アフターコロナの世界における、レジリエントで持続可能な都市のモビリティのため、継続されるべきトレンド
Image: REUTERS/Carlos Garcia Rawlins - RC2MZF9BMYYS
- 新型コロナウイルス感染拡大下で、「マルチモダリティ」はサービス提供者とユーザー双方に恩恵をもたらしましたが、復興に向かう中で引き続きコラボレーションが維持されることは期待できないかもしれません。
- 企業および市の代表者がモビリティプラットホーム「#WeAllMove」のもとに集まり、新型コロナウイルス感染拡大から世界が復興していく中でも継続されることが望ましいトレンドについて議論がもたれました。
新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウン措置への当初の対応は、モビリティスの分野で驚くべき進歩をもたらしました。ロックダウンにより、車の渋滞は減少し、徒歩と自転車での移動が奨励されるようになり、二酸化炭素排出量も最小限に抑えられました。そしてすぐに、政府、民間のモビリティサービス提供者、公共交通機関の間のユニークなパートナーシップが見られるようになりました。
多くの国で規制が緩和され、自家用車の使用が再開されつつある中、ここ数週間で見られた進歩が露と消えてしまう恐れがあります。先日、ワンダーモビリティ、シェアナウ、ボイスクーターズ、Kochen für Helden、オスロ市のステークホルダーたちが集まり、これらの課題と、新型コロナウイルス感染拡大による危機の間に起きたモビリティにおける前向きな変化を、どう活かしていくのか話し合われました。彼らは、ワンダーモビリティが世界経済フォーラムのCOVIDアクション・プラットホームとのパートナーシップのもと、マルチステークホルダーのコラボレーションを活用して4月に立ち上げたモビリティサービスのマッチメイキングプラットホームである「#WeAllMove」のもと、招集されました。
前向きな勢いを維持するには、適応していく意欲、さらなるコラボレーションへの熱意、そして、すべての関係者による計画的な取り組みが必要です。新型コロナウイルス感染拡大からの復興において、彼らが足掛かりとしたいと語ったモビリティの大きな成功を、本稿で紹介します。
「マルチモダリティ」を解き放つコラボレーション
持続可能なモビリティシステムを生み出す鍵は、自転車シェアリング、カーシェアリング、スクーターシェアリングなどの、幅広いモビリティオプションを活用することだ、とステークホルダーたちは話します。これらのモダリティを連携させるには、新たなコラボレーションや関係性の構築が必要です。
- 信頼関係を築くやり取り
民間モビリティ企業が、新しい需要に対応し、衛生的で安全なモビリティを提供するため、市や雇用者たちにその指針を求める動きが世界中で見られ始めました。このようなやり取りにより、新型コロナウイルス感染拡大の危機が収束した後も、長く都市に恩恵をもたらす信頼関係の基礎が構築されました。 - 通勤手段を変化させるコラボレーション
パンデミック(世界的大流行)の最中にあって、各企業は公共交通機関を補完する方法を提供し、マルチモダリティをさらに促進させました。エッセンシャルワーカーに原価で車両を貸し出し、稼働率が低い時間帯のバスサービスを代替し、公金の節約に貢献したのです。モイア、フリーナウ、リフト、ウーバーなどは、公共交通機関の負担を軽減するため、夜間サービスの提供を開始しました。ビア、ディディ、Zeeloなどは、公共団体や病院と連携し、最前線で働く労働者たちのニーズに合わせたサービスを提供しました。 - 移動手段の障壁を取り除く取り組み
さらに、新型コロナウイルスのパンデミック下おいて、企業と政府はさまざまな移動手段の間の障壁を取り除き、より安全な移動を支援するため、力を合わせてきました。オスロ市は、eスクーター事業者と協力して、短距離向けのより効率的なモビリティソリューションを提供するための規制に取り組み、カーシェアリング向けの大量の公共駐車場も確保しました。香港のMTRは、交通輸送サービスを補完するためマルチモーダル企業と提携、イギリスは、グリーンな代替手段への移行を多くの人に促すため、自転車および歩行者用インフラ開発に向けた20億ポンドのサポートパッケージへの投資を行い、全国各地でのeスクーターの試用も急ピッチで進めています。 - 街路の再考を促進した思考
