アートとカルチャー

アートとカルチャー

アートは、地球規模課題の解決において重要な役割を果たしています。このため、人々がコミュニティ、他の地域の人々、および過去・現在・未来とつながり合う方法を考える際にはアートを中心に据えるべきです。アートは、現代社会の課題を理解し、乗り越えていく上で不可欠であり、人々の間にある分断を探る中で、理解や協力を促す役割を果たします。

人生は常に進化し続けるプロセスであり、その中でアートは空間と時間を通じて体験を翻訳し、視覚と聴覚を通じて人々の意見に影響を与えることで、社会を刺激する重要な役割を担っています。人々に何をすべきかを示すのではなく、代替案を提案するのです。アートは、想像力と現実が融合した形で表され、人々の考え方や生き方に影響を与えながら、変革をもたらします。アートが生み出す感覚や感情が思考を促し、人々を引き込み、時には行動を引き起こしまます。

ジョセフ・ファウラー、アートとカルチャー部門長

私たちは、アートとカルチャーが包摂的かつ持続可能な文化の変革を促進できると信じており、次のような取り組みを行っています。

・多様なアーティストとカルチャーのリーダーたちに対し、世界経済フォーラムの集結力、認知向上の機会、そしてリソースを提供し、勇気と革新性、ナラティブを形作る能力を支援します。

・主要な対話やフォーラムの活動にカルチャーを統合して、課題の真の複雑さを反映させ、アートによる変革を進歩のためのあらゆる取り組みに組み込みます。

世界経済フォーラムは、アーティスト、カルチャーのリーダーたち、および文化機関に対して、展示、パフォーマンス、体験、パネルなどの共同開発の機会を提供することで、アートによる包摂的かつ持続可能な変革を進める力を強化します。また、新しい作品の委託と制作も行っています。

オープニングコンサート

会合に先立ち『I Sea You』というタイトルのオープニングコンサートを行いました。これは、団結と協力を表す大胆かつ力強い文化的メッセージであり、世界のリーダーたちや政策決定者に対して、紅海北部のサンゴ礁を保護・保存するために必要な協定を実施するよう呼びかけるものです。

イメージ: World Economic Forum/Manuel Lopez

急速な海洋の温暖化がサンゴ礁の生育にリスクをもたらしています。最近の研究によれば、世界で最も長く生きるサンゴ礁の一つである紅海北部のサンゴは、上昇する水温に非常に耐性があることもわかってきています。この発見は、この大きなサンゴ礁の生態系が今世紀末まで、そしてそれ以降も生存する最良の機会を持つことを意味します。これを実現させるためには、地域の国々が協力し、善意と信頼で障害や違いを乗り越え、サンゴ礁を保護・保存していく必要があるのです。

『I Sea You』では、国際的に評価された受賞歴のあるアーティスト、ノア(アヒノーム・ニニ)と彼女の長年の音楽コラボレーターであるギル・ドール、エジプトのミュージシャン、ジョセフ・タワドロスとジェームス・タワドロス、ヨルダンの巨匠ファラー・シラージ、サウジアラビア初の女性技術ダイバー、ヌーフ・アロサイミによる独占パフォーマンスが行われました。

イメージ: World Economic Forum/Manuel Lopez
イメージ: World Economic Forum/Manuel Lopez
イメージ: World Economic Forum/Manuel Lopez

モーフィング・チェンバー・オーケストラの演奏に加え、ギタリストで作曲家、プロデューサーでもあるアンドレアス・アーノルドと、ピアニストで作曲家、編曲者のティム・アルホフも参加。

同コンサートでは、環境保護活動家で深海ダイバーのヌーフ・アロサイミによって撮影された紅海のサンゴの映像と、アーティストのコーラル・モルフォロジックが提供した映像による特別な没入型の背景が使用されました。

エキシビジョン: 『36.5 / A Durational Performance with the Sea(36.5/ 海との長時間パフォーマンス)』

2012年、大西洋で発生した超大型の嵐、ハリケーン・サンディがニューヨーク全域とロングアイランドを襲いました。48時間のうちに風雨と洪水が約300軒の家を破壊し、数十万人のニューヨーカーが停電に見舞われ、公共および私的な重要インフラが損壊。多くの人々が食料、水、医療、その他の重要なサービスにアクセスできなくなりました。

この嵐により44人の市民が死亡し、ニューヨーク市全体で約190億ドルの損害と経済的損失が発生しました。その上、69,000軒以上の住宅が被害を受け、数千人のニューヨーカーが一時的に避難を余儀なくされたのです。

ハリケーン・サンディに触発されて、学際的アプローチをとる視覚パフォーマンスアーティストのサラ・キャメロン・サンデは、個人および集団の脆弱性とレジリエンスを探る多面的な作品を創作しました。同氏はニューヨークでこの嵐を実際に体験しています。

