スイス、国民投票で父親の育児休業を全国的に承認
Image: REUTERS/Denis Balibouse
- スイスではこのほど、国民投票で父親の育児休業が認められました。
- 2021年1月1日より、新しく子どもが生まれた父親に10日間の有給育児休暇を取得することができます。
- 父親の育児休業を認めている国は、母親の出産休暇・育児休業を認めている国より少なく、父親の育児休業期間と補償内容は、国により大きく異なります。
9月27日、スイスで国民投票が行われ、父親に有給の育児休業を認める法案が可決された旨をニューヨーク・タイムズ紙が報じました。スイスは、西欧諸国でもっとも遅く父親の育児休業が認められた国となりました。
本制度が2021年1月より施行されると、新たに子どもが生まれた父親に10日間の有給育児休業が認められます。これまで、スイスでは、子どもが生まれたあとに父親に許可される有給育児休暇は、わずか1日でした。
米、政治専門紙「ザ・ヒル」によると、父親の育児休業は、2019年にスイス連邦議会で可決されました。しかし、批判的な勢力からの反対を受け、特別レファレンダム(国民投票)が提起され、同法案は国民の判断にゆだねられました。そして、このたび実施された国民投票により、有権者のおよそ60%が同法案に賛成を表明。その大半がフランス語圏とイタリア語圏の州からの支持でした。
育児休業を取得した父親は、給与の80%を上限に、1日当たり196スイスフランまで支給されるとニューヨーク・タイムズ紙は報じています。スイス連邦社会保険庁は、本制度の実施により、年間2億3,000万スイスフランが必要になると試算しています。
経済協力開発機構(OECD)加盟国において、母親の出産休暇制度は確立されており、女性は平均して、出産前後に18週間以上の産休を取得することができます。EU加盟国は、育児休暇制度におけるグローバルリーダーとしての役割を果たしてきました。中には80週以上取得できる国もあるのです。
父親が育児休業を取得できる国は多くはありませんが、その数は増加しており、国際労働機関(ILO)によると、1994年から2015年までに、40か国から94か国にまで増えました。
父親の育児休業事情は進展しつつも、その期間と補償内容は国により大きく異なります。例えば、OECD加盟国の中には、父親に育児休業をまったく認めない国もあります。一方フランスでは、新たに子どもが生まれた父親の育児休業期間が、従来の2倍となる28日に延長されたとガーディアン紙が報じました。
昨夏に採決された措置により、EU加盟国は、家族に対する最低限の権利を規定する法律を行使する手段のひとつとして、2022年までに父親に2週間の有給育児休業を付与しなければなりません。
育児休暇の効果については幅広く論述されており、無給で子育てをする女性の負担低減、母親への産後職場復帰支援、新たに親となった夫婦の離婚率の低減などがあげられます。
世界的なジェンダーパリティ(ジェンダー公正)の進展を追跡する世界経済フォーラムの年次指標、グローバル・ジェンダー・ギャップレポート 2020で概説されている重要な平等指標に「経済参加」がありますが、育児休暇により、この経済参加も確保されるのです。
性と生殖に関する健康と権利を支援する団体、プロ・ファミリア理事のフィリップ・ネギ氏は、今回の国民投票は、ジェンダーダイナミックスに対する認識の変化を反映しているとして、スイスのニュースサイト「ザ・ローカル」で次のようにコメントしています。「社会は徐々に進歩しており、女性は家庭にとどまるべきという規範は、現代にはもはや不適切であることを、この国民投票の結果が示しています」。
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