2026年1月19日、スイス、ジュネーブ – 世界経済フォーラムは、すでに測定可能なパフォーマンス向上を実現しているAI導入事例と、先駆的組織が実験段階を超え大規模な影響創出へ移行する手法を明らかにする新たな報告書を発表しました。AIへの投資が加速し、期待が高まる中、同報告書の調査結果は、AIを大規模に展開する能力を構築した企業と、依然として効果的な導入に苦戦する企業との間の格差が拡大していることを浮き彫りにしています。また、実世界のユースケースから得られた教訓を通じ、この格差をどのように解消することができるかを示しています。
アクセンチュアの協力を得て作成された報告書『Proof over Promise:
Insights on Real-World AI Adoption from 2025 MINDS Organizations(約束よりも実績を:2025年MINDS組織から見る実社会におけるAI導入の知見)』は、影響力の高い実社会のAI応用事例をまとめたものです。これは、同フォーラムの「MINDS(Meaningful, Intelligent, Novel, Deployable Solutions:意味のある、インテリジェント、新規、展開可能なソリューション)」プログラムの第1期、第2期参加組織からの知見を基盤としています。30カ国以上、20以上の業界(医療、エネルギー、インフラを含む)における数百の事例を分析した結果、主要な経営幹部や専門家で構成される独立したインパクト評議会は、最も有望な事例に共通する明確なパターンが特定されました。これには、戦略的意思決定へのAIの組み込み、人間とAIの協働強化のための業務再設計、データ基盤の強化、技術プラットフォームの近代化、そしてこれらすべてを支える責任あるガバナンスが含まれます。
同フォーラム取締役兼CTOのステファン・マーゲンターラーは、次のように述べています。「AIは並外れた可能性を秘めていますが、多くの組織はその実現方法に確信を持つことができずにいます。取り上げたユースケースは、野心が業務変革へと転換された際に何が可能かを示しており、新たな報告書は、こうしたリーダーたちが切り開いた道をたどる組織のための実践的な指針を提供します」。
アクセンチュアのチーフ・ストラテジー・アンド・サービス・オフィサーであるマニッシュ・シャルマ氏は、次のように述べています。「信頼性の高い先進的なAIはビジネスを変革することができます。ただし、技術の真価を引き出すにはデータとプロセスの体系化が必要です。重要なのは、AI投資の収益を最大化するためには人間の創意工夫も不可欠だということです。組織がAIの導入と拡大を図る際には、明確な戦略を策定し、責任あるイノベーションに注力することを推奨します」。
同フォーラムはまた、第2期MINDSプログラム受賞組織を発表。疾病検出、エネルギー最適化、サプライチェーンのレジリエンス強化など、高い影響力を持つAIソリューションを推進する20の先駆的組織です。MINDSプログラム第1期および第2期の全参加組織リストは下記の通りです。MINDSプログラム第3期への応募はこちら。AIプロジェクトの影響力、新規性、コンプライアンスを明確に示す、官民両方の組織が応募可能です。選考は同フォーラムによる一次審査を経て、独立した評議会により最終決定されます。
情報テクノロジー
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)&シノプシス(米国):強化学習とエージェント型AIをチップ設計ワークフローに統合。設計者の生産性を倍増させ、サインオフ時間を大幅に短縮。EXLサービス(米国):AIエージェントによるレガシーからクラウドへのコード移行の最大80%を自動化し、プロジェクト期間を最大2年短縮、コストを20~40%削減。KPMG & SAP(オランダ、ドイツ):20万件のSAP文書で訓練したAIコパイロットを拡張し、設定を高速化、手戻りを半減、企業移行を18%加速。
エネルギー管理
ホライゾン・パワーとテラクオンタ(中国):エネルギー市場予測の効率を5万倍向上させる気象予測AIを構築し、変動性を低減、取引パフォーマンスを向上。シュナイダーエレクトリック(フランス):デバイス内AIによる部屋単位のエネルギー最適化を実現。快適性を維持すると同時に、2週間以内に5~15%の省エネルギーを達成。シーメンス(スイス):暖房・換気・空調(HVAC)運用に閉ループAI自律制御を導入。スケーラブルかつインフラに依存しないエンジンにより、快適性を25%向上させ、エネルギー使用量を6%以上削減。北京低炭素クリーンエネルギー研究所(中国):ドメイン特化型LLMと時系列予測を組み合わせ、エネルギー市場予測精度を向上させ、エネルギー使用量を95%削減。中国華能クリーンエネルギー研究所、華能吉林発電有限公司新エネルギー支社、中国華能集団有限公司江蘇支社(中国):再生可能エネルギーインフラ向けAI監視制御とロボット介入安全システムを導入し、欠陥検出精度を90%向上。中国国家電網公司(中国):大都市電力システム向けにリアルタイムAIオーケストレーションを拡張し、15,000以上のユーザーを対象に1分未満の制御を実現すると同時に、エネルギー耐障害性を強化。
