「希望を持って行動を」- 気候変動対策キャンペーンが心を揺さぶる理由
ダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会2024にて、新たなキャンペーンが始動しました。 Image: Arctic Basecamp / Edward Henderson Photography.
Gail Whiteman
Professor of Sustainability, University of Exeter Business School, University of Exeter- 自然と気候の危機は実存的な脅威であり、不安感を抱くことは正常かつ健全な反応です。
- #performinghopeは、科学に基づいて行動し、その中で他の人々を鼓舞することを選択すれば、誰でも、毎日、実行することができるアクションです。
- 未来を見据え、私たちは自分が個々の総和よりも大きな集合体の一部であることを認識した上で行動することが重要です。
2023年は、産業革命以前の平均気温を1.48度上回り、史上最も暑い年となりました。地球上のあらゆる場所が同じ傾向にあり、異常気象、地球システムの危機的変化、生物多様性の喪失、エコシステムの崩壊といった有害事象の重なりを引き起こしています。このことは、「グローバルリスク報告書2024年版」により、企業、各国政府、学界、国際機関、市民社会に認識されています。
「グローバルリスク報告書2024年版」は、リスクに関する意識調査です。異常気象、食料と水に対する脅威、海面上昇、人道危機。これらの影響はすでに世界の多くの地域で感じられるようになってきています。実際、異常気象は今後2年で起こりうる最大のリスクの第二位と、その深刻さは際立っています。
このような世界では、希望など甘い白昼夢のように感じられるかもしれません。大きな影響を前に、圧倒されたり、不安になったり、麻痺したりするのは自然なことです。エコ不安は実存的な脅威に対する正常で健全な反応です。砂の中に頭を隠して、他の誰か、より強大な権力や知識、資源を持つ誰かが、その場を凌ぎ、窮地を救ってくれることを淡々と願えたら、気が休まるかもしれません。しかし、皮肉なことに、希望が失われれると、まさにその反対の反応である「行動」が必要なときに、固まって動けないまま降参してしまう傾向があるのです。
世界経済フォーラム年次総会2024では、コングレス・センターの内外で、希望というトピックが議題に上りました。「Earth Decides(地球の決断)」イニシアチブの発表では、私たちが直面している脅威のレベルと規模に対応する上で、情報に基づく楽観主義が果たす役割が強調されました。世界的な動物行動学者であり国連平和大使のジェーン・グドール氏は、若者の役割、私たちの知性、自然のレジリエンス(強靭性)、そして人間の不屈の精神を重要な要素として強調し、希望のメッセージを伝えました。インスピレーションは伝染するものです。そして、国際通貨基金(IMF)と世界銀行のリーダーたちから、世界に変化をもたらそうとする若者たちに向けて、このメッセージが伝えられました。また、ネットゼロやネイチャーポジティブな世界というビジョンを、食、エンターテインメント、芸術、スポーツ、ファッションといった文化的な要素に浸透させ、すべての人がよりよく生きることを促進する目的で「Culture Moves(文化の移り変わり)」イニシアチブが導入されました。
ダボスを囲む山々では、非営利団体クライメート・ベースキャンプが、「Performing Hope in the Face of the Climate & Nature Crisis(気候変動と自然の危機に立ち向かう希望のパフォーマンス)」という新しいキャンペーンおよびマニフェストを発表。これは、2024年1月18日、チェリストのニコラ・アルシュテット氏、振付師のデミス・ヴォルピ氏、バレエダンサーのララ・デルフィノ氏とダミアン・トリオ氏による氷河への希望を表現した野外イベントで始まりました。
このパフォーマンスは、世界は氷河へのレクイエムを回避しなければならないというメッセージを直感的に伝えるものでした。スイスは、2年間で氷河の10%を失い、極地の氷河も気候の転換点に達しています。希望のパフォーマンスは、ダボス会議の参加者を含む私たち一人ひとりに、希望を具体的な行動に移す責任を思い出させるものです。
希望のパフォーマンスには、次の3つの重要な要素があります。
1. 存亡の機に立たされていることへの認識
地球温暖化の原因が人為的なものであり、人間やその他の生命に対する脅威が増大していることについては、科学的な証拠が数多く存在します。1.5度は物理的な限界であり、政治的な目標ではありません。この閾値を突破すれば、気候の転換点というダイナミクスによる前例のないリスクをもたらします。私たちが直面している脅威は、本質的に実存するものであり、私たちの不安は正常で健全な反応です。
2. 希望を行動に表すこと
すべての文化は、人間の存在に意味を与え、それを支える強力な集合的エネルギーとして希望を受け入れています。しかし、希望は単なる心の状態や、持ったり買ったり存在することを願ったりするものではありません。自然や気候の危機における希望は、私たちの思いが大小さまざまな言葉や行動に変換されるときに生まれます。希望には、個人、組織、コミュニティとしての、私たちの日々の決断や行動が含まれます。つまり、私たちのニーズと地球のニーズを一致させ、すべての生命が地球上で豊かに暮らせる未来を築くために、個人と集団の想像力を活用する必要があります。
あなたが個人として、あるいはプロフェッショナルとして表現する思考、言葉、行動について考えてみてください。それらはどのように希望のパフォーマンスとなり、あなたが世界に望む変化につながるでしょうか。それは、自身の文化的パラダイムの変化、技術や社会の躍進を支援すること、新しい職業に身を捧げること、または、単にあなたの本当の気持ちを語ることかもしれません。行動はすぐにでも起こすことができます。あなたが希望をどのように表現しているか、ハッシュタグ「#performinghope」を活用し、ソーシャルメディアでシェアしてみませんか。
3. 長期的な視点を持つこと
私たちの行動が、いつ、どのようにして効果を発揮するかについては、正確に知る必要はありません。最初の女性参政権運動参加者の多くは、投票の機会を得ることはありませんでした。しかし、彼女たちの勇気と行動により、今日、何百万人もの女性が享受している自由があります。私たち自身の寿命を超えた長期的な視野に立つことで、私たちは、多世代にわたる変化を起こすことができます。それが、私たちの地球惑星システムとつながり、それを支える社会の基礎を築くでしょう。一人ひとりの選択の力が、集団的なインスピレーションの光となるのです。
「グローバルリスク報告書2024年版」は、地球が直面しているリスクを思い起こさせ、ハッシュタグ「#performinghope」は、私たち一人ひとりが創意工夫をもって行動する主体性を与えてくれます。より意識的かつインクルーシブで、よりレスポンシブルな世界への道を切り拓いていきましょう。ネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領の言葉を借りれば、「成し遂げるまでは、いつも不可能に思える」のです。さあ、一歩を踏み出すときです。
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