世界経済フォーラム 広報統括(日本)栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org
2026年1月8日、スイス、ジュネーブ – 世界経済フォーラムの『グローバル・コオペレーション・バロメーター2026』によると、多国間主義は依然として強い逆風に見舞われているものの、グローバルな協力体制のレジリエンスが確認されました。一方、経済、安全保障、環境に関する重大な課題に対処するには、現在の協力水準では不十分です。より複雑で不確実な地政学的状況において、共通の利益を促進する協力の可能性を見出すためには、オープンかつ建設的な対話が重要な要素となります。
マッキンゼー・アンド・カンパニーの協力を得て開発された『グローバル・コオペレーション・バロメーター2026』は、41の指標を用いて現在のグローバルな協力体制の状況を測定。「貿易と資本」、「イノベーションとテクノロジー」、「気候変動と自然資本」、「ヘルスとウェルネス」、「平和と安全」の5つの柱に沿って、広義の協力の輪郭をより深く理解するためのツールをリーダーたちに提供します。
3年目となる2026年版の調査結果によると、近年の協力レベルは全体的にほぼ横ばいで推移しているものの、その構成には変化が見られることが明らかになりました。特に、多国間の枠組みを通じた協力が弱まる中、地域内および地域間での革新的かつ小規模な協力体制が新たに形成されつつあります。グローバルな優先課題における進展は、各国の国益と一致する場合に最大のモメンタムを示しており、気候と自然、イノベーションとテクノロジーに関する協力は比較的大きな増加が確認されています。ヘルスとウェルネス、貿易と資本などのその他の柱については、協力レベルに大きな変化は見られませんでした。平和と安全では、他の分野と比較して最も大幅な減少が観測されました。
世界経済フォーラム総裁・CEOのボルゲ・ブレンデは、次のように述べています。「ここ数十年で最も不安定かつ不確実な時期にもかかわらず、協力関係は一定のレジリエンスを示しています。今日の協力関係は昨日とは異なる形に見えるかもしれませんが、賢明な経済成長の促進、責任あるイノベーションの加速、そしてより不確実な時代の課題に備えるためには、協調的なアプローチが不可欠です。機敏かつ目的意識の高い柔軟なアプローチこそが、現在の不安定な状況を乗り切り、確かな成果をもたらす可能性が最も高いと言えるでしょう」。
マッキンゼー・アンド・カンパニーのグローバル・マネージング・パートナー、ボブ・スターンフェルス氏は、「リーダーたちは、国境を越えた協力関係を再構築しようとしています」と指摘します。「今日の協力関係は昨日とは異なる形を取り、異なるパートナーが関与するかもしれませんが、重要なことは、いくつかの重要な共通優先事項について、協力が引き続き成果を上げていることです。世界的な分断の中でも、協調的な進展は今後も継続するでしょう」。
協力のダイナミクスの変化は、バロメーターの5つの柱のそれぞれに現れています。
貿易と資本の協力は横ばいであり、2019年の水準を上回っているものの、その構成内容は変化しています。物品の取引量は増加しましたが、グローバル経済全体の成長ペースよりは緩やかであり、取引の流れはより連携の取れたパートナーへとシフト。サービス分野や特定の資本フローは、特に連携する経済圏間、国内の競争力強化に貢献できる分野であり、モメンタムを増しています。多国間貿易システムは障壁の高まりに直面している一方で、小規模な国家連合が「投資と貿易の未来(FIT)パートナーシップ」などのイニシアチブを通じて協力を進めています。
· イノベーションとテクノロジーにおける協力は、規制が強化されている中でも活発化し、新たな可能性を解き放っています。ITサービスと人材の流動化が進み、国際的なデータ通信の量は新型コロナウイルス流行前の4倍に増大しています。重要な資源、技術、知識の流れに対する規制は拡大しており、特に米国と中国の間で顕著ですが、これに限定されるものではありません。一方で、新たな協力形態も台頭。AIや5Gインフラをはじめとする最先端技術分野では、連携関係にある国々の間で協力事例が増えています。
