漂流する世代:若者の幸福度が低い理由とその対策
文化を超えたつながりを築くことが、幸福とメンタルヘルスの強化に役立ちます。 Image: Getty Images/iStockphoto
最新の情報をお届けします:
メンタルヘルス
- 社会的、経済的、技術的、環境的な圧力が重なり、グローバルに若者の幸福度は低下しています。
- この落ち込みは、将来的に経済と健康に影響を及ぼすでしょう。
- 若者をサポートするために、ヘルスケア、教育、ソーシャルメディアの改革を持続的に実施する必要があります。
歴史的に楽観主義の光であった若者が、年長者よりも幸福度が低いと報告される時代になり、十代の若者たちは危機感と闘っています。
シェイクスピアは、『お気に召すまま』に出てくる「人間の7つの時代」の中で、人生後半のステージをメランコリックなものとして描きましたが、国連による最新の「World Happiness Report(世界幸福度報告書)」は、懸念すべき現実を明らかにしています。現在、世界中で若者の幸福度が年長者よりも低く、2006年以降、北米、南米、ヨーロッパ、南アジア、中東、北アフリカにおいて、その傾向が続いています。
さらなる調査により浮き彫りになったこの低下には、次のようないくつかの要因があります。
1. 経済的課題
- コストの上昇:以前の世代に比べ、若者が豊かになるまでの道のりが険しくなっています。住宅、教育、ヘルスケアにかかる費用は、経済的な安定と全体的なウェルビーイング(幸福)への大きな障害となり得ます。学生ローンの負債や賃金の低迷が家計をさらに圧迫し、達成感や安定感に寄与するマイホームの所有や家族の形成といったマイルストーンを遅らせています。これは欧米だけの現象ではなく、2022年の世界銀行の報告書によると、ブラジルやインドなどの開発途上国の若年層にとっても、住宅費の上昇は大きな懸念事項となっています。
- 雇用市場:ギグ・エコノミーや不安定な労働形態は、伝統的なキャリアに比べて手厚い保障や福利厚生がありません。このような安定性の欠如は、資金計画を困難にし、将来への不安を増大させます。国際労働機関(ILO)が作成した2023年の報告書によると、若者の失業率は先進国全体で依然として高く、開発途上国ではさらに悪化しています。
2. 社会的・技術的圧力
- ソーシャルメディア:ソーシャルメディアはつながりを提供する一方、劣等感や社会的比較を助長する可能性があります。2022年の調査では、ソーシャルメディア利用の増加と若年成人のうつ病や孤独感の症状との間に強い相関関係があることがわかってしており、これはグローバルな傾向である可能性が高いと言えます。
- 社会的孤立:オンラインではつながりがあっても、余暇時間の減少、地理的なモビリティ、社会的不安などの要因により、若者は直接の人間関係の希薄さを強く感じる可能性があります。支えてくれるコミュニティから切り離されていると感じることは、幸福感に悪影響を及ぼします。
3. 不確実性と不安
- 気候変動:気候変動の脅威が若者世代に重くのしかかっています。彼らは、環境課題を抱えた世界を受け継ぐことになり、自分にはどうしようもないという無力感を抱くかもしれません。
- 政治的分極化:社会的・政治的分断の拡大が、不安と絶望感を煽る可能性があります。常にネガティブな状況を目の当たりにすると、人は精神的に疲弊してしまいます。2023年の国連児童基金(ユニセフ)の報告書によると、シリアやイエメンのような世界各地の紛争地帯にいる若者は、特に高いレベルの不安と抑うつを訴えています。
地理的な格差と不平等は明らかです。ポルトガルとギリシャでは、若者の幸福度が高齢者よりも高いのに対し、ノルウェー、スウェーデン、ドイツ、フランス、イギリス、スペインでは、逆の傾向。さらに、北米の若者も年長者よりも幸福感がかなり低いという結果も出ています。幸福の不平等も、ヨーロッパを除くすべての地域で増加しており、報告書の言葉を借りれば幸福感に関するこの「歴史的」かつ「不穏」な変化に追随する可能性があります。
対処が遅れれば、壊滅的な結果を招きかねません。報告書が指摘するように「世界のある地域では、子どもたちがすでに中年の危機に相当するような経験をしていると考えると、早急な政策措置が必要」です。幸福度が低下すると、意欲、生産性、健康、寿命も低下してしまうからです。
世界中で幸福を育む
