自然と生物多様性

気づかないうちに今日も捨ててしまう、使い捨てプラスチック

That all-day freshness comes at an environmental cost - but it doesn't need to.

一日中続く「洗い立て」の爽やかさには、環境負荷が伴いますが、その負荷は避けることができます。 Image: Michaela Wenzler from Pixabay

Simon Hombersley
CEO, Xampla
  • 砂粒ほどの大きさのマイクロプラスチックが、洗濯用洗剤や化粧品といった日用品の中に目に見えない形で含まれています。
  • 欧州連合(EU)では、毎年1,700万トンのマイクロプラスチック微粒子が生産され、その多くは海に流れ出ています。
  • 植物由来の新たな素材が、この問題の解決手段となり得るでしょうか。

私たちは皆、使い捨てプラスチックがどのようなものかを知っていると思っています。そして、使い捨てプラスチックの利用を避けたり、再利用やリサイクルに熱心に取り組んだりしています。そして今、プラスチック製のボトル、箱、袋に加え、新型コロナウイルス感染拡大により使用が急激に増えた大量の個人防護具が、対処しなければならない問題となっています。

しかし、大量のマスクがクラゲのように海に漂う中、これとは別に、カメラのレンズでは捉えられないプラスチック汚染物質が海に浮かんでいます。

それは、人々が恐らく日々使用していながらも、目にすることのない類いの使い捨てプラスチックです。砂粒ほどの大きさの、目に見えないマイクロプラスチックは、回収してリサイクルすることができません。少しずつ、これが大きな問題となり始めています。

「マイクロカプセル」と呼ばれるその物質は、マイクロプラスチックの一種です。毎年、何百万トンものマイクロカプセルが生産され、家庭用品、洗濯用品、スキンケア製品、化粧品の原材料に添加されています。肉眼ではほとんど見えず、液体やローションに浮遊しているこれらの隠れたマイクロプラスチックは、衣類の柔軟剤や洗剤に含まれる香りの粒のような活性成分を保持し、放出します。

香りは、科学的に巧妙な方法でその効果を発揮します。私たちの脳は、衣類がある種の香りを放つ時に、その衣類がより白く見えるような感覚を引き起こします。ブランドによってそれぞれ香りに特徴があり、その香りを商品の付加価値とすることができるのです。しかし、これらは、顧客と業界のどちらにも利点となっていますが 、その陰にはマイクロカプセルの存在があります。

この極小カプセルは、人が意識しやすい瞬間に香りを放つことで、私たちが好きな「洗い立て」の香りが衣類から感じられるため、大ヒットとなっています。干されている洗濯物が乾く際にそよ風に乗って広がる香り。頭から衣類をかぶった時に感じる爽快感。長い一日の終わりまでしっかりと残る香り。これらを可能にしているのは、商品に添加されているプラスチックなのです。

エナジーセービングトラストによる洗濯機使用データに基づいて推測したところ、英国の平均的な家庭では、一週間の洗濯サイクルにおいて5,500万個のマイクロカプセルが放出されています。筆者も含め、大多数の人にとって理解するのがとても難しい量ですが、控えめに見積もって 、各家庭は一週間毎に約1,400万個のプラスチック微粒子を排水溝に流していることになります。欧州だけでも、毎年17,000トン以上のマイクロプラスチックが洗濯用洗剤やその他の洗浄剤に添加されています。

これらのマイクロプラスチックの多くは、河川、土壌、海に流れ込み、数十年にわたって残り続け、水中生物に害を与え、最終的には食物連鎖に悪影響を及ぼし、水道水にも混入します。ナンキョクオキアミから、オーストラリアのイワシ、シチリアのニンジン、ドイツのビールに至るまで、あらゆるものの中にマイクロプラスチックの存在が確認されています。しかし、マイクロプラスチックが及ぼす私たちの健康への影響については、まだ十分に解明されていません。