· 気候変動と自然資本における協力は進展したものの、依然としてグローバル目標には届いていません。資金調達とグローバルサプライチェーンの拡大によりクリーン技術の導入が促進され、2025年半ばには過去最高水準に達しました。太陽光・風力発電システムと電気自動車の新規導入台数の3分の2を中国が占める一方、他の開発途上国も積極的な取り組みを見せました。多国間交渉が困難になる中、欧州連合(EU)や東南アジア諸国連合(ASEAN)などの国家グループが、脱炭素化とエネルギー安全保障の目標を統合した取り組みを進めています。
· ヘルスとウェルネスにおける協力は安定した水準を維持しており、現時点ではレジリエンスのある成果が得られていますが、支援体制は深刻な圧力にさらされています。この分野における主要な協力活動は減少しませんでした。その一因は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック終息後も保健分野の成果が継続的に改善していることです。ただし、レジリエンスのある成果が得られているとはいえ、その裏には、徐々に深刻化する脆弱性が潜んでいます。多国間組織に対する圧力の高まりにより、支援資金の流れと保健分野への開発援助が大幅に減少し、2025年にはさらに緊縮傾向が強まる見込みです。この影響は低中所得国で最も深刻です。
· 平和と安全における協力も引き続き減少傾向にあり、追跡対象となったすべての指標が新型コロナウイルス感染症流行前の水準を下回っています。紛争が激化し、軍事支出が増加する中、世界的な多国間の紛争解決メカニズムは危機の鎮静化に苦慮しています。2024年末時点で、強制的に避難を余儀なくされた人々の数は、世界全体で過去最高の 1 億 2,300 万人に達しました。一方、高まる圧力を背景に、地域的な平和維持メカニズムを含む新たな協力体制を構築する動きが活発化しています。
『グローバル・コオペレーション・バロメーター2026』は、各国が協力の在り方を再構築していることを示しています。新しい協力形態を構築するには、貿易協定から標準化連合に至るまで、新たな制度的枠組みと、それを効果的に管理するための官民連携や民間同士の新たなパートナーシップ形態が必要となります。同レポートは、共通の利益を見出し、それを推進するための基盤として、リーダーたちがパートナーとの効果的な対話の再構築に注力する必要があることを強調して締めくくられています。
2024年に初めて発表されたグローバル・コオペレーション・バロメーターは、相互に関連する5つの柱、すなわち「貿易と資本」、「イノベーションとテクノロジー」、「気候変動と自然資本」、「ヘルスとウェルネス」、「平和と安全」におけるグローバルな協力体制を評価します。41の指標に基づいて構築されており、協調行動指標(貿易量、資本フロー、知的財産の交換など、具体的な協力の証となるもの)と成果指標(温室効果ガス排出量の削減や平均余命の改善など、より広範な進捗状況の測定値)に分類。パンデミック時代の変化を反映するために2020年を基準年に設定しており、本レポートでは2012年から2024年までを分析対象としました。また、比較可能性を確保するためにデータを標準化(例えば、金融指標はグローバルGDPと、移民指標は人口レベルと比較)しています。また、本バロメーターが対象とする各分野において急速な変化が進んでいることを踏まえ、本年のレポートでは、2024年版の分析結果を補完。入手可能な場合には一部年度途中のデータや予測値を用い、より新たな2025年のデータを反映しています。加えて、約800名の経営幹部を対象とした調査と、世界経済フォーラムの「グローバル・フューチャー・カウンシルズ・ネットワーク」の現メンバーおよび元メンバー約170名を対象とした専門家調査の、2種類の調査を実施しています。
第56回世界経済フォーラム年次総会は、2026年1月19日から23日までスイスのダボス・クロスタースにて開催。「対話の力(A Spirit of Dialogue)」をテーマに、各国政府、企業、国際機関、市民社会、アカデミアのリーダーたちが一堂に会します。詳細はこちら。
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