報告書は懸念すべき状況を描き出していますが、同時に希望も示しています。コスタリカやクウェートのような国では、若者の幸福度が上昇しています。具体的な理由はまだ研究中ですが、これらの例は、社会的支援と目的意識に焦点を当てることが鍵になる可能性を示唆しています。
1.グローバルなメンタルヘルス支援を優先する
私たちは、世界中の学校や地域社会で、若者のための利用しやすく包括的なメンタルヘルス・サービスに投資しなければなりません。ソーシャルメディアやその他のストレス要因の悪影響に対処するには、早期介入と支援が重要です。マインドフルネス・トレーニングやグループ・セラピー・セッションのようなプログラムは、若者の不安や抑うつを軽減することに成功しています。さらに、若者のメンタルヘルスに関する懸念に特化したオンラインリソースやヘルプラインを用意することで、より幅広く人々がアクセスできるようになるでしょう。
2. 文化を超えたリアルワールドでのつながりを育む
真の社会的交流と帰属意識を促進する活動は、文化を超えて支援・奨励されるべきです。異なる国の青少年が共に生活し学ぶ国際交流プログラムは、理解と生涯にわたる友情を育むことができます。また、バーチャルな青少年メンターシップ・イニシアチブは、指導や支援を提供できる経験豊かな専門家と青少年をつなぐことができます。環境活動や創作活動など、共通の興味に焦点を当てたグローバルなオンライン・コミュニティも、帰属意識や目的意識を高めるのに役立つでしょう。
3. ソーシャルメディア改革を推進する
ソーシャルメディア企業や政府には、ユーザーのウェルビーイングを優先する世界的な責任があります。より厳格なコンテンツ規制、否定的な意見や誤った情報の拡散を制限するポリシーの導入は極めて重要です。また、プラットフォーム企業は、特定の種類のコンテンツの視聴時間を制限したり、年齢確認を義務付けたりする機能を検討することもできるでしょう。国際協力によって、これらの改革が国境を越えて効果的に実施され、若者にとってより安全で前向きなオンライン環境をグローバルに作り出す必要があります。
4. 未来のために教育を最優先する
学校は伝統的な学問の枠を超えて、あらゆる場所で応用できるライフスキルを身につけさせる必要があります。金融に関する知識を養う授業は、若者が十分な情報を得た上で金銭的な決断を下し、学生ローンや予算編成の複雑さを乗り越える力を与えるでしょう。また、健全なオンライン習慣を身につけることで、ソーシャルメディアの利用を責任ある安全なものにすることができます。
若者の幸福度が低下しているという深刻な現実に直面し、世界は岐路に立たされています。国連の「World Happiness Report 2024(世界幸福度報告書2024年版)」は、未来の世代のウェルビーイングを育むことが、私たちの連帯責任であることを思い起こさせるものです。今日の若者は、明日の社会を支える力です。若者の不満を助長する要因に今取り組むことで、企業と社会は一丸となって明るい未来への道を切り拓くことができるのです。
このトピックに関する最新情報をお見逃しなく
無料アカウントを作成し、パーソナライズされたコンテンツコレクション(最新の出版物や分析が掲載)にアクセスしてください。
ライセンスと転載
世界経済フォーラムの記事は、Creative Commons Attribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 International Public Licenseに基づき、利用規約に従って転載することができます。
この記事は著者の意見を反映したものであり、世界経済フォーラムの主張によるものではありません。
アジェンダ ウィークリー
グローバル・アジェンダとなる、重要な課題のウィークリー・アップデート
メールに記載されているリンクから、いつでも配信を停止することができます。 詳しくはこちらをご覧下さい。 プライバシー・ポリシー.
もっと知る ウェルビーイングとメンタルヘルスすべて見る
IDEAS FOR GOOD
2024年7月17日
Olena Zelenska
2024年6月5日
Dr Mifrah Sherwani and Ateeq Syed
2024年3月26日
Johnny Wood
2023年7月27日
Naoko Tochibayashi
2023年4月25日