「100年に一度」の大規模再開発から、100年後の東京へ
東京の大規模再開発では、古い建物の修復と地震対策が同時に行われています。 Image: Unsplash/Mike Hsieh
- 東京の大規模再開発は、人気の街、高層ビル、新しい交通網を対象とした「100年に一度」の事業です。
- この再開発事業は、人口増加、地震対策なども考慮され、工事は着々と進められています。
- 都市再開発は、東京のような大都市における生活やライフスタイルの変化に対応するものであることも重要です。
東京は「100年に一度」と言われる大規模な再開発の只中にあります。若者の街として新しい文化を発信してきた「渋谷」、皇居にも近い東京駅周辺、オフィスと住宅が共存する街づくりをめざす「虎ノ門・麻布台エリア」、そして東京オリンピック・パラリンピックの開催地でもあった「湾岸エリア」など、再開発の対象エリアは複数にわたり、街は目まぐるしく変化を遂げています。
なぜ今「100年に一度」の大規模再開発なのか
東京都でめまぐるしく再開発が進む理由はさまざまです。鉄筋コンクリート造の建物のライフサイクルは、仕上げ材や工法によって68年から150年と言われていますが、法律上、固定資産として使える年数は47年とされています。また、1986年からのバブル期に供給されたオフィスビルが建て替え時期を迎えていること、旧耐震基準のオフィスビルの建て替えが必要とされていること、そして2011年に起きた東日本大震災発生からの学びを受け、防災機能を意識した再開発が必要とされていることなどが挙げられます。
高層ビルの建設ラッシュ
渋谷では、2023年から2029年の間だけで主なオフィスや商業ビルの開発は8つを数えます。2027年の完成をめざす渋谷駅周辺では、この秋、海外からの出張者の中長期滞在やスタートアップ支援を意識した、地上39階の高層ビルを中心とする複合施設、Shibuya Sakura Stage(シブヤ サクラ ステージ)が完成し、2024年夏頃までに商業施設も順次開業することが発表されたばかりです。このプロジェクトを手がける東急不動産の岡田正志社長は「駅周辺は再開発の最終ステージで、渋谷は色々な人が訪れやすい街になります」と述べています。
渋谷から6キロほど離れた虎ノ門エリアには、森ビルが2023年秋に「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」を開業することを発表しました。地下鉄「虎ノ門ヒルズ」駅と一体で開発される、地下4階・地上49階建て、高さ約266mとなる超高層タワーには、オフィスやホテル、商業施設、情報発信拠点などが設けられ、すでに竣工している3棟のタワーを合わせた開発エリアの延べ面積は約80万m2となります。森ビルの辻慎吾社長は「単なるビルの建て替えではなく、かつてない大規模な都市インフラと一体となって再開発を実現した」「東京は、世界中からヒト・モノ・カネ・情報を惹きつける磁力のある都市でなければならない」と語っています。
デジタル化が進み、また新型コロナの感染拡大の経験から人々の生活や働き方が大きく変わりました。
”公共交通機関も大きな役割を担う
都市の再開発には、公共交通機関も大きな役割を担っています。たとえば一日平均332万人が乗降し、4社9路線が乗り入れている渋谷駅は、その利便性をより高めるため、2015年から工事が進められています。2023年1月には主要ホーム工事のため、列車を二日間止めるという異例の作業を実施。この時に要した作業員の総数は約4000人、所要時間約53時間30分といった事から、その規模の大きさがわかります。
東京オリンピック・パラリンピックの開催で一変した臨海部も、大きな変化を遂げています。選手村跡地は、約12,000人が住む巨大なマンション街「晴海フラッグ」に生まれ変わり2024年3月に開業予定。また約23haある築地卸売市場跡地でも再開発計画が進んでいます。こうした臨海部の人口は今後も増え続けることが予想されているため、東京都は新たな地下鉄の開発を発表しました。開発のための事業費は概算で4,200億円から5,100億円。これは東京都の年間税収の約1割に相当する額です。開業後30年以内の黒字化を見込んでおり、2040年までの実現をめざしています。また、国際競争力をより強化するため羽田空港への接続を今後検討することも同時に発表されています。
100年後に向けて
これだけの規模の再開発には、課題もあります。デジタル化が進み、また新型コロナの感染拡大の経験から人々の生活や働き方が大きく変わりました。都内でもシェアオフィスやコワーキングスペースなど、非伝統的なオフィスの拠点数は急増し、曜日別に貸し出すレンタルオフィスも企業にとっては選択肢となりました。そうした中、オフィスビルの需要はあるのか。また、新たな地下鉄は計画通りに黒字化できるのか。人口増加が続いた東京でさえ全体では2030年代半ばには人口減少に転じるとみられています。そうした中、今からこれだけの巨額投資をする必要はあるのかという意見も聞かれます。過去には、開発の変更や停滞はした事もありました。2014年2月に建設着工した豊洲新市場の開場は、当初の2016年の秋から2年後の2018年に延期された経緯もあります。
100年に一度の再開発は、東京を住みやすい街にするだけでなく、世界から企業や人材が集まる次世代型の都市として一層魅力的にする機会です。また、忘れてはならないのが、今後30年以内に発生する確率が70%と高い数字で予想されている、マグネチュード7クラスといわれる首都直下地震。街の防災機能は不可欠です。これからの100年を見据えた東京の街づくりが期待されます。
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