企業がシニア世代の消費者に目を向けるべき理由
シニア世代による消費は、すでに世界の支出の4分の1を上回っています。 Image: REUTERS/Kim Kyung-Hoon
- 社会の高齢化に伴い、企業はシニア世代の消費者にもっと目を向けていかなければなりません。
- シニア世代の消費者(50歳から70歳)は、数、購買力、影響力の全てにおいて勢いを増しています。
- 根強い誤解と時代遅れの思い込みにより、多くの企業がこの世代を見過ごしてきました。
企業が新たな市場や成長機会を模索する一方、目の前では数兆ドル規模の市場が放置されています。50歳から70歳までの10億人近くの消費者による市場が、見過ごされているのです。こうしたシニア世代による消費は、すでに世界の支出の4分の1以上を占めています。
比較的若い世代を対象とした市場を含め、ほとんどすべての主要な市場の人口動態が高齢化により変化してきているため、シニア世代による支出の割合は拡大しつつあります。ボストンコンサルティンググループ(BCG)の調査によると、シニア世代の消費者は、わずか9つのカテゴリーで7兆ドル以上を費やしており、全体の支出額はさらに大きくなります。
調査対象となった、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、スペイン、スウェーデン、タイ、英国、米国の市場におけるシニア世代の消費者は、2050年までに約11億人に達します。BCGが1万8,000人の消費者を対象に行った調査によると、シニア世代の消費者は、絶大な購買力を持ち、個人的な買い物では他の年齢層よりも消費額が高い上に、強いブランドロイヤルティ(ブランド信仰)を示し、景気の浮き沈みにも柔軟で、若い消費者に対して驚くべき影響力を持つことがわかりました。
では、なぜ企業はこの重要な消費者層を見過ごしているのでしょうか。ビジネスリーダーたちは、シニア世代の消費者について「若い世代ほど消費しない」、「年配の消費者が買うものと正反対のものを若者は買う」、「あまり積極的にオンラインを利用しない」といった誤った俗説に縛られていることがわかりました。
しかし、私たちの研究による結果は、そうした長年の俗説を否定するものでした。想定と異なり、90%以上のシニア世代の消費者がソーシャルメディアを積極的に利用しています。オンラインでも、実店舗でも、同様に買い物を楽しみます。特に自動車、酒類、投資などの高額商品では、ほとんどのカテゴリーで若年層の消費者に良い影響を与えています。
しかし、重要なのは、シニア世代と若者世代の間でマーケティングメッセージに対する反応の仕方に決定的な違いがあるということです。若者向けのメッセージをそのまま使って発信するだけでは、シニア世代の消費者の関心を集められないのです。
ここでは、シニア世代の消費者に向けた市場を構築するための5つの戦略を紹介します。
「活力あるシニア世代の消費者」を特定し、取り込む。シニア世代の消費者の上位20%は、同世代の他の人々に比べて幸福度が高く、より活動的で、お金の心配が少なく、調査したカテゴリー全体にわたって支出の55%を占めています。この活力に満ちた人々をターゲットにすることが、シニア世代の消費者市場の中で価値の高いサブセットに対応する効率的な方法と言えます。
- デザインを重視したオムニチャネルの提供。シニア世代の顧客は、人とのやり取りがもたらす、一人ひとりに適したアプローチを高く評価する一方で、利便性の高さからオンラインショッピングも好んで利用します。例えば、アパレル商品は店舗で購入することを好むという中国の消費者は、ここ数年、製品を選ぶ際に品質をますます重要視するようになり、正しい決断をするためには、販売スタッフからの個人的なアドバイスが鍵になると言います。しかし、一旦購入を決めても、利用可能なオプションや宅配の利便性を考えて、その商品をオンラインで購入することもあるようです。
- 直接的かつ個人的なアプローチで購入を導く。シニア世代の消費者は、商品を選ぶ際に、若い購買層よりもマーケティングメッセージに対して懐疑的な傾向があります。また、「買うチャンスを逃す恐れ」や同調圧力に影響されることも少なく、自分自身の判断で購入するかどうかを決めます。そのため、例え生成AIでも、一人ひとりに合ったやり取りをすれば、購買を促す信頼を築くことができるのです。
- 買い替えを促すには正直さと透明性を保つこと。シニア世代の消費者は、多くのお金を使う余裕があり、品質の高い製品には躊躇なくお金をかけます。しかし、彼らは目が肥えており、簡単には納得しません。正確な情報を直接届けることで、このような顧客の心を掴むことができるでしょう。
- シニア消費者の真の価値を考えるために「マーケットサイジング」の方法論を再考する。マーケティング担当者は、シニア世代の消費者の価値を過小評価しがちです。それは彼らの世帯規模が小さく、一見すると消費額が少ないように見えるからです。裏を返せば、このような消費者は一回の買い物で高額商品を購入する可能性が高いと言えます。さらに、この世代が一度顧客になると、若者の消費者よりもブランドに対するロイヤルティが高く、若い世代に影響を与える傾向が強く見られます。ブランドは、購入価格、ロイヤルティ、影響力などの要素を考慮して、このセグメントの価値をどのように測るかを再考する必要があります。そのためには、この市場の規模について従来の考え方を変えなければなりません。
良いニュースは、ブランドがこうした消費者にリーチするためにサブブランドや新製品を作る必要がないということです。興味を引きつけるようなアプローチで、シニア消費者に商品の魅力をアピールすればいいのです。そうすれば、今後何十年にもわたって利益をもたらしてくれる忠実な顧客を獲得することができるでしょう。
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