バッテリー製造
CATL & AIMS(杭州拡張知能製造ソリューション)(中国):データ不足の産業環境向けに構築したハイブリッドAIシステムにより、品質変動を50%削減、作業者の負荷を半減、生産速度を向上。CATL(中国):物理学と機械学習を統合した自動電池セル設計により、最適設計を数分で生成。試作サイクルを約50%短縮。清華大学およびエレクトローダー(中国):物理学レベルのAIシミュレーションにより、電池セルの研究開発サイクルを数年単位から数週間へ短縮。廃棄物を40%削減し、コンセプトから試作までの期間を3.6倍加速。
グローバルヘルス&ヘルスケア
アントグループ(中国):全国規模のマルチモーダルAI医療プラットフォームを展開。5,000機関において90%以上の診断精度と80%高速な臨床研究を実現。ランディング・メッド(中国):中国省域の91%の遠隔地でAI細胞診スクリーニングを拡大。クラウドエッジ医療画像技術により1,300万件以上の早期がん検診を可能に。社会医療法人玄州会と富士通(日本):病院管理にAIエージェントを適用し、400時間以上の労働時間を削減、140万ドルの収益向上を実現。サウジアラビア保健省とアンプリファイ(サウジアラビア):糖尿病性足病変の早期発見に向け、AI熱画像診断のパイロット導入を実施。医師の診療時間を90%削減し、治療コストを最大80%削減。サノフィとOAO(フランス):AIファーストの企業モデルを構築し、1,300以上のユースケースを創出。開発サイクルを加速し、測定可能な商業的向上を実現。
ロボティクス
現代自動車とDEEPX(韓国):自律型ロボットに超高効率AIを導入し、GPUレベルの性能を240%向上させると同時に、消費電力は1/8に低減し、大規模な低コストかつリアルタイムのロボティクスを実現。
金融サービス
中国工商銀行(ICBC):40万人の従業員向けに1000億パラメータの金融モデルを導入し、5億人民元の利益増加を実現。さらに数百万件の日常的な意思決定を自動化。
小売、消費財、ライフスタイル
ペプシコ(米国):スマート工場運営向けにエッジマシンに3Dビジョンを導入し、廃棄物を0.15%削減、年間10万ドル以上のコスト削減を実現。ウーマートとディーモール(中国):小売業務をリアルタイムAIワークフローで統合し、店舗ネットワークにおける価格最適化、在庫減少、エネルギー使用量の削減を実現。
化学、科学ディスカバリー
ディープ・プリンシプル(中国):マルチエージェントAIを活用し、材料シミュレーションの半数以上を自動化。実験コスト削減と発見サイクルの加速を実現。ファゴス(フランス):AI設計によるファージ療法で95%の精度を達成。発見サイクルを10倍加速し、抗生物質に代わる拡張可能な選択肢を提供。UCSF神経変性疾患研究所とサンドボックスAQ(米国):物理学ネイティブAIと量子化学を活用し、パーキンソン病治療薬の創薬を36倍加速。初期スクリーニング段階でのヒット率を30倍向上。
エンジニアリング、建設、インフラ
日立レール(日本):AI分析プラットフォームによる鉄道運営の統合を実現。状態ベースの最適化により遅延削減、車両基地のエネルギー使用量削減、保守コスト削減を達成。富士通(日本):サプライチェーン全体にAIエージェントを展開し、リアルタイム自律予測により在庫コストを1,500万ドル削減、在庫を2,000万ドル削減、運用要員を半減。レノボ(中国):統合AIエージェントによるグローバルサプライチェーンの調整を実現し、物流精度を30%向上させると同時に、障害発生を最大2週間前に検知可能化。ケンブリッジ・インダストリーズ(米国):エッジ管理型LLMによるAI駆動の道路・建設現場安全を実現。緊急修理コストを約50%削減すると同時に、地域社会への雇用創出にも貢献。
アドバンスド・マニュファクチャリング(先進製造業)
フォックスコンとボストンコンサルティンググループ(BCG)(台湾・中国、米国):グローバル事業における意思決定ワークフローの80%を自動化するAIエージェントエコシステムを拡大し、推定8億ドルの価値創出を実現。シーメンス&イーソンAI(ドイツ、スイス):工場におけるAI対応視覚検査を標準化し、ステーションあたり3万~10万ユーロのコスト削減を達成。明確なROIを伴う自律型品質管理を拡大。ブラックレイク・テクノロジーズ(中国):AIが調整する製造マーケットプレイスを拡大し、工場稼働率を83%に高め、単位当たりのエネルギー消費量を18%削減。製品サイクルを最大1年から最短1カ月に短縮。
テック・マヒンドラ(インド):月間380万件の問い合わせに対応する多言語LLMを精度92%で拡大し、グローバル・サウス全域で包摂的なデジタルサービスを実現。
第56回世界経済フォーラム年次総会は、2026年1月19日から23日までスイスのダボス・クロスタースにて開催。「対話の力(A Spirit of Dialogue)」をテーマに、各国政府、企業、国際機関、市民社会、アカデミアのリーダーたちが一堂に会します。詳細はこちら。
<ご参考>
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