日本の若者たちが取り組む、気候変動対策
日本の若者は、変化を求める世界中の若者の潮流に声を加えています。 Image: Unsplash/Matt Palmer
- 気候変動へのより具体的な対策を求める若者の活動が、大きなうねりとなっています。
- COP27へも日本の高校生や大学生が参加し、気候危機の解決へ向けたアクションを起こしています。
- 気候変動にかかわる全ての意思決定プロセスに、子どもと若者が参加することのできる仕組み作りが急がれます。
気候変動が差し迫った課題であるとの認識が世界中で広まる中、特に、未来を生きる若者世代の間でサステナビリティへの関心が高まっています。日本国内の15〜69歳の6,800人を対象に実施した、サステナビリティに対する意識調査によると、どの世代も共通してサステナブルな製品に対して追加料金を支払っても良いと考えていることが分かりました。しかし、注目すべきはその価格の許容度です。サステナブルな製品に「2倍の追加料金を支払っても良い」と回答したのはZ世代が20%と際立って多く、他の世代と比較すると2.5〜10倍になりました。
気候変動対策を導く、若者たちの活動
政府や企業に対し、気候変動へのより具体的な対策を求める若者の活動も、大きなうねりとなっています。若者たちが気候危機について話す場を提供する「日本版気候若者会議」は、これまで政府や主要政党、経団連などと意見交換を重ね、政策提言という形で若い世代の声を可視化してきました。気候変動の影響を最も受けるのは若い世代であるのに対し、政策の意思決定者は上の世代であることに「大きな意識の差が生じている」と、日本版気候若者会議の運営メンバーは訴えています。
また、世界の若者たちが地球温暖化対策の強化を訴える「世界気候アクション」は、9月に国連総会の開催に合わせ、日本全国各地で企画され、約400人の若者が街頭デモに参加しました。新型コロナウイルス感染拡大の影響から3年ぶりとなるこのデモで、若者たちは「気候変動を止めるのは今しかない」「未来を変えるのは私たち」と、気候危機への切迫した思いを訴えました。環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんのスクールストライキをきっかけに始まったフライデー・フォー・フーチャーの日本での運動に加わる大学生は、石炭火力発電を維持する姿勢を保つ日本政府に対し「もっと具体的に動いてほしい」と話しました。
次世代のリーダーがCOP27でアクションを起こす
気候変動に対し、これまで以上に世界中で若者たちが声をあげる中、エジプトで開催されている国連気候変動枠組条約の締約国会議(COP27)では、史上初の「若者のための議席」が正式に用意されました。また、「子どもと若者のパビリオン」も設置され、子どもたちによるディスカッションや政策報告の場が作られました。
COP27に日本の高校生や大学生たちも参加しています。フライデー・フォー・フーチャーの活動を続けてきた大学生、中村涼夏さんと山本大貴さんは、「訴えるだけではなく、いろいろな立場の人の話を聞いて、発信したいと思うようになった」と、COP27の場で新たなアクションを起こしています。街頭や国会で声をあげ続けてきた2人は、その活動を報じられる側の立場に置かれていました。若者であるというだけで、気候変動を解決する役割を期待されていることに重圧を感じていたと気持ちを打ち明けます。「record 1.5」と名付けられた2人の新たなプロジェクトでは、COP27に世界中から集まる若者や環境活動家、地元の人たちの声や行動を映像で記録したドキュメンタリーが制作される予定です。記録を通じて、気候変動の被害者が持つ本当の意味での危機感を共有し、本質的な解決に向けた対話の土台を作りたいと、意欲を燃やしています。
全ての意思決定プロセスに子どもと若者を
地球が気候変動による危機的状況に直面している今、若者たちがこうして声をあげ、気候変動に対する大人たちの対応に異議を申し立て、行動を起こしていることを、大人たちは真剣に受け止める必要があるでしょう。
日本は、温室効果ガス排出量を2030年までに2013年比で46%削減するという目標に掲げて、カーボンニュートラル実現への道を歩んでいます。環境省や経済産業省によると、797の自治体と、200社以上の企業が2050年までのネットゼロを宣言し、官民が連携した取り組み進めています。これらの取り組みに、未来の当事者である子どもと若者の声が取り入れられることで、変革は加速するでしょう。子どもと若者こそ強力な変化の担い手であることを認識し、気候変動にかかわる全ての意思決定プロセスに、彼らが参加することのできる仕組みが早急に整えられることが期待されます。
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