カニの殻で電池をつくる。リチウムイオン電池の代わりになるか
カニの殻で電池をつくる。リチウムイオン電池の代わりになるか Image: Unsplash/Alvin Matthews
ノートパソコン、スマートフォン、電気自動車などに使われる、リチウムイオン電池。
小型で軽いため、広く普及しているリチウムイオン電池だが、その原料である「コバルト」や「リチウム」の採掘時に、児童労働や危険労働、環境破壊といったさまざま問題が生じている。
たとえば、国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは2016年、コンゴ民主共和国で、死者が出るような過酷な労働環境でコバルトが手掘りされていることを確認した。採掘現場では、子どもも働いていたそうだ。
また、アメリカの戦略国際問題研究所によると、南米チリでは1トンのリチウムを採掘するのに50万ガロン(約190万リットル)もの水が使われている(※1)ことや、原料を採掘する鉱山周辺の汚染や廃棄物の増加が、環境へのリスクになっている。
このような状況のなか、アメリカ・メリーランド大学の研究者らは2022年9月、リチウムイオン電池に代わる可能性がある、新しい電池を発表した。なんと、カニの殻(から)を使って作った亜鉛電池だ。
カニの殻は、通常なら飲食店で捨てられるだろう。そんな「ごみ」を「貴重な素材」だと捉えたのが今回の取り組みである。
カニやエビなどの甲殻類の殻には、キチンという成分が多く含まれている。そのキチンを「キトサン」という物質に変え、さらに「電解質」に変えることで、生分解できるようになるのだ。メリーランド大学のサイトによると、5か月ほどで完全に分解できるという。そもそもごみから作られた素材なので採掘の必要がなく、電池としての役割を終えて取り出された亜鉛は、リサイクルもできる。
同論文の筆頭筆者であるリアンピン・フー氏は、論文内で「亜鉛は、リチウムより多く地殻に含まれています。また、一般的に、亜鉛電池はより安全かつ安価です」と語っている。亜鉛電池は、太陽光や風力で発電した電力を貯蔵するための、有力な選択肢になるという。
カニは、アメリカ・メリーランド州の名物だ。そんな同州の研究者たちが、カニの新たな可能性を発見したことが興味深い。
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