オフセットでの「カーボン・ニュートラル」をアピールする広告、英国で禁止へ
「環境にやさしい」「エコフレンドリー」「カーボンニュートラル」など環境に良いことを謳う商品や企業を目にする機会が増えている。環境への関心が高い人は、そのような商品を購入することで、環境保護に貢献していると考えるだろう。しかし、特定の謳い文句には注意が必要かもしれない。
イギリスでは、広告基準局(ASA: The Advertising Standards Authority)が、2023年後半から「カーボンニュートラル」「ネットゼロ」「ネイチャーポジティブ」といった用語の使用について、これまでより厳しい取り締まりを開始する。それは、「カーボン・オフセットによって、自然環境を悪化させることなく製品を購入できると主張する企業に対し、実際に効果があることを証明できない限り、措置を講じる」というものだ。
カーボン・オフセットとは、企業が日常の経済活動では努力しても削減しきれないCO2について、別の方法で埋め合わせる考え方のことだ。環境団体など他者の活動によって削減できたCO2の量をルールに従って数値化し、市場で取引できる形にした「クレジット」を企業が購入する。
カーボン・オフセットについては注目度も高まっている一方で、最近では、議論も沸騰している。例えば、世界有数の炭素基準を運営するVerraが認証した多くの「熱帯雨林の保護活動による効果のオフセット」が、自然の保全活動にほとんど影響を与えていないといった調査結果も出ている。ディズニー、シェル、グッチなど世界の有名企業がこれらのクレジットを購入して、アピールとして使っているが、カーボン・オフセットの仕組みを使って「カーボン・ニュートラル」を謳うことは、結果として消費者に誤解を与える可能性がある、というのである。
イギリスの広告基準局(ASA)はこのように、カーボン・オフセットが消費者に誤解を与えるグリーンウォッシュにつながりかねないことを危惧し、対策の一環として、「カーボンニュートラル」などの用語の使用について、取り締まりを開始する予定だ。
グリーンウォッシュへの対策は、欧米やアジアを含めた世界的な動きになっている。
例えばオランダでは、ファッション小売業のH&Mが、オランダ消費者市場庁(ACM)の調査を受けて、同社の商品からサステナビリティに関するラベルを取り除くと発表した。またオーストラリアでも、2022年エネルギー企業に対し事業内容を誇張したとして初めて罰金が科され、韓国では2023年1月、虚偽や誇張した環境配慮を掲げる企業に罰金を科す法案が初めて立案された。
「環境にやさしい」活動で企業が消費者を欺くような行為があってはならない。対策として、規制を厳しくすることについては賛否両論あるだろうが、大事なことは、「あくまで持続可能な社会への実現のために、どのような仕組みを作り、どのように実行していけばよいのか」を考え行動に移すことだ。今回のような取り組みが、今後のより良い未来に向けた議論のきっかけになることを願ってやまない。
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