『36.5 / A Durational Performance with the Sea(36.5/ 海との長時間パフォーマンス)』 は、モニュメンタルなスケールのランドアート、個人の身体スケールのパフォーマンスアート、デジタルスケールのビデオアートを組み合わせ、現代の環境問題に関連する社会的関与の実践を融合させた作品です。

この作品では、サラが海水の中で潮のサイクル全体を立って体験し、海水が体に上がったり下がったりするのを感じます。潮のサイクルは最大で13時間かかり、海水はサラの首のあたりまで上がります。彼女は地元の人々を招待し、体験の一部またはすべてに参加することを促し、または岸から観察することを勧めています。10年近くにわたって、メキシコ、バングラデシュ、ケニア、ニュージーランドなど6大陸を巡り、最終的には2022年9月にニューヨークのハドソン川でパフォーマンスを行いました。

Sarah Cameron Sunde, Interdisciplinary Artist, USA, speaking in the Meet The Artist – Sarah Cameron Sunde – Exhibition: 36.5  session at the World Economic Forum Annual Meeting 2023 in Davos-Klosters, Switzerland, 19 January. Congress Centre. Copyright: World Economic Forum/Mattias Nutt
イメージ: World Economic Forum / Mattias N

「この作品の表面的なシンプルさは、その理論的、審美的、政治的な潜在可能性の複雑さを覆い隠しています。同作品は、芸術、パフォーマンス、自然における人間の存在に関する質問を、様々な言説や学問的な視点からアプローチする機会を提供しています。フェミニズム、エコ理論、空間理論、身体化と情動、レジリエンス、パフォーマンスの歴史、美術史、さらには国境を越えたアート・アクティビズムやエコスフェリックな意識を育む方法などを問いかけているのです。」 - ウナ・チャウドゥリ(環境批評家、ニューヨーク大学人文学部長)

『人工現実:コーラル』

「データペインティング」の先駆者であるトルコ系アメリカ人メディアアーティスト、レフィク・アナドルは、機械学習アートのパイオニアです。その作品は、デジタルと物理的な存在の間の空間を探求し、建築とメディアアートを機械知能でハイブリッドに関係付けるものです。著名なルーメン賞を受賞した同氏の作品は、ベネチア建築ビエンナーレやビクトリア国立美術館(メルボルン)、最近ではニューヨーク近代美術館などで展示されています。

イメージ: World Economic Forum/ Greg Beadl

海洋環境、特にサンゴ礁の窮地に触発されたこの新しい作品は、アナドルによって特別に創作され、ダボスで開催された2023年の年次総会で発表されました。

Refik Anadol, Media Artist and Director, Refik Anadol Studio, USA speaking in the
Impressions from the World Economic Forum Annual Meeting 2023 in Davos-Klosters, Switzerland, 16 January 2023. Copyright: World Economic Forum/Michael CalabroSession ID: a0W68000000hPVe

『人工現実: コーラル』は、約10億枚のサンゴの画像を機械学習の分類モデルで処理した大規模なデータ彫刻です。科学、技術、視覚芸術を融合させたこの刺激的な作品は、サンゴの保存と持続可能性に焦点を当てています。データのデジタルなエコシステムと多くの生態系が共存する風景をつなぎ合わせ、メタバースとブロックチェーンの両経済の可能性を活用して、グローバルな気候変動という課題の緩和を目指しています。

『ザ・オンリー・ウーマン(The Only Woman)』 – イミー・ヒュームズ著『The Only Woman』(ファイドン・プレス社発行)より

Mandatory Credit: Photo by AP/Shutterstock (6599993a)GRAHAM This is a 1975 photo of Katharine Graham, first woman elected to the Associated Press' board of directors, who is seated at left during a board meeting in New York CityKATHARINE GRAHAM, NEW YORK, USA
イメージ: AP/Shutterstock
Immy Humes, Writer and Documentary Filmmaker, speaking during the Cultural Leaders as a Catalyst of Change with Immy Humes session at the World Economic Forum Annual Meeting 2023 in Davos-Klosters, Switzerland, 18 January. Congress Centre - Fusion. Copyright: World Economic Forum/Valeriano Di Domenico

この特別にキュレーションされた写真展には、オスカーにノミネートされたドキュメンタリー映画製作者、プロデューサー、著者イミー・ヒュームズのベストセラー『ザ・オンリー・ウーマン(The Only Woman)』から25枚以上が展示されています。

この写真展はジェンダー平等に対する独自のアプローチであり、「唯一の女性」という現象を時代や文化を超えて掘り下げるものです。アメリカ、イギリス、フランス、ペルー、メキシコ、インド、中国、日本、オーストラリアなど、様々な国々からの印象的な視覚表現作品が並びました。

(Original Caption) Miami Beach: Together before appearing on Meet the Press are Democratic presidential nomination candidates (left to right, top row) Sen. George McGovern (D-S.D.); Senator Hubert Humphrey of Minnesota; Sen. Edmund Muskie of Maine; (left to right, bottom) Sen. Henry Jackson of Washington; and Rep. Shirley Chisholm of New York.
イメージ: Bettmann Archive