ミラノ、パリ、ベルリン、ブダペストのポップアップ自動車レーンから、地元の自転車整備士との協力による、オスロ市全域での無料自転車修理ステーションの設置に至るまで、多岐にわたり創造的な解決策が生み出されたことより、徒歩、自転車およびマイクロモビリティは、人間中心の街路設計における現実的な交通手段となりました。各都市では、屋外での食事や歩道での飲食物の引き渡しを支援するため、歩道や路上駐車場の改装が行われました。 - ステークホルダーを結びつけるプラットホーム
救援活動のための取り組みは、企業に新しい方法での連携を促す効果ももたらしました。レストランが閉鎖を余儀なくされ、食材が無駄になり始めた時、料理界のイノベーター集団は「#WeAllMove」プラットホームを通じて、モビリティパートナーを探し、必要としている人に食料を贈る活動を始めました。
このような迅速な連携は、都市におけるモビリティの安全性と持続可能性を向上させ、ゼロエミッションの未来に必要とされるレベルの協力への道を切り開こうとしています。「私たち、モビリティプロバイダーは、すべての手段を連携させる必要があると心から信じています」と、シェアナウの最高事業開発責任者であり、「#WeAllMove」のパートナーの一人でもあるサイモン・ブローサムル氏は述べています。「モビリティプロバイダーは、市、政府、規制当局、そして、異なる全ての企業と連携して、これを実現し、人々が安全で持続可能な方法で都市やコミュニティを移動できる環境を構築しなければなりません」と、ブローサムル氏は続けます。
電動スクーター企業、ボイのコミュニケーション担当副社長である、クリスティーナ・ハンター・ニルソン氏は、業界におけるこのような関係が今後も強化されていくことを願っています。彼女は「私たちが考えたことがなかったような、あるいは、本来ならもっと時間を要したかもしれないパートナーシップが生まれました」 と述べ、「私たちは、新たに進展した前向きな習慣の多くを維持していきたいと思っています」とも付け加えました。
未来のニーズを満たす新しい方法
各地で新型コロナウイルス感染拡大による外出制限措置「ステイホーム」が緩和されつつある中、各都市で心配されているのは、持続可能性に向けた進展が帳消しになることです。例えば、オスロ市では活動が徐々に再開され、自動車の交通量が新型コロナウイルス感染拡大前のレベルに既に戻っていることが確認されています。これは、サイクリストと歩行者に優しい街を目指し、自転車とスクーターの利用を促進しながら、歩行者とサイクリストの交通事故死をゼロに削減したオスロのような都市では特に注目すべきことです。これまでの成果を失わないことを目指すオスロ市は、未来に向けたより野心的な目標を掲げています。「時計の針を戻さないようにするために、私たちは何をすべきなのでしょうか?」とニルソン氏は問いかけます。
新しく、そして変化していくニーズに対応するには、新しい視点を取り入れようとする意欲が必要です。オスロ市には、これまでさまざまなアプローチを活用した経験と、「子どもの視点から」モビリティを見て、街路が誰にとっても真に使いやすいものになっているかを検証した経験さえあるため、有利なスタートを切ることができるはずだと、オスロ市のマイクロモビリティマネジャーであるアンドリン・グラン氏は意気込みます。(このようなアプローチは、ノルウェーの首都では、学校付近の自動車通行禁止道路などの取り組みの発案のきっかけとなりました。)
「昨日の答えに頼るよりも、正しく問うことの方が重要です」
”新しい問いを投げかける意欲、そして、実証済みの解決策にとらわれない姿勢は、今後数か月にわたって欠かせないものとなるでしょう。「オスロは、これまで他の都市から多くのことを学び、模倣してきました」とグラン氏。「未来の課題に対処するためには、インスピレーションを得て、目標達成に向け、優れた解決策について学ぶことがこれまで以上に重要になっていくでしょう。未来に向けた計画立案には、昨日の答えに頼るよりも、正しく問うことの方が重要な時代に突入しているのです」。
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Ewan Thomson and Madeleine North
2024年10月10日