農業の新時代を切り拓く「スマート農業」
自律型農業機械を活用したスマート農業が、農業を変えつつあります Image: Chris Ensminger/ Unsplash
- 自律走行トラクター等を活用した「スマート農業」により、農業の人手不足解消が期待されています。
- 農業用ドローンや種まきロボットなど、さまざまな革新技術が進んでいます。
- 自律型農業機械の市場規模は、2027年には950億ドルに達すると予測されています。
将来の食料供給を確保する上で鍵を握るのが、農業用ドローンや自動運転トラクター、種まきロボットなどの革新技術を活用したスマート農業です。自律型農業機械を活用することで、従来よりも少ない労力でより高い生産性を上げるとともに、環境への影響を抑えることが期待されています。
世界の農業現場では人手不足が深刻化し、食料サプライチェーンに影響が出ています。英国では昨年、農業サプライチェーン全体で問題化している人手不足の解消に向けて、National Farmers' Union(全国農業者連盟)がボリス・ジョンソン首相宛てにCovid Recovery Visa(新型コロナウイルス復興ビザ)の導入を求める嘆願書を提出しました。
カナダのAgriculture and Agri-Food Labour Task Force(農務・農産食品に関する労働タスクフォース)は、同国の農業の人手不足が2025年には11万4,000人に拡大すると試算。アメリカも置かれている状況は同様で、移民の減少が農業の人手不足を招いています。
Global Market Insights Inc.(グローバル・マーケット・インサイト)社の調査によると、市場予測では自律型農業機械の市場規模が2027年には950億ドルを超える見込みです。
スマート農業は、農業をどう変えるか
ここでは、農業に革命をもたらす3つの自律型農業機械をご紹介します。
1.人手不足を緩和する自律型トラクター
農業への入職者数が落ち込んでいる現在、人的労働力を必要とせず人手を減らすことができる自律型トラクターは、農業に大きな変革をもたらすでしょう。
1837年に世界で初めて商業的に成功した鋼鉄製の鋤(すき)を誕生させたジョンディア社は先ごろ、ラスベガスで開催されたConsumer Electronics Show(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)において、同社初となる完全自律型トラクター「8R」を発表しました。
「従来の農業では、より多くの馬力や肥料、より広い耕地を活用し、より多くの作業をこなすことが重要でした。しかし、新しいデジタル時代を迎えた今、すべてが変わりつつあります。この10年で、より少ない資源でもっと多くの作業をこなそうという考えが主流になりました。そこで私たちは、農業従事者が情報を吟味した上で意思決定ができるよう、より多くのツールを提供するようになったのです」と、ジョンディア社の最高技術責任者であるジャーミー・ハインドマン氏は語ります。
完全自律型トラクターの目的は、運転だけに8〜12時間を費やす日々から農業従事者を解放することにあります。その操作は携帯電話やパソコンからアプリを使って行うことができ、トラクターの位置の決定、畑の広さに合わせた走行、方向転換させて逆方向に走行させること、そして障害物を避けることもアプリの操作のみで完了します。
2.持続可能な農業を支援するドローン
農業用ドローンは、農作物の生産量の増加や、農作物の生育状況をチェックして最大限の収穫することに役立っています。
また、ドローンから得たデータを使って土壌サンプルを採取し、温度や水分、標高をチェックすることも可能です。
ドローン製造会社のDJI社は、空中農業というソリューションを提案しています。これはドローンを活用したソリューションで、空から農作物の生育状況の把握や、散布エリアを特定して農薬を散布することが可能です。
世界経済フォーラムのNew Vision for Agriculture initiative(農業のための新ビジョン(NVA)イニシアチブ)では、増加を続ける世界人口に対して農業部門が持続可能な方法で食料を供給できるようにしていくための支援を行っています。これまでにNVAは、650以上の団体と連携して100のバリュー・チェーン・イニシアチブを推進し、数多くの農業従事者に利益をもたらしています。
3.生産性を高める種まきロボット
種まきは、人手と時間を多大に要する作業ですが、種まきロボットによってその時間とコストを削減することが可能になります。
この自律型ロボットは適正な位置に種を植えることが可能で、これまで必要だった人手がかかりません。
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