日本のSDGs - 理想と現実「SDGs消費経験は3割」にすぎない?
地球環境や社会に配慮されたエシカル商品やフェアトレードなど、近年、SDGs消費が注目されている。 Image: Shutterstock/Minerva Studio
地球環境や社会に配慮されたエシカル(倫理性・道徳性の高い)商品や、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」であるフェアトレードなど、近年、SDGs消費が注目されている。
5月10日、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションと立教大学の斎藤明教授が実施した「SDGs消費」に関する調査結果が発表された。
今回の調査は、「SDGsを意識した消費活動」の現状と課題を分析するためのもの。調査対象は、インターネットアンケートサービス「NTTコム リサーチ」にモニターとして登録している18歳以上の男女1105人。調査期間は、2022年3月4日(金)〜2022年3月7日(月)。
調査結果からは、「理想」と「現実」が垣間見える。
SDGsへの好感度、男女に温度差も
ここ最近では、学校教育の現場でSDGsについて学ぶ授業があったり、テレビ番組でもSDGsについて取り上げられることが多かったり、SDGsの認知度はかなり広がっているように感じられる。この調査では、「あなたは、SDGsについて知っていますか」という質問に対し、「とてもそう思う」「ややそう思う」とSDGsを認知していると回答した人の割合は全体の5割弱。このうち「SDGsについて内容を理解している」と回答したのは約8割だった。
また、SDGsの説明をした後に、「SDGsについて好感を持っている」か尋ねたところ、約半数(49.2%)が「とてもそう思う」「ややそう思う」と回答している一方、「どちらとも言えない」という回答も36.4%だった。
なお、男女別に見ると、SDGsについて好感を抱いている割合は、男性よりも女性の方が10ポイント以上高かった。
イメージが難しいSDGs消費
調査の中で、「SDGsを意識した活動は、よりよい未来を構築するために不可欠である」という問いに対して、「とてもそう思う」「ややそう思う」と解答した人の割合は51.2%と半数を越えた。
SDGsの意義は一定数社会に浸透しつつある一方で、「実際にSDGsを意識した消費(以下、SDGs消費)の経験がある」かを問う質問では、「とてもそう思う」「ややそう思う」と回答した人は3割に満たなかった。また、同回答は女性で34.2%だったのに対して、男性は21.4%と、ここでも男女間での意識の違いがみられた。
また、「普段の買い物でSDGsを意識する」という設問に対しても、「とてもそう思う」「ややそう思う」と解答した人の割合は合計で約3割。「どちらとも言えない」と回答した人が4割いた。
SDGsの重要性は理解していても、実際に消費行動にまで反映できている人はまだ少ない。
価格上昇、どこまで許容?
SDGs消費の対象となる製品は、現状では通常の商品に比べてやや価格が高くなりがちだ。
今回の調査では、SDGs消費に伴う「価格増」をどこまで受容できるのかもヒアリングしている。
その結果、コーヒー、食料品全般、衣料品、電力など、どの商品に対しても、消費者は価格が1割上がった段階で「高い」と感じると回答があった。
また、「これ以上高いと『高すぎて買えない』と思う価格はいくらくらいですか。」という質問には、多くの商品で「通常商品より、3割増」と回答する人の割合が高かった。
ただ、SDGs消費をする上での価格上限を年代別に見ると、18歳〜25歳までの若年層では、「通常商品より5割増」との回答が最も多かった。一般的に見れば、所得が最も低いとされる世代ではあるものの、SDGs消費における価格増に対する許容度は高かった。
SDGsの期限である2030年まであと8年。国や企業の取り組みはもちろん重要だが、それを進めていくには、私たち一人ひとりの消費行動の変化も重要となる。
文=中尾咲希 協力=三ツ村崇志
*この記事は、Business Insider Japanの記事を転載したものです。
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