カンボジアに学ぶ - 開放性を旗印に後発開発途上国から脱却する方法
カンボジアは、2050年までに高所得国になることを目指しています。 Image: REUTERS/Chor Sokunthea
- カンボジアは、2027年までに後発開発途上国(LDC)から卒業すると予測されています。
- ビジネスと海外直接投資に対するカンボジアのアプローチは、LDCからのサステナブルで不可逆的な移行を目指す他の国々の好例となる可能性があります。
- カンボジアが取った5つの行動は、他のLDCが卒業を目指す際に特に参考にすべきものです。
2022年に国連加盟国により採択された「後発開発途上国(LDC:Least Developed Country)のためのドーハ行動計画」は、LDCがその地位を脱却するための支援が必要であることを強調し、円滑な移行計画の概要を示しています。
しかし、LDCの中には、単にそのカテゴリーから卒業するだけでなく、サステナブルで不可逆的な移行を確実にするために、独自の戦略を積極的に採用している国もあります。
2027年までにLDCを卒業すると予測されているカンボジアも、そうした国の一つです。2030年までに上位中所得国、2050年までに高所得国への移行を加速させるため、大胆な措置を講じています。
過去20年間、年平均7.7%のGDP成長率を達成した同国は、正しい軌道をたどっているようです。カンボジアのGDPは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による国内および世界的な経済収縮に伴い減少しましたが、その後急速に回復。国際通貨基金(IMF)は、2024年の同国の成長率を6.1%と予測しており、同年に急速な成長が見込まれる第14位の経済国となっています。
過去20年間にカンボジアが達成した多くのことの中でも、特に、2004年10月の世界貿易機関(WTO)加盟後の、国際貿易と投資に対するカンボジア経済の開放性が際立っています。
WTO加盟当時、カンボジアの商品輸出額は33.9億ドルでしたが、2022年には224.7億ドルに増大。加えて、加盟後には市場参入後の見通しが明確であり、政策が安定していることで外国人投資家にポジティブなシグナルが送られたため、外国直接投資(FDI)も何倍にも増加しました。
2004年には1.3億ドルだったFDIは、2022年には35.8億ドルに増加しました。さらに、特筆すべきことは、同期間にFDIストックが20.9億ドルから445.4億ドルに増加したこと。FDIの目覚ましい成長を示すもう一つの重要な指標は、GDPに占める純受入FDIの割合が、2004年の2.5%から2022年には11.9%に増加していることです。
カンボジア政府による歴代の開発戦略で示されてきた、サステナブルで公平な開発を達成する計画的な取り組みがこうした成果に寄与しています。カンボジアは、「ペンタゴナル戦略―第1段階」と題された政府の新戦略を実施することにより、2050年までにさらに成長し、重要なアウトカムを達成する見通しです。
過去20年間に実施された多くのインパクトある行動の中で、他のLDC、特に卒業への道を歩んでいるLDCが模倣する価値のあるものは次の通りです。
1. カンボジアは、貿易能力構築のための開発援助である「貿易のための援助(AfT)」の効果的な活用において、LDCの中でもトップランナーです。2001年に、貿易診断調査を実施するための統合フレームワークによって選ばれた最初のパイロット国でした。また、2007年には、LDC支援に特化したAfTプログラムである強化統合フレームワークの下で診断調査を更新した最初の国でもあります。これは、カンボジア政府が開発パートナーからのリソースを活用し、史上初の貿易セクターワイド・アプローチ(SWAp)を開発するための基盤となりました。
この革新的なアプローチは、貿易開発を通じてプロプア成長(最貧困層の所得が全人口の所得よりも早く成長すること)を可能にするために、AfTの資源を活用する専用のフレームワークです。様々な貿易関連の優先事項を支援するための信託基金に約 1,600 万ドルの資源を動員するのに役立ちました。
2. カンボジアは、既成概念にとらわれず、新しいアプローチに尻込みしません。同国は、上記の貿易SWApの他に、EIFや他のパートナーの支援を受けて、「カンボジア輸出多角化・拡大プログラム(CEDEP)」に代表されるように、AfTイニシアチブに対するプログラム的アプローチを2段階で開始しました。CEDEPの第1段階では、コメと絹の各セクターを支援するプロジェクトが、第2段階では、キャッサバ、海洋漁業、料理アカデミーを支援するプロジェクトが実施されました。
これらのプロジェクトのほとんどが目覚ましい成果を上げていますが、国際金融公社(IFC)と共同で実施されたコメプロジェクトは、カンボジアの精米生産量と輸出量の大幅な増加に貢献した点で特筆に値します。同プロジェクトは、2010年から2015年にかけて、精米能力を10万トン(MT)から53万MTに増加させるという顕著な成果を出しました。また、同プロジェクトは、2015年までに1億4,000万ドル相当の輸出を促進。成長は続いています。2022年のデータによると、カンボジアの精米輸出量は63万トン、輸出額は4億1,400万ドルに増加しています。
3. カンボジアはまた、パートナーを動員し、EIFプログラムの支援以外のリソースを活用している点でも先駆的です。例えば、コメのプロジェクトには欧州連合(EU)が、料理アカデミーのプロジェクトにはスウェーデン国際開発庁(SIDA)が共同出資しました。カンボジアが電子商取引プロジェクトを開発した際には、オーストラリア外務貿易省(DFAT)、国連開発計画(UNDP)、スイスのNPOであるスイスコンタクトを通じた貿易円滑化のためのグローバル・アライアンスなどの開発パートナーから、専門知識やリソースを動員することができました。
4. カンボジア政府は、ビジネス環境を大幅に改善し、企業の投資拡大を可能にしました。自由な外国投資制度を持ち、FDIを積極的に誘致しています。2021年、カンボジアは、投資優遇措置、投資家保証、投資手続きの改正・改善を盛り込んだ投資に関する新法を採択。この法律は、社会経済開発の優先事項を支援するために調整された質の高い、効率的かつ効果的な投資を誘致し、促進することを目的としています。
5.カンボジアは、2022年に地域的な包括的経済連携(RCEP)協定や中国、韓国との二国間自由貿易協定を批准するなど、様々な貿易圏やパートナーと自由貿易協定を締結。翌年には、アラブ首長国連邦と包括的経済連携協定(CEPA)を締結しました。今後、世界の主要貿易相手国と同様の貿易協定を結ぶ予定です。
カンボジアは、対外投資、貿易、ビジネスに対する開放性と、AfTの効果的な活用、そして、強力な国のオーナーシップを組み合わせ、経済改革の持続に役立てています。これらの要素のバランス慎重に取ることが、サステナブルで不可逆的な発展を目指すLDCに不可欠なのです。
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