健康と医療システム

5歳未満の死亡数が過去最低に - 子どもの命を守るためにできること

UNICEF figures show that the mortality rate of children under the age of five is the lowest it has been since 1990.

世界の5歳未満の子どもの死亡数が、1990年以降で過去最低を記録しました。 Image: Unsplash/ Larm Rmah

Amira Ghouaibi
Head, Global Alliance for Women's Health, World Economic Forum
  • 国連の発表によると、5歳未満児の死亡数は過去最低を記録しました。
  • しかし近年、状況改善の進展は鈍化しており、持続可能な開発目標(SDGs)の達成から遠ざかっています。
  • また、母子保健への投資による死亡率の大幅低下が、一部の低所得国および低中所得国で見られる一方、世界全体では生存率の格差が残っています。

5歳未満の子どもの死亡数が、過去最低の水準に達しました。

ほんの数十年前に比べて、5歳を迎える前に命を落とす子どもの数は数百万も減少しています。2000年から2022年までの間に5歳未満の死亡率は半減し、一部の低所得国および低中所得国では、生存率が大幅に向上しています。

国連児童基金(UNICEF)のデータによると、2022年には、5歳未満児の死亡数が過去最低の490万人(27人に1人)に減少し、11人に1人の命が失われていた1990年と比較すると大きく前進しています。一方、2022年には依然として毎日約13,400人の幼い子どもたちが命を落としており、このことは、特に社会から疎外された子どもたちが直面している持続的な健康上の脅威を示しています。

Global mortality rates and number of deaths by age, 1990–2022
2000年以降、5歳未満児の死亡数は半減しています。 Image: UNICEF

依然として高い死亡率

2022年における5歳未満の死亡者のほぼ半数は、わずか生後1ヶ月未満の子どもたちでした。また、死産するケースも数百万にのぼり、UNICEFは、こうしたケースはプログラムの実施やデータ収集の際、政策立案者により見落とされる傾向にあると言います。

またこれに加え、2022年には5歳から24歳までの子どもと若者が210万人、死亡しています。

How many children younger than 5 has the world lost since 1990?
1990年以降、2億7,800万人の子どもが5歳未満で命を落としています。 Image: UNICEF

生存率格差
子どもの死亡率は全体として低下しているものの、生存率に影響を与える格差や不平等は根強く残っています。貧困家庭で生まれた子ども、脆弱な地域や紛争による影響を受けている地域の子どもは、5歳を超えて生存できる可能性がはるかに低くなっています。たとえば、サハラ以南アフリカで生まれた子どもは、オーストラリアやニュージーランドで生まれた子どもに比べて、5歳の誕生日を迎える前に命を落とす可能性が18倍も高いのです。

予防または治療可能な肺炎、下痢、マラリアなどの感染症は、早産や出生児の合併症と並んで、依然として乳幼児の主要な死因となっています。

What are the leading causes of death among newborns and children younger than 5?
子どもの死因の多くは、予防または治療が可能な感染症です。 Image: UNICEF

鈍化する改善の歩み

UNICEFは、子どもの死亡率低下の進展を左右するのは、政府、組織、地域コミュニティ、医療従事者、家族の持続的なコミットメントだとしています。しかし近年、改善に向けた歩みは鈍化しています。

国連のミレニアム開発目標(MDGs)が掲げられた2000年から2015年までの間、5歳未満児の死亡率は3.8%低下しましたが、以降、持続可能な開発目標(SDGs)が定められた2015年から2022年にかけては、その低下率が2.1%にとどまっています。

UNICEFは、早急に対策を講じなければ、多くの低所得国および低中所得国では、SDGsが掲げる新生児・5歳未満児の死亡率目標を達成することができないと警鐘を鳴らしています。そして、2030年までにさらに3,500万人の5歳未満児が命を落とすとしています。

Since 2000, how much progress has been made to save under-five lives?
生後1ヶ月から59ヶ月の子どもに比べ、新生児の死亡率の低下にはあまり進展が見られません。 Image: UNICEF

しかし、これ以上の前進が不可能というわけではありません。いくつかの低所得国および低中所得国は、母子保健への投資により、子どもの死亡率を大幅に下げることに成功しています。

また、熟練した医療従事者による出産の立ち会い、産前・産後ケア、小児疾患の診断と治療の改善、予防接種などは、優先的に講じられるべき効果的な対策です。

清潔な水、衛生、栄養失調に対する取り組みも欠かせません。

しかし、ヘルスケアへのアクセスが不十分なことが、こうした介入の妨げとなる場合があります。また、新型コロナウイルス感染拡大により、小児のワクチン定期接種など多くのヘルスプログラムが中断を余儀なくされ、今も世界中の医療システムにその影響が及んでいます。

世界経済フォーラムの「グローバルヘルス&ヘルスケア戦略展望(Global Health and Healthcare Strategic Outlook)」は、パンデミックから得た教訓を活かし、近代的で目的に適ったヘルスケアシステムの構築に向けた戦略を提示しています。

また、UNICEFは、子どもの死亡率を理解する上で、死因の傾向や根本原因の特定に役立つデータの重要性を強調しています。しかし、脆弱な立場に子どもたちが置かれている地域や紛争地域は、十分なデータ収集に課題を抱えています。

子どもの死亡率を大幅に改善させる知識はすでに存在し、効果的な介入策についても明らかです。最も重要なのは、こうした知識や介入策が、生まれた場所に関係なくすべての子どもに確実に行き届くことです。

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