年次総会1日目ハイライト:トランプ大統領とグレタさんの演説、他4つのトピック
ダボスで楽観的観測を演説する、ドナルド・トランプ米大統領
スイス、アルプス地方が晴天に恵まれた21日。世界経済フォーラム2020年年次総会(通称:ダボス会議)の議論は、主に気候変動に集中しました。
1. 「悲観的な予言者を拒絶するべきだ」
年次総会での登壇は、2018年に次いで2回目となるドナルド・トランプ米大統領。政権の経済面での成果を列挙。楽観論を展開し、将来には希望が持てると力強く宣言しました。
「我々はテクノロジーを遠ざけるのではなく、これまでどおり受け入れていきます。自由に革新できれば、数百万から数億人が幸福で健康的な生活をより長く送ることができます。米国はこれまでの3年間、労働者を最優先し、成長を選択し、起業家が自由にその夢を叶えられるようにすることで、豊かな未来への道が始まることを全世界に示してきました」と大統領は語りました。
トランプ大統領の特別演説の動画はこちら。
2. 私たちの家は今も燃えている
気候変動という事実は議論の余地ありません。不断の追及を続ける10代の環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんは、世界の環境問題に対するアクションは不十分だ、と落胆を表明しました。
「みなさんは、『子どもは心配するな』、『大人にまかせろ。何とかする。失望させないと約束する。そう悲観的になるな』と言います。
そして、何もしない。沈黙する。沈黙よりもっと悪いのは空虚な言葉と約束で、十分に対応しているという印象を与えていることです」。
化石燃料に支えられた経済をすぐにも終わらせようと訴えた演説は、グレタさんにとどまりません。「気候変動による破滅を回避する」というセッションでは、「チャド共和国における先住民と先住民女性協会(Association for Indigenous Women and Peoples of Chad)」会長、ヒンドゥー・オウマロウ・イブラヒム氏が、チャドでは気候変動が原因ですでに人々が命を落としていると訴えました。
3. 資本主義は終わった。目標は長く幸せに生きること。
企業は社会のあらゆる関係者に責任を負う、という世界経済フォーラムの基本理念であるステークホルダー資本主義の未来に関わるセッションでは、財界のリーダーが新時代について主張しました。
セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ会長兼共同最高経営責任者は、「私たちがなじんできた資本主義は終わりました。株主のために利益を最大化することだけが大切という妄念こそが、気候変動による危機的状態を招いたのです」と語りました。
ジニ・ロメッティ国際ビジネス評議会、IBM会長兼社長、最高経営責任者は、強い社会を構築するためには、リスキリング(再訓練)が必要と主張しました。
4. 中国がグローバル社会の協調を主張
米中貿易戦争停戦中の両国。トランプ米大統領の前向きな言葉を受け、中国国務院副総理、韓正氏は、グローバルな連携の重要性を強調しました。
韓正副総理は、米中両国は包摂的で開かれた世界経済を共に構築することにより、難問や課題を解決し、経済グローバリゼーションへの道を今後も進んでいくべきだと述べました。同副総理は、「世界の潮流に反する一国主義や保護主義が行き着く先はどこにもありません。グローバルな成長や貿易の基盤を弱め、全員の利益が損なわれるだけです」と表明しました。
5. 難題解決策を幅広く検討する新プラットホームを公表
世界経済フォーラムは「アップリンク(UpLink)」を公表しました。来月から始動するアップリンクは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、起業家やさまざまなコミュニティ、その他関係者および個人など、幅広い参加を実現し、開発をめぐる世界最大の課題の解決に必要な知識やアイデア、行動を独発する、クラウド型デジタル・エンゲージメント・プラットホームです。
当フォーラムの創設者・会長であるクラウス・シュワブは、次のように説明しています。「イニシアティブは、専門に精通しているビジネスリーダーや政府からだけの構想であってはなりません。フォーラムは、世間一般の人々に関与しなければなりません。人々にはアイデアがあります。当フォーラムは人々に、そのアイデアを行動に移す手段を提供しなければなりません。」
インドネシアのバリ島でプラスチックごみをなくすため、レジ袋廃止に取り組むNGO「バイバイ・プラスチックバッグ」を創始したメラティ・ワイゼン氏は、「アップリンクは私たちのような若者にプラットホームを提供しており、それは、若者のアイデアが真剣に受け止められていることを確かにするためだ」と語りました。
6. 「他人が私をハッキングできる時代」
テクノロジーを凌駕するAIのような「激烈な競争」のセッションでは、歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏が、私たちは危険で不確実な未来に向かっていると警告しました。
「危険な未来とは、ある人が人々のデータを潤沢に集めると、人々がその人について知っている以上に、その人が人々のことに詳しくなるということです。現在は、企業や政府が数百万、数億人をハッキングできますが、これは私の病歴や個人的な弱みを知り得る時代に来ていることを意味するのでしょうか。私の身体、脳、生活をハッキングできるのです。私が自分自身を知っている以上に、ある人が私のことよく知っているという事態になり得るのです。」
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