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レジリエンス、平和、安全保障

難民支援へ革新的なアプローチを

A sign hangs on a balcony and reads "refugees welcome."

難民支援の新たなアプローチが求められています。 Image: UNSPLASH/Ricardo Gomez Angel

Anna Bjerde
Managing Director of Operations, The World Bank
Filippo Grandi
United Nations High Commissioner for Refugees, (UNHCR)
  • 難民危機に対処するためには、緊急人道的対応だけでは十分ではありません。
  • そのためには、難民に対する考え方を変え、受け入れ地域のコミュニティにおける難民との共生が必要です。
  • このような活動を行うことは、受け入れ国の負担ともなり得るため、企業、財団、都市、NGO、支援団体などの第三者が介入することも必要です。

最近、私たちは草木がほとんど生育しない乾燥地、チャド東部アドレという町を訪問し、そこで、悲劇と希望を目の当たりにしました。隣接するスーダンで起きている紛争から逃れて新たにチャドに避難した人々が抱える、殺人、強姦、略奪の話は悲劇そのものでした。極めて困難な課題を抱えつつも、故郷に戻ることができるその日まで、チャドがスーダン難民を保護し安全確保に努めていることは希望の光です。

アドレでは、学びや仕事を通じ社会に貢献したいと熱望する難民たちにも出会いました。彼らは、医療従事者、技術者、農家、家畜の世話をする人、弁護士、教師、学生などです。また、気候変動や食料不安の影響を受け、人口の42%が貧困ライン以下での生活を余儀なくされている受け入れ国の現実も目の当たりにしました。

私たちが見た状況は、難民支援に新しいアプローチが求められていることを示しています。

長期の難民支援

まず、難民状況は長期化する傾向があることを理解する必要があります。国際的な危機に対する政治的な解決策がない場合、何百万もの難民が、何年も、時には何十年も流浪し続けることになるのです。つまり、緊急の人道的対応だけでは不十分で、中期的な開発アプローチが必要となり、受け入れ国は、財政的にも社会的にも長期にわたり持続可能な政策を採用することが求められます。

国際社会にとって、難民支援の課題は、強力かつ予測可能な支援を長期的に提供することです。難民を保護し人道支援を行いつつ、解決策を見出すためには、危機が始まってから解決に至るまでのプロセスに対処する必要があります。こうした課題へは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と、長期的な開発に投資する世界銀行が対応しています。最終的な目標は、難民が故郷に安全に帰ることができるように状況を改善することです。

難民に対する考え方を変える

次に重要なのが、難民と共に歩むインクルーシブな社会の実現に取り組むことです。援助から雇用へ、人道支援団体が提供する独立した医療・教育支援を国際社会の財政支援のもと国が提供する仕組みへと、支援アプローチを変化させること。経済的機会の限られた地域から、仕事が得られる可能性の高い国内の他の地域へ、難民の移動を自由にすること。包摂性の本質的な実現には、こうした難民支援のあり方の変革が必要です。

ウクライナ危機やベネズエラ危機に対応するヨーロッパや中南米の国々、シリア難民を受け入れているトルコなど、いくつかの難民受け入れ国は、すでにこうした政策を実施しています。その理由は、包摂性の確保が支援コストの大幅な削減に繋がるためです。世界銀行の研究によると、チャドでは、難民支援に年間5億3,300万ドルかかりますが、彼らに働く権利を与えるとそのコストは2億7,000万ドルに下がり、働く権利に加えて自由に移動する権利を与えると、さらに1億5,200万ドルまで削減することができます。

とはいえ、受け入れ国やコミュニティが難民の包摂を推進するためにはコストがかかります。グローバル公共財である難民保護に多大な貢献をしている受け入れ国やコミュニティが背負う負担は、広く分かち合われるべきです。避難民の90%は開発課題を抱える低・中所得国に住んでおり、UNHCRと世界経済銀行は、こうした現状を踏まえた支援にコミットしています。

受け入れ国への国際的支援は不可欠ですが、同時に、企業、財団、都市、NGO、支援団体など幅広いステークホルダーによる協力も求められています。持続可能な世界経済への最も確かな道である経済的包摂と雇用創出を、私たちは促進しなければなりません。

ケニアのカクマ難民キャンプおよびカロベイエ難民居住区では、UNHCRと世界銀行による企業を巻き込んだ取り組みが進展しているほか、コロンビアでは、小口融資の提供を受けたベネズエラ難民が小規模ビジネスを立ち上げて同国の経済に貢献するなど、難民の包摂を目指す取り組みは着実に前進しています。

予防策への投資

最後に、予防策への投資も極めて重要です。受け入れ国と国際社会が最優先すべきは、人々が避難を強いられる事態の発生を減らし、安全かつ尊厳ある難民の帰還に向けた環境条件を整えることです。私たちのような組織は、不安定な情勢が続く国や地域の平和と安定を築く役割を担っていますが、紛争の解決、平和の醸成、社会契約の更新は複雑で、マルチステークホルダーによるアプローチが求められます。

スイスのジュネーブで開催された「第2回グローバル難民フォーラム」は、難民危機への対応策を見直す重要な機会となりました。長引く難民危機に対処するためには長期的な開発が不可欠であり、同時に、紛争と避難の根本原因に対処する必要があります。また、受け入れ国が包摂的な政策を採用すれば、私たちは混沌とする世界に希望を見出すことができるでしょう。

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