今、これまでよりも頻繁に洗濯することは、パンデミック(世界的大流行)から身を守るための一つの方法であり、特定の職業にとっては非常に重要なことです。しかし、洗濯の回数を増やすことはより多くの洗剤を使い、多くのマイクロカプセルを放出するため、汚染を加速させ、問題はエスカレートするばかりです。

Despite COVID-19, the microcapsule market is expected to keep growing
新型コロナウイルス感染拡大がもたらしたインパクトに関わらず、マイクロカプセル市場は成長し続けると予想されている。 Image: Knowledge Sourcing Intelligence Analysis

この問題は、完全に見過ごされてきたわけではありません。プラスチック・スープ・ファンデーションなどの組織は、以前からマイクロカプセルのようなプラスチック原材料の使用に反対するロビー活動を行ってきました。私たちは今、地球を守るために世界中で行動を起こす必要があります。

もし、私たちがマイクロプラスチックを回収してリサイクルすることができず、各国政府がマイクロプラスチックの使用をまだ禁止していないのであれば、どうすればよいのでしょうか。

ケンブリッジ大学のスピンアウトであるXamplaでは、各ブランドや顧客がマイクロカプセルに求めるすべてのメリットを、プラスチック汚染を引き起こすことなく提供できるソリューションを開発しています。

Xamplaの科学研究は、自然界で最も素晴らしい素材を作り出す生き物の一つからインスピレーションを得てきました。ある生き物は、3億8千万年もの間、強靭で柔軟性のある物質を作り続けています。その生き物、蜘蛛は、アミノ酸の自己組織化能力を利用して、タンパク質を成分とした糸を作り出します。タンパク質とエネルギーだけを使って蜘蛛シルク(糸)を生成するのです。その糸は質量あたりで比較すると鉄よりも格段に強く、高性能な素材です。

私たちは、蜘蛛が糸を作るのと同様の効率的なプロセスで、無害な植物性タンパク質から、プラスチックのような素材を作り出す方法を発見しました。この素材は、エンドウ豆や大豆のような豆類に多く含まれるだけでなく、菜種やジャガイモにも含まれており、豊富に生産され再生可能です。これにより、石油化学製品よりもはるかに持続可能な原料となり、蜘蛛の糸にも勝る可能性を持ちます。

私たちが発見したものは、使い捨てプラスチックに代わる、大量生産可能な唯一の自然由来の素材ではありません。しかし、海藻や藻類のような多糖類ではなく、植物性タンパク質から作られたものとしては初めてです。強度や安定性を高めるために刺激の強い溶剤を加えるということをしないため、廃棄された時は自然に、完全に、素早く分解されます。そのため、排水溝に流しても全く問題ありません。

欧州化学物質庁(ECHA)は、意図的に添加されるマイクロプラスチックに関する制限を提案し、現在協議が進められています。EUでは、この制限に向けて、マイクロプラスチックの特定のカテゴリーを定めました。私たちは、影響を受ける産業に向けて対応策を提供し、ECHAによる制限が実施される10以内に最大10万トンのマイクロプラスチックを、新たな素材に置き換えることができると推測しています。

新型コロナウイルスの感染拡大は、ポスト石油の地球へ移行することを目指す企業や政府の計画に、否応なく影響を与えています。優先事項は短期的なものへと変化しましたが、変化を起こすためには当然多くの時間を要します。注目度の高い、目に見えるプラスチック汚染に依然として重点が置かれていますが、マイクロカプセルのような隠れたマイクロプラスチックに対するソリューションがあり、それは、複雑な構造変化や行動変化を伴うことなく、企業が今すぐにでも実行できる解決方法なのです。

Xamplaが開発した素材は、次世代のバイオベース素材を代表し、さらに、ポスト石油社会への移行を実現するための実践的でスケーラブルな道筋を示す、世界で数少ない素材の一つです。まさにこれが、「よりよい環境を取り戻す」ための現実的な解決策であり、また、短期的目標のプレッシャーにも関わらず長期的な目標を達成できる方法です。目に見えないものも含め、環境を汚染する使い捨てプラスチックをより安全な素材へ置き換えることは可能なのです。

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