米国、そして世界で進められる森林再生
Image: REUTERS/Pilar Olivares
- 樹木は、気候危機に立ち向かい、動植物の命を支える上で鍵となるものです。そして、雇用、ビジネス、さらには私たちの健康にとっても不可欠な存在です。
- 緑を大切にしようという気運は世界的に高まっていますが、米国においては、山火事「キャンプ・ファイア」などによって焼失した地域において、森林再生を目指す植樹の取り組みやパートナーシップが多く生まれています。
- 8月末には、アメリカン・フォレストと世界経済フォーラムが主導する「1t.org」イニシアティブの米国支部が発足しました。より緑豊かな未来の実現を目指し、8億5,500万本の木々が植樹・保全され、さらに数十億ドルがマッピング技術やカーボン・ファイナンスなどの支援活動に投入される予定です。
私たちには、もっと多くの緑が必要です。樹木は気候危機に立ち向かう上で、そして、唯一無二の動植物が生きていく上で鍵となるものであり、雇用、ビジネス、さらには私たちの健康にとっても不可欠な存在です。
森林は現在、米国内だけでも化石燃料の使用から排出される二酸化炭素の15%を吸収していますが、これを倍増できる可能性があります。樹木は大気汚染物質も吸収し、米国内で年間最大67万件の喘息およびその他の急性呼吸器症状の予防に貢献しています。また、調査によると、米国では森林再生に100万ドルが投資されるごとに、新たに40の雇用が生まれています。世界的に見ても、森林の持続可能な管理により、2030年までに2,300億ドルのビジネスチャンスと1,600万件の雇用が生み出される可能性があります。
私たちはこれまで、樹木を軽視しすぎていました。しかし、より緑豊かな未来が経済、人類、そしてこの地球のレジリエンス(適応、回復できる力)にとっての鍵であることは明白です。
幸いなことに、世界中で、人々は樹木の力を活かして、社会的不平等、気候変動危機、生物多様性の損失に取り組もうとしています。
サハラ砂漠周辺のアフリカ諸国は、一丸となり、砂漠化を食い止めるための「グレート・グリーン・ウォール」と呼ばれる5,000マイルにおよぶ植樹活動をスタートさせています。パキスタンでは、政府が失業者を雇用し、100億本の植樹に取り組んでいます。中国では、モバイルアプリを利用して資金を集め、1億2,000万本を超える植樹が行われた例もあります。
米国では、党派を超えた運動が全国的に起こっています。南テキサスのリオグランデバレーでは、毎年、国境の両側からあらゆる年齢層のボランティアが集まり、かつてこの地域を覆っていた生態学的に貴重な有刺林を植え直しています。カルフォルニア全域では、「キャンプ・ファイア」と名付けられた山火事などで焼失したエリアでの森林再生のため、官民パートナーシップが短期間で誕生し、急速な温暖化により発生が懸念される将来の山火事にも強い種を使って、再植林する活動が行われています。
都市部での植樹活動は、米国全域で盛んに行われています。フェニックスからプロビデンスに至る様々な都市で、収入や人種による森林被覆の不公正の広がりを是正することを目指す、植樹の取り組みが広められています。今夏、米国で見られているような猛暑に対する脅威の高まりから都市を守るには樹木の冷却効果が必要であるため、この是正は命に係わる大きな課題です。
この世界的な気運の高まりに後押しされ、世界経済フォーラムは1月に、2030年までに世界で1兆本の樹木を保全、再生、育成する世界的な取り組みを支援する包摂的なプラットホーム、「1t.org」を立ち上げました。現在、当フォーラムはアメリカン・フォレストと連携し、米国の国内外でのリーダーシップを通じて、このビジョンを推進していこうとしています。
米国には、包摂的で超党派的なリーダーシップを果たすという重要な役割があると確信しています。それは、努力と革新というアメリカ人の精神に通じます。私たちのビジョンは、あらゆるレベルの政府、企業、非営利組織、科学者、起業家、そしてコミュニティグループが、力を合わせて森林を保全し、再生させ、将来の世代に豊かな森林を残すこと。多くの人たちは、既に重要な、前例のない仕事に尽力していますが、資金面、技術面における支援に限らず、人々のエネルギーや気運を高めることも必要なのです。
これは決して夢物語ではありません。7月、ワシントンDCの超党派のリーダーたちが団結し、この50年間で最大の森林保全対策である「グレート・アメリカン・アウトドア法」が可決しました。米国気候同盟の25州のリーダーたち、そして米国全域の市長たちも、森林を保全、再生し、育成させるるための思い切った公共政策を打ち出しています。さらに、2030年までに12億本の樹木を米国の国有林に植樹し、約4万9千件の雇用を支援することを目指す超党派の「REPLANT法」などの連邦法の制定も進みつつあります。
しかし、これは政府だけの課題ではありません。テクノロジー、小売り、金融といった様々な分野の企業も森林保全や何百万本もの植樹に取り組んでいます。若者のグループや宗教団体も、そのメンバーたちを巻き込んだ新しい植樹活動を始めています。家族単位や個人でこれらの取り組みに参加している人たちもいます。活気に満ちた時期を迎えてはいますが、この先にはまだまだ長い道のりが待っています。
8月末に、アメリカン・フォレストと世界経済フォーラムが主導する「1t.org」米国支部が発足した背景には、こうした理由があるのです。私たちの目標は、今以上の貢献をしていくためのきっかけをすべての人に与えること、そして、そのための環境を整えること。より緑豊かな未来の実現を目指し、8億5,500万本の木が植樹または保全され、さらに数十億ドルがマッピング技術やカーボン・ファイナンスなどの支援活動に投入される予定です。
将来を見据えている個人や組織と力を合わせることで、私たちは、自らと地球のための豊かで持続可能な未来を形作ることができるようになります。そしてそれは、私たちが最低限達成しなければならない結果なのです。
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