持続可能な開発

SDGs達成のために企業ができる戦略と取り組み方

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国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向け、民間セクターが極めて重要な役割を果たします。 Image: Getty Images

Pascual Berrone
Professor of Strategic Management, IESE Business School, University of Navarra
Joan Enric Ricart Costa
Professor of Strategic Management, IESE Business School, University of Navarra
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  • 国連の持続可能な開発目標(SDGs)が、私たちを豊かで公平かつ持続可能な世界へと導く一方で、その道のりは容易ではありません。
  • 高い目標を達成するには、民間セクターが重要な役割を果たす必要があります。
  • 多くの研究が、世界のトップ企業がすでに実施しているSDGs達成のための取り組み方やならびにその流れに他の企業がどうすれば続くことができるかについて明らかにしています。

企業がどれだけ善意に基づいていても、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の範囲と志のすべてを自社の戦略に組み込むのは容易なことではありません。17のグローバル目標と169の行動目標は、手が届かないほど高く設定されているように感じてしまうものです。

例えば、「目標1 あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」。「目標5 ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」。「目標8 すべての人々のための包摂的かつ持続可能な経済成長、雇用およびディーセント・ワークを推進する」などが挙げられています。

SDGsの課題

SDGsは2015年に採択され、2030年までに達成するよう意図されています。期限が刻一刻と迫る一方で、17のグローバル指標に対する進捗は、順調とは言い難い状況です。2023年に国連が発表した報告書によると、軌道に乗っているのは目標のわずか15%。48%は中程度もしくは軌道から著しく外れており、37%は停滞もしくは後退しています。

2030年の目標達成に向けて前進する望みがあるならば、企業が必要な役割を果たすこと。

こうした課題に光を当てているのが、マッキンゼーやPwCのような組織の実践的なガイドライン他、主要な経営誌の関連記事を幅広くまとめたレビュー記事です。このレビューでは、学術的な知識と実践的なガイドラインを統合し、SDGs採用のための強固かつ科学的な情報に基づいたプロセスベースの枠組みが提供されています。

企業がSDGsを自分たちのものにするには

このレビューに基づき、企業がSDGsを自分たちのものにするための4つのステップを紹介します。

1優先順位をつける

企業のリーダーは、自社の戦略目標に最も関連性の高いSDGsを特定しなければなりません。すべての目標に意味のあるインパクトを与えられる企業は存在せず、多くの目標を追求し過ぎると、リソースを薄めてしまうリスクが出てきます。また、意味のある焦点が定まらないでいると、従業員のコミットメントやエンゲージメントが低下してしまいがちです。SDGsと企業の中心的活動との整合性に限らず、意思決定者の個人的価値観やその他の要因によって何らかの関連性がもたらされることもあるでしょう。

例えば、デンマークの玩具メーカーであるレゴは、「世界中の教育や幼児教育に取り入れられる遊びの変革力」を信念に、「つくる責任、つかう責任」(目標12)と「質の高い教育をみんなに」(目標4)を優先。この2つのSDGsは、いずれも同社の活動や価値観に焦点を当てるとともに、合致もしています。

2 文脈化する

企業はSDGsを自社の地理的・産業的分脈の中に位置づけるべきです。そして、目標をグローバルな行動要請から、文脈に関連した管理可能なものへと再構築しなければなりません。このような再構築が行われない限り、目標は現実的ではなく、象徴的なものになりかねないからです。また、SDGsの中には、飲料水へのアクセスのように、地域によって適用できるものとそうでないものがあります。SDGsをローカライズすることで、管理職や従業員が具体的な目標に向かって自分の会社が少しずつ前進していることをイメージしやすくなり、ステークホルダーのエンゲージメントも向上するでしょう。

フランスの食品大手ダノンは、SDGsへのアプローチに関して、「飢餓をゼロに」(目標2)や「すべての人に健康と福祉を」(目標3)など、栄養とウェルネスに関連する分野に注力すると説明しました。「弊社の活動が最も重大な影響を及ぼすいくつかの目標に向け、積極的に貢献することを決定しました」と同社は述べています。これは、貧血が深刻な問題となっているカメルーンとコートジボワールで母親を対象とした調査を実施し、子どもたちが必要とする鉄分の70%を摂取できるように、シリアルブランド「ホスファチン」を改良するプロジェクトなどを含みます。

3 協力する

このためには、他の組織やステークホルダーと協力し、互いの目標をよりインパクトのある形で進めていくことが必要です。繰り返しになりますが、SDGsは複雑であり、単独で達成圏内に手の届くものはありません。変化を起こすためには、複数の外部パートナーとの協力が必要です。SDGsは、官民、多国間機関、その他の市民社会アクターを含む複数のステークホルダーが協調して貢献することによってのみ達成することができます。企業によっては、ステークホルダーを管理することから彼らとパートナーになることへ、また組織中心のアプローチから課題中心のアプローチへと発想を転換する必要があるのです。そのためには対話が必要となりますが、これは必ずしも容易なことではありません。

製薬会社のノボノルディスクは、169の行動目標すべてについて重要性評価を行った結果、「すべての人に健康と福祉を」(目標3)と「つくる責任、つかう責任」(目標12)に落ち着きました。これらを進める上で鍵となるがパートナーシップです。例えば、「Cities Changing Diabetes(糖尿病を変える都市)」プログラムにおいて、ノボ ノルディスクは100を超える地域のパートナーと協力し、都市における糖尿病の根本的な原因をマッピング・分析し、健康的な生活に関する体系的な問題の解決策を提供しています。

4 イノベーションを起こす

企業は、SDGs に関連した明確な成果を出すために、新たなビジネスモデルを設計し、通常のビジネスのやり方を考え直す必要があるかもしれません。ビジネスモデル・イノベーションは、社会的・環境的な結果をデザインに取り入れることで、企業が持続可能な変化を促進することを可能にします。これまでと同じやり方を続けていては、SDGsは決して達成できません。既存のツール、技術、テクノロジーに頼ることはできないのです。企業はビジネスモデルを革新しながら、より少ないインプットとよりクリーンなテクノロジーを使用する斬新なソリューションを見つけなければなりません。これは、現在のビジネス慣行を大きく変える一方で、社会との関わりという新たなロジックに基づいた新しいビジネス慣行を採用することを意味します。

エネルギー転換は、最も重要な気候変動対策と言えるでしょう。スペインの電力会社であるイベルドローラは、「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」(目標7)と「気候変動に具体的な対策を」(目標13)を、最も影響力のある目標として掲げ、事業戦略に組み込んでいます。これらを前進させるために、同社は再生可能エネルギー、デジタル化、電動モビリティなど、根本的なイノベーションが必要な領域への投資を加速させることを約束しました。

国連のSDGs達成に向けたグローバルな進展が期待外れであることを否定する人はいないでしょう。その一方で、企業はなかなか進まない現状や目標の広範さを理由に、その取り組みを躊躇すべきではありません。SDGsは、適切なアプローチを取ることで、測定可能な結果を伴う具体的な行動計画に変えることができるのです。

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