年次総会2024:変化する日本の道筋
日本は、異なるグループの橋渡し役となることができる。 Image: Pixabay/Lara Jameson
- 日本は、分断が進む世界の安定性を向上させることができます。
- 世界経済フォーラム年次総会2024におけるセッション「Japan’s Bet on Cooperation(変化する日本の道筋)」に登壇したパネリストたちは、日本は、アジア地域と世界の架け橋としての役割を果たすことができると言及しました。
- 日本特有の課題の解決に向けて駒を進めることが、グローバル社会において日本がリーダーシップを長期的に発揮し続ける鍵となります。
国際貿易、政治、地域間協力などあらゆる分野でリーダーシップを発揮している日本。「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定」拡大交渉においては、2017年の米国離脱後に崩壊の危機に直面しましたが、日本が粘り強い交渉を主導し、2018年に残る11カ国と「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)」の発効を実現しました。また、日本は、国境を超えたデータ流通のためのルールを整備する構想「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」を提唱し、その実現に向けた国際的な取り組みをリードするほか、フレンド・ショアリングの構築にも積極的な姿勢を見せています。
分断化が進み、不確実性が高まる世界において、日本はどのような役割を果たせるのでしょうか。世界経済フォーラム年次総会2024におけるセッション「Japan’s Bet on Cooperation(変化する日本の道筋)」で、官民のリーダーたちが議論しました。
「日本は、異なるグループの橋渡し役となることができる」と語ったのは、河野太郎内閣府特命担当大臣(デジタルトランスフォーメーション)。中東和平問題に関して、日本は、中東諸国に対して植民地主義の歴史を持たず、宗教的に中立な立場であることで、欧州の主要国とは一線を画しているとし、この特異な立場こそ、日本が当事者間をつなぐ誠実な仲介者としての力を発揮できる理由だと述べました。
一方、住友商事代表取締役社長執行役員CEOの兵頭雅之氏は、「産業界では、日本とアジア諸国との関係がドナー国と受益国から、パートナーシップへと成長を遂げている」と語り、アジア諸国との関係構築における日本企業の長年の努力が実を結んでいることを強調。同社は、アジア地域全体にバリューチェーンを構築し「共に成長する」という目標のもと、アジア諸国との信頼と長期的な関係を強固なものにしてきました。
今、企業に求められているのは、こうしたパートナーシップを一層強化することで、グローバルの需要に応えていくことだと語る兵頭氏。そのために欠かせないのは、業界全体のバリューチェーンの再設計であるとしています。「それぞれのバリューチェーンが、競争力を持ちながら新しい時代に適した形に変化し、カーボンニュートラルなどの主要目標を達成することが求められています。そのためには、築き上げてきたパートナーシップの力を発揮し、協力を通じて創造力を解き放つ必要があります」。
日本への最大の鉄鉱石サプライヤーであるリオ・ティントで、最高法務責任者を務めるイザベル・デシャン氏は、市場にも分断が起きていることを指摘。「鉱山がある場所、鉄鉱石や金属が製造される場所、さらには、商品や消費者のいる場所は全て異なります。こうしたサプライチェーンの分断化に適応するためには、企業と政府のパートナシップ強化が欠かせません」。
分断が進む今日の世界で、グローバル経済はソフトランディングする見込みがある一方、地政学的リスクは高いままであるとの見方を示したのは、米外交問題評議会のマイケル・フロマン会長。「今後の進展は、世界の経済成長、イノベーション、貿易の成長の半分を占めるインド太平洋地域の状況に大きく左右されると同時に、日本のリーダーシップにかかっています」と、日本が担う役割の重要性を強調しました。
「1980年代後半には、ルールブレイカーであった日本は、その後ロールテイカー(ルールに従う役目)となり、現在、ルールメーカーとしての役割を果たす段階を迎えています」と、フロマン氏。CPTPPの実現やDFFTの推進を通じて優れたリーダーシップを発揮している日本への期待を語りました。
また、河野大臣は、世界経済の拡大に伴いグローバル・サウスの存在感が高まってきているとした上で、「G7における日本の役割は、非西洋諸国を代表すること。それは、私たちが唯一の非西洋諸国からの加盟国であるからこそ、できることです」と、架け橋としての日本の責任を改めて強調しました。
グローバル社会において日本がリーダーシップを長期的に発揮し続ける上で鍵となるのは、日本の経済成長と国際競争力の妨げとなりかねない特有の課題解決に向け、駒を進めること。特に、人口減少、女性の労働環境、移民の受け入れに対する取り組みを加速できるかが極めて重要になると、フロマン氏は指摘しました。
「Japan’s Bet on Cooperation(変化する日本の道筋)」の視聴はこちら(日英音声)
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