<報告書発表> チーフエコノミストはグローバル経済が比較的堅調と認めるも、 資産価格、債務、地経学的緊張への懸念は継続

発行済み
2026年01月16日
2026
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世界経済フォーラム 広報統括(日本)栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org

  • 混乱の中でもグローバル経済が比較的堅調さを維持していることを踏まえ、調査対象のチーフエコノミストの53%が、今後1年間でグローバル経済の情勢は弱まると予想。この数字は、2025年9月の72%から減少しています。
  • テクノロジーに関する不確実性は依然高く、52%がAI関連株の下落を予想する一方、40%は上昇を見込んでいます。成長見通しは地域によって分かれ、南アジアと東アジアでは強いモメンタムが、欧州では弱~中程度の成長が予想されています。
  • マクロ経済に関しては、回答者の約3分の1が先進国におけるソブリン債務危機を懸念するのに対し、新興国では約半数です。また、60%以上が、政府が高インフレと税収増に依存し、債務水準の高止まりを予想しています。
  • 『チーフエコノミスト・アウトルック』の全文はこちら。また、年次総会の詳細はこちら。ソーシャルメディア上のハッシュタグは、 #WEF26 。

2026116日スイス、ジュネーブ - 世界経済フォーラムの発表した最新の『チーフエコノミスト・アウトルック』によると、世界経済の見通しは小幅に改善。ただし、不透明感は継続し、資産評価、債務の累積、地経学的な再編、急速なAIの導入が機会とリスクの両方をもたらしています。チーフエコノミストの53%が今後1年間でグローバル経済は減速すると予測していますが、この見方は2025年9月の72%から大幅に改善しています。

世界経済フォーラムのサーディア・ザヒディ常務取締役は次のように述べています。「本調査では、2026年の経済動向を特徴付ける三つの主要なトレンドが明らかになりました。第一に、AI関連投資の急増とそれがグローバル経済に及ぼす影響、第二に、財政・金融政策において前例のない転換が見られる中で債務が臨界点に近付きつつある状況、第三に、貿易構造の再編成です。各国政府と企業は、不確実な短期環境を機敏に切り抜けると同時に、レジリエンスの構築と成長の長期的な基盤への投資を継続しなければなりません」。

AIおよびその他の資産評価は精査へ

AI関連株の集中的な上昇は、チーフエコノミストたちの見解を二分しています。僅差ながら過半数(52%)が今後1年間で米国AI関連株の下落を予想する一方、40%はさらなる上昇を見込んでいます。仮に株価が急落した場合、74%が世界経済全体に波及すると考えています。仮想通貨の見通しはより厳しい状況にあり、市場の混乱を受けて62%がさらなる下落を予想。一方、54%は最近の急騰後、金価格がピークに達したと見ています。

AIの潜在的な期待リターンについては、地域やセクターによって大きな差異が見られます。米国と中国では、約8割のチーフエコノミストが、2年以内に生産性向上が実現すると予測。また、IT業界がAIを最も速やかに導入すると見ており、チーフエコノミストの約4分の3が近い将来における生産性向上を見込んでいます。その他の先行導入セクターには金融サービス、サプライチェーン、医療、エンジニアリング、小売業が続き、1~2年以内に導入が進むと見込まれています。企業規模別では、従業員1,000名以上の企業が他より早期に効果を享受するでしょう。この規模の企業について、チーフエコノミストの77%が、2年以内に顕著な生産性向上を期待しています。

AIに関連する雇用情勢は、経時的に変化すると見込まれます。チーフエコノミストの3分の2が今後2年間で小幅な雇用減少を予測する一方、長期的見通しでは意見が大きく分かれており、57%が10年間で純減を、32%は新たな職業が出現することによる雇用増加を予測しています。

