公正、多様性、包摂性

日本におけるジェンダー・ギャップ、解消への道

Japanese women are still under-represented at political level and the boardroom.

日本では、女性が政治家や役員に占める割合がまだ低い。 Image: Unsplash/Eutah Mizushima

Makiko Eda

例年、世界中で注目される、世界経済フォーラム「ジェンダーギャップ・レポート」。2021年版では、引き続き、政治、経済の分野における「ジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)」に大きな課題がある事に加え、コロナ禍の影響もあり、「グローバル・ジェンダー・ギャップ(世界男女格差)」の解消には、「135年後」を要すると予想されています。これは、昨年の99.5年から、さらに「36年」が加わった事になります。

すべての国でジェンダー・ギャップがあるということが、ジェンダーギャップは私たちの社会経済活動が長年にわたり積み上げてきた慣習の結果として存在しており、何もしないで自然に解消されることではありません。日本では引き続きジェンダーギャップ解消のスピードが他の先進国に比べ遅い状況です。しかしながら長期的に組織として強くなるためには多様性が不可欠であるという認識もリーダー達はようやく持ち始めています。日本で「どのようにギャップを解消するのか」という議論を活性化するためにも、「ジェンダーギャップ・レポート」の4つの分野、「政治参画、経済、教育、医療へのアクセス」の中でも全体の引き上げに欠かす事のできない、政治参画、また社会の原動力となる「経済」の視点から、どのような取り組みがされているのか見てみます。

政治参画

日本政府は、2020年12月に「第五次男女共同参画基本計画」により、施策の基本的方向性、具体的取り組みを定めました。特に注目したいのは、政治・政策決定過程への女性の参画拡大、雇用分野でのポジティブ・アクションの推進等による女性の参画拡大です。この計画では、政党に対し、女性候補者の割合を高めることを要請するとされています。この取り組みにより本当に政治への女性の参画が図られるかについては、賛否両論はあるものの、クオータ制等を早急に導入すべきではないかという議論もされていると聞きます。

そもそも、男性中心の政治の分野に女性が参画するには、参入障壁が多々あるように見受けられます。国会運営、選挙活動、地元での活動等のありかたについても考える必要があり、こういった活動の決定プロセスの透明化も求められます。プロセスが見えないことで「これまでのやり方」や構造が守られ、結果としてこれまで参加がしにくかった女性や幅広い層から政治への流入を阻んでいる可能性があります。有権者が選挙を通じて形作っている政治ですから私たち一人ひとりが意識的な行動をとることで変革は起こせます。ただ女性が立候補することさえ見えない力で阻まれるようだと、なかなか女性の参画はすすみません。したがって決定プロセスの透明化がすすみ、幅広い経験を持った人がより参加できるような環境づくりが急務です。また中央の政治のみならず、地方自治体や市町村などでも女性をはじめ幅広い人達の政治参加がより進むよう、議会や選挙の運営方法のさらなる工夫を進めてほしいと思います。

The gender gap in Japan still persists compared to other developed countries
日本は他の先進国に比べて、ジェンダーギャップがまだ残っている Image: IMF

経済的機会

経済分野における女性の活躍促進もまだまだジェンダーギャップは大きいのが現状です。役員や管理職等の意思決定過程への女性の登用は十分でなく、グローバルに見てもいまだ大きく遅れているのが実態です。「第五次男女共同参画基本計画」では、有価証券報告書等における開示の在り方を含め、コーポレートガバナンスの改善に向けてジェンダーの視点も踏まえた検討を行うとされています。この点に関しては、2021年6月から適用されるコーポレート・ガバナンスコードの改訂により、管理職への女性や外国人の登用等について数値目標の設定や、達成状況の公表等を促すことが議論されています。同時に、管理職・幹部への女性登用のみならず、どのレベルであっても、継続的にスキル・キャリアアップを図れるようにワークライフバランスを整えるための方策は必要で、関連の施策では徐々に取り組みが進められています。

このように制度面からは取り組みが行われている一方、女性の幹部・管理職への登用について、女性登用に代表される、社内での多様性向上の取り組みがどのように業績向上に結び付いていくか、先進的な事例とともにデータで示されることが必至です。また、女性活躍は目的ではなく手段であるという考えも重要です。DX促進と同様に、それ自体が目的になるのではなく、事業を見直しイノベーションを促進するために、女性活用をはじめとする多様性の向上が必要であると頭を切り替える必要があるのです。

無報酬の仕事の負担軽減

政治や経済におけるジェンダーギャップの解消には、その大前提に育児や介護など家庭における無報酬の仕事の負担をより男女公平にしていくことがあります。男性の育児休暇の取得をはじめ企業や政治における働き方の変革など、もうすでに議論は活発ではありますが、スピード感をもって実行に移し、こういう制度をすべての人が気持ちよく使えるようにすることが求められます。仕事への考え方は世代間のギャップもあり、ますます多種多様になっています。こうした背景を踏まえて変化を起こす事は、画一的な働き方・キャリアトラックではなく、柔軟で流動的な雇用市場を創出することにもつながります。こうした点を踏まえると、働き方改革・企業文化の転換も不可欠です。

このようにジェンダーギャップの解消のためには、その解消を目指すという強い決意と社会全体の構造変革が求められます。今回のコロナ禍では、女性の方が男性にくらべ経済的な痛手を受けており、世界経済フォーラム「ジェンダーギャップ・レポート2021」で、日本は156か国中120位というランキングの発表もありました。日本におけるジェンダー・ギャップの解消へ向けた決意が多くのリーダーにより共有され、その努力が政治や経済の現場で変わったという実感に繋がる事がまず第一。そしてその結果として、こうしたグローバルな報告書にその変化が反映される日が近い事を期待しています。

世界経済フォーラム日本代表 江田麻季子

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