「脳卒中の死者は2050年までに1,000万人へ」など、ヘルスとヘルスケア部門、注目のテーマ
脳卒中は現在、世界第2位の死因となっています。 Image: REUTERS/Susana Vera
Shyam Bishen
Head, Centre for Health and Healthcare; Member of the Executive Committee, World Economic Forum- 本稿では、ヘルスとヘルスケア分野での最新動向をまとめてご紹介します。
- トップ ニュース:脳卒中発症率の上昇により、2050年までに年間1,000万人が死亡する可能性があるとの報告。WHOが、分娩後異常出血に対処するための世界計画を発表。
- 新たな研究:遺伝子編集は将来の鳥インフルエンザ流行を防ぐ可能性がある。
1. 2050年までに、脳卒中で年間1,000万人が死亡する可能性が示唆
予防と治療が大幅に改善されない限り、脳卒中で死亡する人の数は2050年までに50%増加する可能性があることが、最新の報告書で示唆されました。
世界脳卒中機構ランセット・ニューロロジー委員会、脳卒中共同研究グループの推定によると、人口増加と高齢化により、脳卒中で死亡する人の数は、2020年の年間660万人から2050年には970万人に増加。また、早死や障害で失われる健康な時間を表す障害調整生命年(DALY)も、今世紀半ばまでに1億8,900万と3倍に増加します。
現在、脳卒中は、世界第2位の死亡原因であるとともに世界第3位の障害原因であり、認知症の主な原因となっています。また、脳卒中の負担の増加は中低所得国(LMIC)に特に大きく影響を及ぼし、高所得国との間に大きな格差を生じさせる可能性が高いのです。
世界的な脳卒中の負担軽減には緊急の対策が必要であり、現在の予防戦略では不十分だと報告書は警告しています。
2. WHO、分娩後異常出血ロードマップで妊産婦死亡率減少を目指す
世界保健機関(WHO)は、より多くの女性の安全な出産を推進するため、分娩後異常出血(PPH)生存率における地理的な偏りの解消に向けて取り組んでいます。
治療・予防可能な出産後の過剰出血によって、年間約7万人が死亡しています。毎年数百万人の女性の命を奪っているPPH。その大部分はサハラ以南のアフリカと南アジアで発生しており、妊産婦死亡の主な原因となっています。
質の高い妊産婦ケアは、多くの危険因子を管理する重要なポイントです。また、PPHの迅速な発見と治療も欠かせません。しかし、必要なケアを提供するための資源や医療従事者が足りないことが多いのです。
3. 速報:その他、世界のヘルス関連ニュース
遺伝子編集で作成したウイルス耐性ニワトリにより、将来的に鳥インフルエンザの蔓延を抑制できるかもしれない、という研究結果が発表されました。遺伝子配列を変更したニワトリは鳥インフルエンザにかかりにくくなることが明らかになり、このことは、鳥インフルエンザウイルスがもたらす経済的コストや、ヒトを含む他の生物種に広がるリスクの軽減につながる重要な意味を持つ可能性があります。
ある研究によると、人種的・民族的マイノリティ・グループの患者は、診察前に白人患者と同じような痛みの管理がされていないことがわかりました。米国の急性外傷患者470万人のデータによると、人種的・民族的マイノリティ・グループの患者が疼痛スコアを記録された割合は低く、疼痛スコアが記録された患者の中でも、黒人患者は白人患者よりも鎮痛剤を投与される可能性が有意に低かったとあります。
放射線治療の前に安価な既存の薬を投与することで、子宮頸癌の死亡や再発のリスクを35%減少できます。標準的な放射線治療の前に2種類の抗がん剤を投与された女性は、投与されなかった女性よりも予後が良好でした。この治験結果は、「疾患の転帰としてはこの20年超で最大の改善」と評価されています。この薬剤は、比較的安価で入手しやすいため、治療計画に広く採用されることが期待されます。
ブルキナファソでデング熱の流行が宣言され、200人以上が死亡。蚊が媒介するデング熱による死亡者は毎年、世界中で約2万人にのぼります。蚊の大量発生を引き起こす気候危機や、都市化、人の移動などが主な原因で、患者は増え続けています。
4. ヘルスに関するその他の話題 - アジェンダ(寄稿文)より
新型コロナウイルスの感染者数が世界中で増加しており、ウイルスの高度に変異した新型株が出現しています。『ピロラ』と呼ばれるこの変異株について心配する必要は今のところありませんが、警戒が重要だとのことです。
デング熱は中低所得国(LMIC)に特に大きく影響を及ぼすとともに、命にかかわる疾病です。近年、デング熱の患者数が増加している背景には気候変動による影響があります。
「すべての人に健康と福祉を」は、国連の持続可能な開発目標の一つですが、2015年以降、達成に向けた進展は鈍化しています。世界の半分の地域で基本的な保健サービスが提供されておらず、2030年までに目標を達成するためには多額の投資が必要です。
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2024年10月10日