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なぜ今、はしかの患者数が急増しているのか

はしかワクチンができるまでは、この病により毎年数百万人が死亡していました。 Image: Unsplash/Kristine Wook

Victoria Masterson
Senior Writer, Forum Stories
本稿は、以下会合の一部です。世界経済フォーラム 年次総会2022
  • 新型コロナウイルス感染拡大により、はしかワクチン用の資源が転用されたため、2022年1月、2月のはしか症例数は、前年同期比79%増となりました。
  • この1年間ではしかの大流行が見られた上位国は、ソマリア、イエメン、ナイジェリア、アフガニスタン、エチオピアです。
  • 予防可能な病気に対する57の予防接種キャンペーンは、43カ国で延期されたままです。ユニセフと世界保健機関は、早急に再開する必要があると警告しています。

はしか(麻しん)は通常ワクチンで抑えられていますが、現在、患者数が急増しています。
ユニセフ(国連児童基金)と世界保健機関(WHO)の共同データによると、2022年1月と2月のはしか症例数は、前年同期に比べ80%近く急増しました。一体何が起きており、その蔓延はどれほど深刻なのでしょうか。

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はしかとは

はしかは非常に感染力の強い病気です。WHOによると、2018年には、はしかにより14万人以上が命を落としており、その大半は5歳以下の子どもでした。開発途上国、特にアフリカやアジアの一部では、はしかは依然として流行しています。

はしかは、はしかウイルスが気道で感染することにより発症し、その後全身に広がる病気です。高熱や発疹などの症状が見られ、失明、脳炎(脳浮腫を引き起こす感染症)や、肺炎のような重症呼吸器感染症など深刻な合併症を引き起こす可能性があります。はしかに関連する死因のほとんどは、このような合併症です。はしか感染の危険に最もさらされているのは、ワクチン未接種で栄養状態の良くない幼児です。

はしかは、咳やくしゃみなどによる飛沫感染、鼻咽頭からの分泌物に触れることによる接触感染などで広がります。

はしかワクチン接種のこれまでの効果とは

はしかワクチンの接種は1963年に始まり、幅広く実施されてきました。WHOによると、1963年以前には年間約260万人がはしかで死亡し、2、3年に一度、大流行が発生。

死亡率は貧困国で高かったものの、1950年代半ばには米国でも年間約50万人がはしかに感染し、そのうちおよそ10%が死亡しています。米国では2000年に、はしかの根絶が宣言されました

WHOによると、2000年から2018年の間に、世界中で2,300万人以上がはしかワクチンを接種し、人々の命が守られました。これによりはしかワクチンは、「公衆衛生上、最も費用対効果の高い施策」だとWHOは評価しています。

ここ数十年で、はしかの報告症例数は着実に減少しています。
ここ数十年で、はしかの報告症例数は着実に減少しています。 Image: Our World in Data

はしかワクチン接種が遅れている理由

ユニセフとWHOは、2022年の1月と2月に、全世界で1万7,338件のはしか症例が報告されたことを発表。これは前年同期の報告症例9,665件に比べ、79%の増加です。

この1年間ではしかの大流行が見られた上位5か国は、ソマリア、イエメン、ナイジェリア、アフガニスタン、エチオピアです。

またユニセフとWHOの発表では、新型コロナウイルス感染拡大により定期予防接種のための資源が転用され、ワクチンの供給不足が生じたことが、各地ではしかの大流行が発生した主な原因とされています。

現在、さらに大規模な流行が起こる危険性があります。その要因としては、新型コロナウイルス感染拡大期に実施されていた行動制限の緩和や、ウクライナ侵攻をはじめとする紛争や危機により、数百万人が移動していることなどが挙げられます。

ポリオワクチン接種にも遅れが生じている

感染力が強く、麻痺を引き起こす可能性のあるポリオ(急性灰白髄炎)も、再び勢いを取り戻す懸念のある病気の一つ。これは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)により、ポリオワクチン接種に遅れが生じているためです。南北アメリカ大陸とその島嶼の総称であるアメリカ地域では、2020年のポリオワクチンの接種率は82%でした。汎米保健機構(PAHO)によると、これはアメリカ地域がポリオ根絶を宣言した1994年以降では最低の接種率でした。

今年初めには、アフリカ南東部のマラウイ共和国でも、1992年以来初の臨床的に確認された野生型ポリオウイルス感染の症例が報告されています。

今、実行しなければならないこと

2022年4月現在、43か国において、ワクチンで予防できる病気の57の予防接種キャンペーンが依然として延期されています。このうち19のキャンペーンは、はしか予防を目的としたものであり、7,300万人の子どもがはしか感染の危険にさらされています。

ユニセフとWHOは、延期されているキャンペーンの復活を望んでおり、その呼びかけは、GAVIアライアンス(ワクチンと予防接種のための世界同盟)(Gavi, the Vaccine Alliance)はしか・風疹イニシアチブ(Measles & Rubella Initiative)ビル&メリンダ・ゲイツ財団(Bill & Melinda Gates Foundation)等との連携により支援されています。

この他に、定期予防接種プログラムの強化に必要なステップとして、医療従事者やコミュニティのリーダーたちが予防接種の重要性を説明できるように支援すること、新型コロナワクチン予防接種を他の予防接種の予算と切り離し、独自予算で実施されるようにすることなどが挙げられます。

新型コロナウイルス感染拡大からのリカバリーの一環として、各国はワクチンで予防可能な病気の発生を防ぎ、対処するための計画も策定しなければならない、とWHOは強調しています。

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