世界経済フォーラム 広報統括(日本)栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org
2025年12月2日、スイス、ジュネーブ – あらゆる産業の企業が、過去10年間で2番目に高い成長率を示すグリーン経済の力強い成長からすでに恩恵を受けています。新たな報告書『Already a Multi-Trillion-Dollar Market: A CEO Guide to Growth in the Green Economy(市場規模はすでに数兆ドル:グリーン経済成長のためのCEOガイド)』によると、グリーン経済は年間5兆ドル規模に達しており、10年以内に7兆ドルを超える見込みです。
調査は、ボストン コンサルティング グループの協力を得て実施。これにより明らかになった点は、経済の不確実性や環境の多様化にもかかわらず、グリーンテクノロジーへの投資が過去最高を更新し続けていることです。同報告書は、グリーン経済をテクノロジー分野に次いで世界で最も急速に成長する分野と位置付け、グリーンソリューションを採用する多くの企業にもたらされる優位性を強調しています。
「2年前、世界経済フォーラムの報告書『Winning in Green Markets: Scaling Products for a Net Zero World(グリーン市場で勝つ:ネットゼロ世界に向けた製品の拡大)』において、我々はグリーン市場での先駆的取り組みは報われる賭けであり、大規模なグリーン市場が現実となり、ビジネスケースを証明するだろうと述べました。グローバルな気候変動対策には逆風があるものの、本報告書はグリーン経済が遠い将来の機会ではなく、すでにこの10年の主要な成長エンジンであることを示しています」と、世界経済フォーラムの気候、自然経済部門長のピム・ヴァルドレは述べています。
調査によると、グリーン収益を有する企業は、複数の財務指標において高いパフォーマンスを示す傾向があります。市場全体では、グリーン収益は従来の事業分野に比べて平均で2倍の速さで成長しており、グリーン収益を有する企業の資本コストは一般的に低くなっています。また、収益の50%以上をグリーン市場で生み出す企業は、資本市場において12~15%の評価プレミアムを享受する傾向があり、これは投資家がそれらの企業の長期的な回復力と収益性を信頼していることを反映しています。
技術コストの低下はこの傾向を加速させていますが、市場によって解決策の進展速度は異なります。2010年以降、太陽光発電とリチウム電池のコストは約90%、洋上風力は50%低下。これにより、低炭素ソリューションのコスト競争力は着実に高まっています。同報告書では、脱炭素化に必要な世界全体の排出削減量の55%はコスト競争力のあるソリューションの採用によりすでに達成可能であり、さらに20%はわずかなコスト増で対応可能、5%は行動変容が必要と推計しています。ただし、残る20%の重要な深層脱炭素化技術は現在、大きなコスト面での不利に直面しており、コスト競争力を達成するにはそれに向けた政策と産業支援が必要となるでしょう。
こうしたコスト低下は、中国が主導するクリーンエネルギーへの大規模な投資に続くものです。同報告書によると、2024年に中国はクリーンエネルギーに6,590億ドルを投資し、2030年までに世界の再生可能エネルギー新規導入容量の60%以上を担う見込みです。中国は太陽光、電気自動車、バッテリー技術の特許で世界をリードし、グローバルサプライチェーンを再構築するとともに、グリーンイノベーションの中心を東へ移行させています。
リーダーたちから学ぶ教訓
同報告書では、同フォーラムの「アライアンス・オブ・CEOクライメート・リーダーズ」メンバーによる14のケーススタディを取り上げ、先駆的な企業がグリーン市場への参画を競争優位性へと転換した手法を示しています。また、技術のコスト成熟化、規制環境の形成、多様な資金調達の実現といった成長加速要因を活用し、グリーン経済で優位に立つ先進企業から得られる教訓を、CEO向け実践ガイドとしてまとめました。
ボストン コンサルティング グループのマネージングディレクター兼シニアパートナー、パトリック・ハーホールド氏は、次のように述べています。「次の三点が顕著です。一つは、公共の注目や世論の変化にもかかわらず、グリーン技術への投資が記録を更新し続けるグリーン経済のレジリエンス。二つ目は、中国がグリーンテクノロジーの製造、革新、導入において主導的役割を果たしていること。そして三つ目は、グリーン市場で事業を展開する企業が資本市場で優れた業績を上げ、プレミアムを獲得できる機会があることです。グリーン経済が7兆ドル規模の市場に成長すると見込まれる中、今日大胆に行動する企業にはさらに多くの機会が訪れるでしょう」。
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