市民科学者による驚くべき発見
市民科学者の活動が、大規模な科学プロジェクトを成功に導く大きな役割を果たすことがあります。 Image: REUTERS/Regis Duvignau
- 人類初期の文字体系が、アマチュアの考古学者によって解読されました。
- ヨーロッパにある氷河期時代の洞窟壁画に見られる図形が、太陰暦であったことを発見したのです。
- 市民科学者は、さまざまな研究プロジェクトに多大な支援を提供しています。
人類最初の書記が当初考えられていたよりも約1万年早かったことを発見し、人類の文字の歴史を覆したとみられるのは、一人のアマチュア考古学者でした。
この発見は、ヨーロッパ各地の古代の洞窟壁画を詳細に調査した結果、確認されたもので、ケンブリッジ考古学ジャーナル(Cambridge Archaeological Journal)で報告されました。
氷河期の原文字体系と、初期の太陰暦がアマチュア科学者によって発見されたことは、主流の科学研究活動に対して重要な貢献をすることが多い、市民科学者と称される人々の喝采を浴びました。
そのアマチュア科学者は、家具修復を本業とするベン・ベーコン氏です。ベーコン氏は長い時間をかけて、絵画の中に描かれているドットや小さな図形の意味を解析しました。
ベーコン氏は、このマークが動物のライフサイクルに関連しており、動物が交尾や出産する太陰月の詳細が記されているという仮説を立てました。
この仮説を検証するため、ベーコン氏は、ダラム大学やユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者たちと共同研究を進めました。
ダラム大学のロバート・ケントリッジ教授は、ベーコン氏の研究が貴重な洞察をもたらしてくれたとBBCに語っています。「氷河期の狩猟採集民は、単に現在を生きていたのではなく、過去の出来事が起こったときの記憶を記録し、それを使って将来に同様の出来事が起こることを予測していたと考えられ、これは記憶現象の研究者がメンタルタイムトラベル(心的時間旅行)と称する能力です」。
市民科学者によるさらなる発見
市民科学者の活動が、大規模な科学プロジェクトを成功に導く大きな役割を果たすことがあります。研究によっては、大量のデータセットが必要であるものの、予算も少ないうえに少人数の科学者チームでは、収集が困難というプロジェクトもあるのです。ここでは市民科学が大きな成果を上げた事例をいくつか紹介します。
行方不明の宇宙船を探知する
2018年には、一人のアマチュア天文家が米航空宇宙局(NASA)に電話をし、「長期間にわたって行方が分からなくなっていた衛星からの信号を探知した」と伝えたそうです。
人工衛星「IMAGE」の交信は2005年に途絶え、NASAは衛星の探索を断念していました。
スコット・ティリー氏からの情報提供から10日後、NASAのエンジニアはメリーランド州のジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所の科学者とともに、信号がIMAGEから送られたものであることを確認しました。
水質モニタリング
行方不明になった宇宙船の探索は難しいという人でも、身近な市民科学プロジェクトに参加して、世界の喫緊の課題を改善する手助けをすることができます。
アースエコー・ウォーター・チャレンジは、世界中の市民科学者の参加により、私たちの命綱である水域を守る活動を支援しています。
このプロジェクトでは、ボランティアに水質検査キットを提供し、地域の水源で採取してもらったサンプルを評価します。その結果はオンラインでアップロードされます。
現在、140を超える国々のボランティアが水質データを提供しています。
参加するには
市民科学者になってみたいという方は、様々な分野のプログラムで研究を支援することが可能です。
宇宙塵の検出から植物生態のモニタリング、鳥の数のカウントまで、様々な分野で研究が行われており、科学の大きなブレークスルーとなるような発見をするチャンスは、あなたにもあるのです。
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