債務が困難な選択を迫る可能性

債務水準の上昇管理は、政策立案者にとって最重要課題の一つです。特に、支出圧力が高まる中、この課題への対応が急務となっています。また、防衛支出に関してはほぼ全員一致で増加を予想。先進国ではチーフエコノミストの97%、新興市場では74%が増加を見込んでいます。デジタル・インフラとエネルギー支出も増加が見込まれます。他の分野のほとんどでは支出水準が安定すると予想される一方、調査対象エコノミストの大半は、環境保護支出が先進国(59%)と新興国(61%)の両方で減少すると予測しています。

先進国におけるソブリン債務危機の可能性については意見が二分される一方、新興国では今後1年間に発生する可能性が高いと見るエコノミストがほぼ半数(47%)に達しました。各国政府が財政負担軽減のためにインフレ率上昇に依存するとの見方は、チーフエコノミストの大多数(先進国67%、新興国61%)で共有されています。増税の可能性についても、先進国では62%、新興市場では53%が「あり得る」と回答。新興国で今後5年間に債務再編または債務不履行が債務管理戦略として採用されると見込むチーフエコノミストは53%、先進国ではわずか6%です。

貿易フローと地域別成長見通しの再調整

グローバルな貿易と投資は新たな競争環境に適応しつつあります。チーフエコノミストは米中間の輸入関税がおおむね安定すると予測する一方、他の分野では競争が激化する可能性があると指摘。約91%が米国の対中ハイテク輸出規制は維持または強化されると見込んでおり、84%が中国の重要鉱物輸出規制についても同様の見通しを示しています。

こうした新たな状況下で、チーフエコノミストの94%が二国間貿易協定の増加を、69%が地域貿易協定の拡大を予想しています。約89%が中国の非米国市場向け輸出がさらに増加すると予測する一方、世界貿易量の将来については意見が分かれています。他方で、回答者のほぼ半数が国際投資フローの継続的な増加を予測。57%が米国への直接投資(FDI)増加を見込む一方、中国への流入増加を予測するエコノミストは9%にとどまります。

調査対象のチーフエコノミストによる成長予測では、66%が「強い」または「非常に強い」パフォーマンスを予測した南アジアが首位。インドの堅調な成長が牽引役です。東アジア・太平洋地域では45%が「強い成長」、55%が「中程度の成長」を予測。中東・北アフリカ(MENA)地域では36%が「強い成長」、64%が「中程度の成長」を見込んでいます。米国経済の見通しは著しく改善し、69%が中程度の成長を予想(2025年9月時点では49%)していますが、堅調な成長を見込むエコノミストはわずか11%でした。中国の見通しは複雑であり、47%が中程度の成長、24%が堅調な成長を予想する一方、ほぼ同数の29%が弱い成長を予想しています。欧州は最も厳しい見通しに直面しており、53%が弱い成長、44%が中程度の成長を予想。強い成長を予想する回答者はわずか3%です。

『チーフエコノミスト・アウトルック』について

本報告書は、世界経済フォーラムのニューエコノミー、ソサエティ部門による官民のチーフエコノミストを対象とした広範な協議および調査を基に作成されています。本報告書は、同フォーラムの「成長の未来イニシアチブ」を支援するものであり、持続可能で包摂的な経済成長に向けた対話と具体的な行動への道筋を促すことを目的としています。

経済予測に関する最近の他の公開資料が、同レポートを補完します。『Four Futures for the New Economy (ニューエコノミーの4つの未来)』と『Four Futures for Jobs in the New Economy (ニューエコノミーにおける働き方の4つの未来)』では、2030年までの地政学的変化、技術革新、労働市場の変容といった環境変化に対応する企業の戦略的意味合いについて考察。複数のシナリオを追跡するための指標と、各シナリオに備えるための戦略を提示しています。

世界経済フォーラム年次総会2026について

第56回世界経済フォーラム年次総会は、2026年1月19日から23日までスイスのダボス・クロスタースにて開催。「対話の力(A Spirit of Dialogue)」をテーマに、各国政府、企業、国際機関、市民社会、アカデミアのリーダーたちが一堂に会します。詳細はこちら

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