責任あるサステナブルな生成AIの世界を、次世代に贈るためには
ビジネスと社会は、今まさにAIと生成AIにより形作られ、再構築されています。 Image: WEF/iStockphoto
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- ビジネスと社会は、今まさにAIと生成AIにより形作られ、再構築されています。
- 2030年までに、現在の労働時間の30%が自動化される可能性があり、その多くは生成AIにより加速するとみられています。
- 責任あるサステナブルな方法でAIを活用するだけでなく、ビジネスの需要に基づく人材開発や人員計画への投資を行うことも極めて重要です。
マッキンゼー・グローバル・インスティテュートの最新の報告書によると、2030年までに、現在の労働時間の30%が自動化される可能性があり、その多くは生成AI(人工知能)により加速するとみられています。
偶然にも、2030年は私の息子が大学を卒業する時期と重なります。この数字から多くのことを考えさせられるのは、これまで10年以上にわたり、マイクロソフト、アクセンチュア、そして、現在はシュナイダーエレクトリックで、私がAIソリューションの構築と拡大に携わっているためです。
この30%という数字が意味することは、息子の最初の就職先の「チームメイト」の約3分の1が、何らかのハードウェアまたはソフトウェアの形でAIや生成AIを搭載したロボットになるということ。そして、彼がどの職種を選んだとしてもほぼ同じ状況になるということが、マッキンゼー・グローバル・インスティテュートの調査を要約した、以下のインフォグラフィックで示されています。
マッキンゼー・クォンタムブラックの別の調査によると、AIを導入している組織の60%が、すでに生成AIを使用しており、28%は、生成AIの利用がすでに経営陣の議題に上がっていると回答しています。
シュナイダーエレクトリックも例外ではありません。私は、今年6月に当社のAI戦略・イノベーション事業部長に就任した後、4週目に、15部門を対象とした生成AIとAIに関する詳細な調査を、対象部門に属する約200人のリーダーたちとともに実施しました。調査の目的は、現状と将来のシナリオを確認すること。数週間、集中的な取り組みと数多くのワークショップを行った後、未来に広がる大きなチャンスを評価、確認しました。
端的に言えば、ビジネスと社会は、今まさにAIと生成AIにより形作られ、再構築されているのです。
受け入れ、学ぶ
言うまでもなく、私は大きな責任を感じています。それは、チームや同僚、友人、家族に対してだけでなく、AIおよび生成AIツールやアシスタントと共に、この新しいハイブリッドな世界で生活し、働くことになる子どもたち世代に対してもです。実際、ChatGPTやCopilotなどのAIや生成AIツールが教育現場で急速に普及していることを考えると、子どもたちはすでに、そうした世界に生きていると言えるでしょう。
これらのテクノロジーは、多くの分野で大きなプラスの影響を与えています。例えば、データ解析とAIの力により、新型コロナウイルスワクチンの開発が迅速に進められなければ、この世界は、今もロックダウンの状態が続いていたでしょう。一方、テクノロジーが多くのリスクや課題を抱えていることも事実です。
私たちのエコシステムやメディアで日々議論されているAIに関する懸念ついては、本稿で焦点を当てませんが、この「オッペンハイマー」の物語のような状況において、AIや生成AIのチームメイトや、Copilotが存在する人生を送ることになる(すでに送っている)子どもたちに、私たちが贈ることのできる最良のギフトは何でしょうか。
それは、責任あるサステナブルなAIおよび生成AIと、よく考え抜かれ、思いやりをもって実施される人材変革プログラムであると、私は考えます。
私が、世界経済フォーラムの「責任ある生成AIに関するAIガバナンス・アライアンス(AI Governance Alliance on Responsible Generative AI)」のようなアライアンスに貢献する理由はここにあります。また、「責任ある生成AIに関するプレシディオ勧告(Presidio Recommendations on Responsible Generative AI)」は、官民全ての組織と社会全体が、責任あるAIの実践を導入するための良い出発点となります。
私たちは、このような勧告を実用的かつ環境にインパクトをもたらす形で確実に実践し、職場や家庭での生活にそれを取り入れ、運用する必要があります。このことは、マイクロソフトでの過去数年の私の仕事に基づき、こちらの記事で詳しく論じています。シュナイダーエレクトリックでは、特に、サステナブルなAIと、AIや生成AIに関するアップスキリング(技能向上)およびリスキリングのプログラムに重点を置き、責任あるAI運用を進めています。
AIが環境と人材に与える影響
サステナブルなAIがまだ初期段階にあることは、サステナビリティやエネルギー管理に関わる業界の多くの人が認識していることですが、多くのディスラプティブ(創造的破壊)なテクノロジーと同様に、私は、慎重ながらも楽観的で、希望ある見方をしています。AI、特に、生成AIのカーボンフットプリントには注意を払う必要があり、シュナイダーエレクトリックは、人を中心に据えること、または、節約できる消費量よりも多くのエネルギーをAIモデルが消費しているプロジェクトを見直すことで、こうした課題に対処しています。
ガートナーは、AIと生成AIが人材に与える影響を管理・対処するための準備に役立つ、優れたフレームワークを提供しています。このフレームワークは、よく練られた、思いやりのある実行可能な労働力変革計画を、組織内で展開する方法について検討しているすべてのリーダーの助けとなるものです。
また、データおよびAI・生成AIに関するトレーニングやアップスキリングを、個々の人材の特性に合わせて柔軟に計画立てることも重要です。グラットン氏とスコット氏の著書、「100年時代の人生戦略(The 100-Year Life)」によると、平均寿命は10年ごとに約2年延びているため、私たちは、方向転換やリスキリングを重ねながら、キャリアを切り拓いていくことが必要になります。私の息子の世代の平均寿命は約108歳。2105年かそれ以降まで生きることになるのです。
要約すると、子どもたちのために仕事の環境やエコシステムを設計・構築する際には、責任あるサステナブルな方法でAIを活用するだけでなく、ビジネスの需要やテクノロジーの応用(生成AIとAIのユースケースなど)に基づく人材開発や人員計画に、投資することも重要だということです。各組織、機能、チーム内に、上記、AIと生成AIが人材に与える影響マトリックスの複数のボックスが当てはまるでしょう。言い換えれば、同じチーム内でも、需要の高い画期的な新たな役割を担う必要があるメンバーもいれば、トレーニングを受けてスキル強化をする必要があるメンバーもいるということです。
世界経済フォーラムのAIガバナンス・アライアンスに参加して、共に変革を推し進めていきましょう。連携して、ノウハウやベストプラクティスを共有し、AIと生成AIに関わる人材トレーニング計画を改善していきましょう。私たちのベストを集結させれば、子どもたちへ素晴らしいギフトを贈ることができます。
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