<報告書発表> ジェンダー・ギャップはパンデミック以来最速のペースで縮小も、 完全な平等は依然として1世紀以上先

発行済み
2025年06月11日
2025
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世界経済フォーラム コミュニケーションズ・リード 栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org

  • グローバルなジェンダー・ギャップは、経済的・政治的な進展を背景に68.8%まで縮小した一方、進捗はパンデミック前のペースを下回っており、完全な平等は推定で123年先と見込まれています。
  • 女性は高等教育では男性を上回っていますが、上級管理職に就く女性は28.8%に留まり、グローバルな不確実性の中での経済的レジリエンスと成長に向けた機会を逃しています。
  • 「政治参加」は最も大きな進展を遂げている一方で、これまでに解消された格差はわずか22.9%。グローバルな平等実現の最大の障害となっています。 報告書全文はこちら。ソーシャルメディア上のハッシュタグは、#gendergap25。

2025612日、スイス、ジュネーブ – 世界経済フォーラムが発表した『グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2025』によると、グローバルなジェンダー・ギャップは68.8%まで縮小し、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降で最も強い年間進捗を記録しました。一方、完全なジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)は現在のペースでは達成が123年後になる見込みです。ジェンダー・ギャップ指数はアイスランドが16年連続で1位、フィンランド、ノルウェー、英国、ニュージーランドがそれに続きます。

148カ国を対象にした第19回の本レポートは、世界中の女性たちが直面している希望の兆しと克服すべき構造的課題の両方を明らかにしています。今回の進歩は、主に「政治参加」と「経済参加」における大幅な向上によるものです。また、「教育」、「医療へのアクセス」は95%以上と、ほぼ平等な水準を維持。一方で、世界の労働力人口の41.2%を女性が占めているにもかかわらず、トップのリーダー職に占める女性の割合は28.8%と、依然として大きな格差が存在しています。

世界経済フォーラムの常務取締役、サーディア・ザヒディは、次のように述べています。「グローバル経済の不確実性が高まり、低成長が見込まれる中、テクノロジーや人口動態の変化も相まって、ジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)の推進は経済再生の重要な原動力となっています。その証拠は明らかです。ジェンダー・パリティに向けて決定的な進展を遂げた国は、より強靭かつ革新的な経済成長を遂げるための基盤を築いているのです」。

トップ10ランキング

アイスランドは、ジェンダー・ギャップの92.6%を解消し、16年連続で世界一のジェンダー平等経済国としての地位を維持しました。同国は、90%以上の数値を達成した唯一の国です。続いてフィンランド(87.9%)、ノルウェー(86.3%)、英国(83.8%)、ニュージーランド(82.7%)が上位5つを占めています。また、上位10カ国はすべて、ジェンダー・ギャップを80%以上解消しており、この数値を達成しているのは上位10カ国のみです。その大勢を占める8カ国が欧州諸国であり、中でもアイスランド、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンは2006年からトップ10を維持しています。

ジェンダー・パリティと経済的進展

ジェンダー・ギャップ指数は、国の資源や機会の全体的な水準ではなく、結果におけるジェンダー・ギャップのみを分析しています。対象国の現在の所得水準とジェンダー・ギャップの間にはわずかな相関関係が認められ、より豊かな国ほどジェンダー平等が進んでいる傾向があります。全体として、高所得国グループはジェンダー・ギャップの74.3%を是正しており、これは低所得国グループ(上位中所得国69.6%、下位中所得国66.0%、低所得国66.4%)の平均よりもやや高い水準です。

しかし、この相関は低く、因果関係を示すものではありません。3つの低所得グループの上位国は、高所得グループの過半数の経済圏よりも大きな割合でジェンダー・ギャップを縮小しています。資源は重要ですが、ジェンダー・パリティに向けた投資を負担することができるのは富裕国だけではありません。各国は、開発のあらゆる段階において平等を成長戦略に組み込むことができます。歴史的に、ヒューマンキャピタル(人的資本)の育成と統合に成功した国々は、その結果として持続可能かつ繁栄した経済を築いてきました。経済における人材と多様なアイデアの基盤を最大限に活用することが、創造性を解放し、イノベーション、成長、生産性を促進します。

地域のリーダー

北米はジェンダー・パリティ・スコア75.8%で世界トップを走り、「経済」(76.1%)で地域トップの成果を上げています。この地域は2006年以降、「政治参加」において著しい進展を遂げ、政治的平等格差を19.3ポイント縮小しました。

欧州は75.1%のジェンダー・パリティ・スコアを記録して2位につけており、2006年以降、全体的な格差を6.3ポイント縮小しました。この地域は「政治参加」(35.4%)において特に高い成果を上げ、世界最高位となりました。欧州は総合ランキングで引き続きリードし、上位10カ国中8カ国を占めています。

ラテンアメリカとカリブ海地域は、最も急速な進歩を遂げた地域です。74.5%のスコアで3位にランクインし、2006年以降8.6ポイントと、すべての地域で最も大きな総合的進歩を達成。この地域全体での成功は、集中的な政策介入により急速な進展が実現可能であることを示しており、ジェンダー・パリティを通じた経済成長のモデルとなるでしょう。

中央アジアは69.8%で4位。アルメニア(73.1%)とジョージア(72.9%)が地域で最も優れた成果を収め、それぞれジェンダー・ギャップの70%以上を解消。「経済参加」と「教育」における地域的な進展をリードしています。

