになる態勢を整えているからです。
サウジアラビアのエネルギー大臣、アブドルアジーズ・ビン・サルマン・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード皇太子は、近頃、同国が再生可能エネルギー市場の「中心的存在」になることを約束すると述べました。サウジアラビアは、「ビジョン2030」計画を通じて石油以外の輸出を多様化し、10年後までに石油以外がGDPに占める割合を16%から50%に引き上げることを目指しています。
マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、生成AIは、年間2.6兆ドルから4.4兆ドルの新たな経済効果をもたらす可能性があります。しかし、これは世界中のステークホルダーが協力しなければ実現しません。サウジアラビアは世界各国とパートナーシップを構築し、2040年までに研究・開発・イノベーション部門にGDPの2.5%を毎年投資することを約束しています。
複雑な地政学的局面において集団的なアプローチ求められている今、中堅国がソリューションを開発し、協力的な取り組みを続けることで、私たちはより強固な未来へと歩みを進めることができるでしょう。
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