NYCに誕生した「住みやすい街路局」自転車にも歩行者にも寄り添う街をつくる
ニューヨークと聞いて思い浮かぶのはどんなことだろう Image: Getty Images/iStockphoto
ニューヨークと聞いて思い浮かぶのはどんなことだろう。世界的な観光都市、物価と人口密度が高い、グローバル企業が建ち並ぶ、交通量が多い……といったイメージが強いかもしれない。
それらは住民にとって暮らしやすい環境なのだろうか。そんな問いのもと、現在ニューヨーク市で街の改善を行うのが「住みやすい街路局(Office of Livable Streets)」だ。
この「住みやすい街路局」は、ニューヨーク市交通局によって2024年4月に立ち上げられたもので、あらゆる交通手段を利用する人々が通行しやすい道路にすることを目標としている。
社会的距離を必須としていたコロナ禍では、日常生活や社会の仕組みの変化を余儀なくされた。ニューヨーク市の公共空間では、自転車や電動自転車を使用する人、車から徒歩に変えた人が増加した。しかし道路や歩道はその変化に対応できるつくりになっておらず、道の使われ方自体が見直されるようになった。
クイーンズ区34番街などの通りは、車両の通行を停止し、近隣の人々が歩いたり、自転車で移動したり、遊んだりできるよう、公共スペースとして開放された。マンハッタンのブロードウェイ大通りは、一時的なバリケードや看板を使用して歩行者にオープンな通りとなり、自転車レーンや歩行者の安全対策が行われているという。
ニューヨーク市交通局によると、「住みやすい街路局」は以前知られていた「通りの改善局」をリブランディングしたものだそうだ。この新たな街路局のリブランディングは、道路を歩行者に開放する「オープン・ストリート」などの地域プログラムを通じて住民同士が絆を築き、つながるための場所として利用しはじめたことから生まれた。この取り組みは、異なる交通手段の間で優先順位をつけるのではなく、すでに道路を利用している人々のニーズに合わせて通りを再設計することに重点を置いている。
「住みやすい街路局」の副局長であるショーン・クイン氏は、Next Cityのインタビューで次のように語っている。「目標は、二元論を超えた道路を作ることです。それは単に車のための場所であるかそうでないかだけではありません。道路とは、歩行者、自転車に乗る人の場であり、地域活動や商業開発、すべてのものの場なのです」
なお、ニューヨーク市交通局は2024年4月22日のアースデーに、気候変動や持続可能性への認識を促進するためのカーフリーイベントを実施した。交通局によって毎年主催されるこのイベントは、今年は市内の31ヶ所で行われ、過去最多の道路が通行止めとなった。
ニューヨークの「住みやすい街路局」の取り組みは、実践するにあたって単に車の通行を禁止したり商業を制限したりするのではなく、そこに暮らす人々のニーズを重視しながら環境負荷を抑え、コミュニティの活動に寄与することに焦点を当てている。人々の意識を向けるそうしたアプローチこそが、結果的に地域経済を潤すことにもつながるのではないだろうか。
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