東アジア・太平洋地域は69.4%で5位。「経済」において地域全体で2位のスコア(71.6%)を達成しています。ニュージーランド(82.7%)、オーストラリア(79.2%)、フィリピン(78.1%)が地域内トップの成果を収め、ニュージーランドは地域から唯一のトップ10入りを果たしています。

サハラ以南のアフリカ諸国は68.0%で6位。地域内では国によって大きなばらつきが見られますが、成功事例はあらゆる経済状況下で進展が可能であることを示しています。「政治参加」の分野では、女性が大臣職の40.2%、議会議席の37.7%を占めるなど、著しい進展を遂げています。

南アジアのスコアは64.6%で7位。バングラデシュ(77.5%)は地域で最も高いスコアを記録し、南アジアで唯一世界トップ50にランクインしています。2006年以降、「教育」分野の著しい向上が、今後の経済成長の基盤を築いています。

中東・北アフリカは61.7%で8位。ただし、2006年以降、「政治参加」において著しい改善が見られ、地域平均は3倍以上に増加。指標では8.3ポイント上昇しています。

新たなリスクの中にある、加速に向けた経済的課題

2006年から継続的に追跡調査された100カ国の進歩の総合的な速度に基づき、世界全体で完全なジェンダー・パリティを達成するには123年かかる見込みです。これは前回の推計から11年短縮されましたが、持続可能な開発目標(SDGs)の目標達成までは、まだ1世紀以上を要する状況です。

一方、最も急速に発展する国々が、ジェンダー・パリティを国家の優先課題とすることで急速な加速が可能であることを示しています。各所得層におけるジェンダー・ギャップの縮小で最も成功した国は、サウジアラビア、メキシコ、エクアドル、バングラデシュ、エチオピアです。

「政治参加」は全体として最も改善が進み、2006年以降9.0ポイントの格差が縮小しましたが、現在のペースでは完全な格差是正に162年かかります。「経済」は5.6ポイント改善しましたが、経済的平等を達成するには、現在のペースでは135年かかります。

さらに、テクノロジーの変革と地経学的分断の両方が、女性たちが過去数十年で達成した経済的成果を逆転させる新たなリスクを生み出しています。

近年、特に中・低所得国において、女性が輸出産業における高報酬な正式雇用に就く傾向にありますが、こうした職種は貿易の縮小が懸念される中で、リスクにさらされる可能性があります。新型コロナウイルス感染症による緊急事態が示したように、貿易ショックの影響は男女ともに及びますが、女性への影響はより長く続き、逆転が困難であることから、所得、資産、富における既存の格差を悪化させます。したがって、2025年に貿易政策が変化する中で、貿易の分断が性別による雇用と賃金に与える影響、および成長と繁栄への影響を最優先課題として位置付けることが重要です。

労働力変革が巨大な未活用の可能性を浮き彫りに

「女性のリーダーシップにおける進展は引き続き鈍化しています。グローバル経済が変革を遂げ、AIが加速し、各国が成長停滞に対抗する中、このリーダーシップのギャップに警鐘を鳴らすべきです」と、リンクトインのグローバル公共政策担当、スー・デューク氏は述べました。「女性がリーダーシップの場に持ち込む多様な経験とヒューマン・スキルは、AI活用型経済の真のポテンシャルを解き放つために不可欠ですが、最も必要とされているまさにそのタイミングで見過ごされているのです」。

リーダー職へのキャリアパスは、これまでのように一直線ではなくなってきており、特に女性にとってその傾向は顕著です。同社のデータによると、リーダーたちの過半数が少なくとも2つの異なる業界、部門、または企業で働いた経験があることが明らかです。これは、適応力の向上と、単一セクター内での段階的な昇進に潜在的な障壁があることの両方を示しています。

この動向の核心にあるものはキャリアの中断であり、女性は男性よりも55.2%高い確率でキャリアの中断を経験しています。また、女性は男性よりも平均で半年長く職場を離れる傾向があり、その大半は育児や介護によるものです。こうした現代の働き方の実情を反映し、硬直したキャリア設計からの移行が進んでいます。現在では、昇進ではない横方向の異動や業界転換、キャリア中断後の再就職が例外ではなく、むしろ一般的になりつつあるのです。

「グローバル・ジェンダーギャップ・レポート」について

「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート」は、「経済」、「教育」、「医療へのアクセス」、「政治参加」におけるジェンダーに基づく格差を評価するもので、今回で19年目を迎えます。2006年から進捗状況を追跡する最も長い歴史を持つ指標として、世界人口の2/3以上を占める148カ国の動向を包括的に分析しています。

本レポートは、国際労働機関(ILO)、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)、国連女性機関(UN Women)、世界銀行、世界保健機関(WHO)などの国際機関から提供された国際比較可能な最新の統計データに加え、世界銀行の「女性・ビジネス・法律」データセットやリンクトインの「エコノミックグラフ」のデータも統合。2025年版は主に2024年に収集されたデータを分析すると同時に、2006年以降のすべての版で含まれる100カ国の固定サンプルを用いて、時間経過に伴う傾向を追跡し、堅固な長期比較を可能にしています。

本レポートは、世界経済フォーラムのプラットフォームである2030年までの「グローバル・パリティ・スプリント」を支援しています。同プラットフォームは、各国政府、企業、国際機関が一丸となり、経済におけるジェンダー・パリティの進展を加速することを目的としています。

すべての意見は、著者によるものです。世界経済フォーラムは、独立かつ中立なプラットホームとして、​グローバル、地域、産業のアジェンダを形成する話題に関わる議論の場を提供しています。

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