世界経済フォーラム 広報統括(日本)栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org
2026年1月12日、スイス、ジュネーブ – 世界経済フォーラムの『グローバル・サイバーセキュリティ・アウトルック2026』によると、AI、地政学的な分断、サイバーを悪用した詐欺の急増が、前例のない速度でグローバルなサイバーリスク環境を再定義しています。
アクセンチュアの協力を得て作成された同報告書は、サイバーを利用した詐欺が広範な脅威となっていることを強調しています。この変化は、地域やセクターを越えて広がる詐欺の社会的、経済的影響の増大を浮き彫りにしています。また、同報告書は、AIが攻撃能力と防御能力の両方を強化している実態も明らかにしています。地政学的な分断はこうしたリスクをさらに増幅させ、サイバーセキュリティ戦略の根本的見直しを促すと同時に、地域間の準備態勢の格差を拡大させています。
同報告書は「グローバル・サイバーセキュリティ・アウトルック」シリーズの5つ目に当たります。同シリーズは、パンデミックを契機に進展したデジタル化から今日の複雑化するサイバーセキュリティ環境まで、着実な進化の軌跡を辿ってきました。新たな調査結果は、構造的変革を遂げつつあるサイバー環境について、サイバーレジリエンスをもはや技術的機能としてのみ捉えるのではなく、経済的安定性、国家のレジリエンス、公共の信頼を支える戦略的要件として位置付けるべきだと指摘しています。
世界経済フォーラム取締役のジェレミー・ジュルゲンズは、次のように述べています。「サイバーリスクが相互に密接に関連し、重大な影響を及ぼすようになる中、サイバーを悪用した詐欺はデジタル経済において最も破壊的な力の一つとして台頭し、信頼を損ない、市場を歪め、人々の生活に直接的な影響を与えています。リーダーたちの課題は、もはや脅威を理解することだけではなく、その脅威に先んじるために行動を共同で起こすことです。意義あるサイバーレジリエンスを構築するには、各国政府、企業、技術プロバイダーが連携し、AI主導の世界において信頼と安定性を守るための協調行動を取ることが必要です」。
高いレジリエンスを有する組織と後れを取る組織との格差は依然として顕著であり、スキル不足やリソース制約が構造的なリスクを増幅させています。一方、グローバルサプライチェーンは相互依存性を増し、不透明化が進み、サードパーティーへの依存がシステムの脆弱性へと転化しています。こうした動向は、サイバー能力における格差が拡大する時期に重なり、規模の小さい組織や新興経済国が特に脆弱な状態に晒されています。
「AIの兵器化、継続する地政学的緊張、そして構造的なサプライチェーンリスクが、従来のサイバー防御の在り方を根底から揺るがしています。C-suiteのリーダーにとって、その要請は明確です。AI主導の脅威アクターに対抗するため、従来型のサイバー保護から、先進的かつエージェント型AIを活用したサイバー防衛へと転換し、レジリエンスを高めなければなりません」と、アクセンチュアのサイバーセキュリティ・グローバルリードであるパオロ・ダル・チンは述べています。「真のビジネス・レジリエンスは、サイバー戦略、オペレーショナル・コンティニュイティ、そして基盤となる信頼を融合させることで築かれます。それにより、組織は急速に変化する脅威環境に機動的に適応することが可能となるのです。」
本報告書は、2026年に向けて変化するサイバー環境を形作る主要因を特定。これには以下が含まれます。
「AIの進歩は、ビジネスの運営方法や人々の生活と働き方を変革しています。責任を持って導入されれば、これらの技術が迅速な検知と対応を支援し、サイバー防御を強化することができるでしょう。ただし、技術の誤用や不適切な管理は、データ漏洩からサイバー攻撃に至る深刻なリスクをもたらす可能性もあります」と、シンガポールのデジタル開発・情報大臣兼サイバーセキュリティ・スマートネーション担当大臣、ジョセフィン・テオ氏は述べています。「そのため各国政府は、AIがサイバーレジリエンスを強化すると同時に、国境を越えてサイバー犯罪が拡大するリスクを最小限に抑えるため、先見性のある協調的アプローチを必要としています」。
同報告書は、各セクターのリーダーたちに対し、孤立した取り組みを超え、情報共有、基準の統一、必要な能力への投資を通じて集合的な基盤を高めることに取り組むよう求めています。これにより、あらゆる組織がより安全で強靭なデジタル環境の恩恵を受けられるようになるでしょう。
調査結果は、92カ国804名のグローバル・ビジネスリーダーたち(最高経営責任者(CEO)105名、最高情報セキュリティ責任者(CISO)316名、最高技術責任者(CTO)および最高リスク責任者(CRO)など経営幹部123名を含む)より得られた知見に基づいています。
第56回世界経済フォーラム年次総会は、2026年1月19日から23日までスイスのダボス・クロスタースにて開催。「対話の力(A Spirit of Dialogue)」をテーマに、各国政府、企業、国際機関、市民社会、アカデミアのリーダーたちが一堂に会します。詳細はこちら。
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