様々な背景を持つ無名と著名、両方の女性たちを取り上げる作家、イミー・ヒュームズは、女性と男性の社会的関係性を驚くべき痛烈な方法で明らかにし、再構成しています。ゆっくりとした大きな変化の流れの中で瞬間を捉えたこれらの写真は、一枚一枚が、次々に出てくる家父長制の様子や、その他の支配の力を示す証拠を提供しています。

『ザ・オンリー・ウーマン(The Only Woman)』は、知られざるストーリー、勇気、功績、怒り、謎、楽しさに満ちた、視覚的・文化的な歴史への新鮮な貢献であるばかりでなく、非凡な女性たちを描き出しているのです。

『カラー・オブ・レジリエンス』

国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)によると、「世界中で少なくとも1億300万人が強制的に祖国を追われ、そのうち490万人が亡命を希望し、3,250万人が難民となっています。これは、歴史上最多の記録です」とのこと。世界の難民の半数以上は子どもです。多くの子どもたちは、自分の家から離れ、時には家族と離れたまま幼少期を過ごすことになります。紛争、暴力、移住、ジェンダー不平等などにさらされることで子どもたちには、大人になっていく上で長期的な影響と困難が生じます。

子どもたちは極めてレジリエンス(強靭性)が高いため、学び、遊び、創造的なスキルを探求することによって対処する方法を見つけ、友人や家族、コミュニティから力を引き出すことができます。

クリエイティブ教育により、子どもたちが自分自身を再構築し、自分たちの世界を変える方法を考えるための枠組みを提供することができるでしょう。このことが、トラウマを癒し、感情、希望、夢、そして願望を表現する助けとなります。

グローバルなコミュニティベースの公共アートと教育の非営利団体であるアートリューションは、過去14年間にわたり、創造的で参加型の協働アートを通じて、世界中で前向きな社会変革を促進しています。

アートリューションの協力を得て、世界経済フォーラムは『カラー・オブ・レジリエンス(The Colour of Resilience)』という大規模な壁画を制作しました。創作の過程の中で、Artolutionは、ヨルダンのアズラク難民キャンプ、ウガンダのビディビディ難民キャンプ、バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプ、コロンビアのベネズエラ難民および国内避難民コミュニティの4つのグループを指導。各グループは、大規模なアート作品をデザインし、描き出しています。各アート作品は、グローバルな移民の危機と無国籍という物語を視覚的に捉え、参加者の個人的な経験、物語、願望を共有します。

この大型作品は、世界中の危機的状況から作られた初の協働的かつ越境的な国際公共アートです。これはレジリエンス(強靭性)の祝典であると共に、創造されたコミュニティを代表する物理的な遺物であり、時代の最も切迫した課題を乗り越えるための道を示しています。

作品の詳細と、壁画およびその背後にあるコミュニティについては、作品のウェブサイトをご覧ください。

グローバル・コラボレーション・ビレッジ

2022年5月に正式に発表されたグローバル・コラボレーション・ビレッジは、すでに75以上の主要組織を創設メンバーとして迎え入れています。このビレッジは、国際機関、各国政府、パートナー企業、市民社会組織、アート組織など、主要なグローバルステークホルダーを引き付け、集結させると共に、未来の可能性を想像し、没入感を伴って体験的にアイデアを探求し、未来の世界を描く場となっています。

メタバースの無限の機会を追求し、発見する中で、2023年の年次総会においては、グローバル・コラボレーション・ビレッジの一部として、特別な文化イベントを展示しました。

音楽、歌、ダンス、視覚芸術を組み合わせたこのイベントは、最先端の技術を紹介し、パートナーや参加者に新しい創造の地平を想像し、グローバル・コラボレーション・ビレッジ内で共に創造し、作品を展示するよう促します。

クリスタルアワード

クリスタルアワードは、世界の状態を改善するために重要な貢献をし、「ダボスの精神」を最も体現している優れたアーティストや文化リーダーを讃える賞です。

2023年にダボスで行われた年次総会では、優れたアーティストの社会への貢献を表彰しました。クリスタルアワードを受賞するカルチャー・リーダーたちは、架け橋となる存在です。彼らは私たちを互いに結び付け、人間としてのあり方を考えさせ、短期的な、または直線的な思考の限界を打ち破るような世界のビジョンを提供してくれます。

第29回の授賞式では、ワールド・アート・フォーラム会長のヒルデ・シュワブ氏が、世界的に著名な建築家、環境活動家、21世紀の最も重要な公共アーティストの一人であるマヤ・リン、現代において最も評価されているソプラノの一人であり、アート、健康、神経科学の交点での研究を支援するルネ・フレミング、そして俳優、映画製作者、慈善活動家であるイドリス・エルバと妻のサブリナ・ドウレ・エルバに、食料安全保障、気候変動、環境保護に対する貢献とリーダーシップのためにクリスタルアワードを授与しました。

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