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ケアエコノミーへの配慮が、成長と幸福の鍵である理由とは

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有給および無給のケアワークの負担は、女性に偏っています。 Image: Getty Images

Gala Díaz Langou
Executive Director, CIPPEC (Centre for the Implementation of Public Policies for Equity and Growth)
Diana Rodriguez Franco
Special Adviser, Gender and Diversity, Inter-American Development Bank
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ケアエコノミーは、現在および将来にわたって人間の活動を支えるだけでなく、ケアを行う権利とケアを受ける権利の両方を守ります。無給のケアワークを有給にした場合、その額は世界のGDPの9%に相当する一方、ケアエコノミーの社会的・経済的価値は、ほとんど認識されないままです。公平かつ持続可能な成長を実現するため、マクロ経済、政策、文化の各レベルにおいて、包括的なアプローチを用いてケアエコノミーを優先させる必要があります。

ケアエコノミーは、現在および将来にわたって人々の活動を支えることにより、成長、幸福、人間開発の中核をなしています。ある試算によれば、無給のケアワークを有給にした場合、その額は世界の国内総生産(GDP)の9%に当たる、11兆ドルに相当します。

ラテンアメリカのみを見ても、この地域のGDPの15.7%から24.2%を占めており、他の個別産業より経済への貢献度が高いのです。

ケアが重要である一方、ケアエコノミーの社会的・経済的価値はほとんど認識されないままです。人間関係、サービス、生活を可能にする有給・無給の仕事を網羅(もうら)するケアは、他のすべての仕事を可能にしているのです。

例えば、企業や政府の正規雇用者は、子どもや高齢者、介護が必要な親しい人がきちんとケアされているからこそ、働くことができるのです。このようなケアの仕事がなければ、家庭の外で雇用を得ることは、事実上不可能でしょう。

ケアは、それ以外の経済の領域が機能するために不可欠であるだけでなく、こうした仕事自体が未開拓の雇用源となっており、雇用も拡大しています。ケアへの投資は雇用を創出するのです。

世界経済フォーラムの報告書「ケアエコノミーの未来(The Future of the Care Economy)」によれば、ケアエコノミーなどの社会的雇用に1兆3,000億ドルを投資した場合、GDPは3兆1,000億ドルになり、米国では1,000万人以上の雇用創出が可能となります。

出生率が低下し、長寿化が進むにつれ、より多くの高齢者ケアギバー(介護者)およびケアサービスを必要とするようになります。

公平なケアエコノミーは男女格差を縮小

有給および無給のケアワークの負担は女性に偏っており、不平等の主な要因の一つとなっています。女性は、世界全体で男性の平均3倍以上の時間をケアワークに費やしており、この数字は、国によっても違います。

ラテンアメリカの一部の国では、この格差が拡大し、女性は男性に比べて無報酬の家事やケアに最大7倍、インドなど他の開発途上国においては、8倍もの時間を同様の仕事に費やしているのです。

このように、ケアの分担が不平等であるため、これによる負担が労働市場での時間を制限し、女性が経済活動に完全に参加することを阻む、主な障害の一つになっています。ケアは家庭が担い、家庭は女性が担うと考えられているため、当然のように「女性の問題」として扱われているのです。

より公平にケアを分配し、女性が「当然の」ケア提供者として家庭や労働力における有給・無給のケアワークの大半を担うという考え方を改めない限り、家庭や労働市場における男女間の不平等は続くでしょう。

ケアワークを適切な仕事とし、男女ともにディーセントワークに就くことのできる未来を確保するためには、ジェンダーギャップを是正する必要があります。そして、是正しない限り成長できないことを認めなければなりません。ケアにおけるジェンダーギャップの解消は、大きな経済的リターンを生み出し、雇用、消費、税収、成長規模をさらに増大させるでしょう。

ジェンダーの固定観念や社会的に割り当てられた役割像を刷新し、女性が進出する機会を掴みやすくするためには、男性をケアの仕事に取り込むことが不可欠です。勉強する時間、医者に行く時間、外で働く時間、運動する時間、家事や介護以外の活動に参加する時間が限られている、あるいは全くないという、時間的貧困から解放されない限り、女性は取り残されてしまいます。

ケアエコノミーへの投資がすべての人の利益になる理由

成長、幸福、そして人間開発を重視するのであれば、ケアエコノミーに関して以下を行うべきです。

  • 包括的ケアシステムを認識、再分配、削減、補償、代表、設計する必要があります。ケアの責任は家庭内で再分配し、包括的ケアシステムを通じて、パブリックセクター、企業、地域社会がより積極的な役割を担うべきです。ケアは家庭だけの責任ではありません。コロンビアのケア・ブロックまたは Manzanas del Cuidado(マンザナス・デル・シウダド)、メキシコの Utopias(ユートピア)に見られるように、包括的なケアサービスの提供は、特にこれらの責任を国や国のプライベートセクター、企業と分担し、家庭内で分散させることにより、非常に効果的で公平にすることができます。
  • ケアは、より広域な男女平等のための文化的変革の一部です。ケアは、教えること、および学ぶことが可能であり、女性だけの役割や責任ではありません。男性がケアの役割を担っていることを認識すれば、Equimundo(エクイムンド)が示すように、暴力を減らし、共感を高め、より包括的な男性らしさのモデルを作り出すことができるのです。男性の育児参加を推進し、ケアの権利を保障することにより、子どもの発達が促進します。文化的な変革は、責任ある大人全員がケアの責任を共有することに基づく休暇制度など、具体的な政策によって加速させることができます。
  • GDPを計算する際には、ケアエコノミーを考慮する必要があります。ケアと女性による経済への貢献について、より良い推計が必要です。具体的なケア指標を設計・採用することにより、GDPのより包括的な分析につながり、ケア不足の特定にも役立ちます。また、ケアにおけるジオリファレンス・マップなどの技術を利用することで、公共政策に情報を提供することができます。Basic Care Basket(ベーシック・ケア・バスケット)のような指標は、公的資源配分の効率化につながり、ケアシステムを強化し、経済全体における無給のケアワークの可視化を可能にします。

マクロ経済、政策、文化の各レベルにおいて、ケアエコノミーを優先させる必要があります。ケアエコノミーに直接取り組まなければ、これ以外のあらゆる投資や努力は失敗に終わるでしょう。

ケアエコノミーへの包括的かつ統合的なアプローチの成功は、政府、企業、地域社会が協力し合うことにかかっています。公平で持続可能な成長を達成するためには、ケアを行う権利とケアを受ける権利を保証する必要があるのです。

本稿における、CIPPECのチーフ・オブ・スタッフであるソフィア・フェルナンデス・クレスポ氏の貢献に感謝します。

ガラ・ディアス・ランゴウ氏は「成長の未来に関するグローバル・フューチャー・カウンシル( Global Future Council on the Future of Growth)」のメンバーであり、ディアナ・ロドリゲス・フランコ氏は「ケアエコノミーの未来に関するグローバル・フューチャー・カウンシル( Global Future Council on the Future of the Care Economy)」のメンバーです。

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公平なケアエコノミーは男女格差を縮小ケアエコノミーへの投資がすべての人の利益になる理由

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