Chemical industry power plant with emissions alongside vibrant green leaves, illustrating a balance of industry and nature
科学・素材産業

化学産業の今 - その変革と重要性

ディープ・ダイブ

エネルギー転換、二酸化炭素排出量削減への取り組み、再生可能テクノロジーの実現において、化学産業は極めて重要な役割を担っています。 Image: Getty Images/coffeekai

Fernando J. Gómez
Head, Resource Systems and Resilience; Member of the Executive Committee, World Economic Forum
Oxana Saimo
Lead, Transitioning Industrial Clusters, World Economic Forum
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本稿は、以下会合の一部です。世界経済フォーラム年次総会
  • 化学産業は、グローバルなシフトにダイナミックに対応し、社内のイノベーションを進め、社会経済システムにおいて極めて重要な役割を果たしています。
  • エネルギー転換、二酸化炭素排出量削減への取り組み、再生可能テクノロジーの実現において、化学産業は欠かすことができないものです。
  • 化学業界は、責任、レジリエンス(強靭性)、生産性の向上に重点を置いた変革を進め、協調的な取り組みを通じて持続可能性と社会的影響の拡大に努めています。
Manager Technical Industrial Engineer working and control robotics with monitoring system software and icon industry network connection on tablet. AI, Artificial Intelligence, Automation robot arm
Image: Getty Images/iStockphoto

化学産業の活動は、一般的には主に分子レベルでの物質の操作(特に変換)によって定義されます。このような活動は、食料、モビリティ、グローバルヘルス、情報経済などの分野を含む、あらゆる社会経済システムの中核を担っています。生物である私たち自身が驚異的な総合化学工場であるだけでなく、現代の化学産業の成果によって、私たちは、より健康かつ安全で、生産的な人類として繁栄することができるのです。この意味において、化学産業は極めて重要です。

とはいえ、化学産業そのものは決して静的なものではありません。業界内のセグメント、価値提供モデル、パフォーマンス、あるいは(最も明白なことですが)製品やサービスなど、さまざまな面で変化しています。これは継続的なプロセスであり、変化が顕著な時期があっても、化学産業は革命的というよりは進化的に変革が進みます。一流企業がこの変革の先陣を切り、他の企業がそれに追随し、ある次元で臨界量の変化が起きて初めて、業界全体の変革について語ることができるようになるのです。

2023年末、世界経済フォーラムは、化学産業とその変革に関する最近の見解と、今後の見通しについて、詳細な意見を寄稿するよう、そのコミュニティのメンバーに呼びかけました。本記事はその中の一つです。

化学産業の変革を支える力

一般に、産業に変革をもたらす原因として最も挙げられるのは外部要因です。そのため、産業変革のプロセスは一般的に、積極的なものではなく、消極的なものと理解されています。化学産業は、以下のような外部環境の変化に対応して変容すると考えられがちです。

  • 特定の産業のインプット力やイネーブラーの変化。例としては、再生可能エネルギーのみの利用に転換するという業界合意、限定した投資先への資本の全面的なシフト(業界にとって金融資本の利用可能性が事実上低下)、スキルの補充の遅れなどが挙げられます。
  • 政策や規制環境の変化。最も顕著なものは、世界的な炭素価格や、特定の物質の製造禁止です。
  • ある産業の製品、テクノロジー、サービスが価値を提供する社会経済システムの変化。例えば、建物のモジュール化、植物ベースの食生活への移行、経済の電化など。このような構造変革により、需要パターンが変化し、波及して化学産業を変えていきます。
  • 世界情勢やマクロ環境の変化は、しばしば業界レベルの変化を引き起こします。深刻な不況が小売チャネルに恒久的な変化をもたらすこともあれば、新たな貿易ブロックが主要な生産国や消費国間の共有ロジスティクスを妨げる障壁を取り除くこともあります。
  • 世界的大事件のような単発の出来事が業界の変革スピードに影響を与えます。例えば、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、化学産業のデジタル化の速度を加速させる一方で、航空産業から利益や雇用、従来の力を消し去りました。紛争と政治的緊張は、半導体のバリューチェーン全体に変化をもたらしています。

とはいえ、化学産業はまた、内発的な理由でも変化しています。これは内在的かつ慎重に検討された変革意図に従うものです。これには以下が含まれます。

  • イノベーションのアウトカム、つまり市場に提供される新しい製品、サービス、テクノロジーの実験。これには、ヒューマンキャピタル(人的資本)の流入によってもたらされる内部コンピテンシーの更新も含まれます。
  • 内部最適化のアウトカム、特に新しく利用可能になったテクノロジーや新たに出現した技術を導入することによって得られる成果。例としては、自己主導型研究による材料の発見など。
  • 合併、買収、売却、カーブアウトが業界やその一部のセグメントを変えるような、セクター内のポートフォリオ活動の結果。

化学産業の変革を推進する社会経済システムの変化の中で、2024年の始まりに特筆すべきはエネルギー転換です。ここで、化学産業は2つの重要な役割を担っています。主要な変換(分解、改質、アンモニア製造)は非常にエネルギー集約的であり、このセクターがスコープ1と2の排出量に対処できるかどうかは、化学物質の生産に使用されるエネルギーミックスを改善できるかどうかに大きく依存します。一方、化学産業は、エネルギーシステムをよりサステナブルなものにするために欠かせない製品やテクノロジーを供給しています。再生可能エネルギー技術(ポリマー、樹脂、ソーラーパネル、風力タービン、エネルギー貯蔵のための重要な部品)は、機能性材料によるパフォーマンスの確立された例です。化学物質なくしてエネルギー転換はないと言っても過言ではありません。この二重の役割は、化学産業における大きな変革を伴うと同時に、他の産業やエコシステムの変革を推進する上で重要な役割を担っています。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、化学産業のデジタル化の速度を加速させる一方で、航空産業から利益や雇用、従来の力を消し去りました。

規制や政策の枠組みが果たす役割は依然として重要であり、今日、変革のための重要な外部推進力として機能しています。国連の国際プラスチック条約や国際化学物質管理会議(ICCM)のような重要なプロセスは、このセクターの将来の製品ポートフォリオや協力関係、さらにはビジネス環境における役割の定義を決定づけるものとなるでしょう。その実施には、オファーを創造的なものとし、業界の能力を協力的な取り組みに展開することが求められます。また、より重要なこととして、製品責任の拡大や、将来に向けた製品ミックス/ボリュームの再定義を検討することが必要です。

変化の方向性

次の3つの側面が、化学産業の歩む変革への道を形作る大きな柱だと考えられます。

  • 責任の強化 - 環境的持続可能性(排出量、資源使用強度)における製品やプロセスのパフォーマンスの明白なアップグレードから、業界を取り巻く社会経済システムの全体的な持続可能性に取り組む好機まで多岐にわたります。
  • レジリエンス(強靭性)の向上 - 業界は、労働力の刷新に注力し、変革を可能にするテクノロジーを日常業務に統合することで、外部からの衝撃に耐えられる体制を整える必要があります。エコシステムの中で、バリューチェーンを強化し、提供する商品を多様化し、慢性的なリスクに対処する適応力を養うことで、化学業界はリーダー的役割を担うべきです。
  • 生産性の拡大 - 社会により大きな価値を提供し、ステークホルダーの収益性を確保する必要性を満たすために、化学業界は自らに挑戦しなければなりません。これには、資源効率の向上、イノベーションの推進、パフォーマンス次元の再定義に取り組むことが必要です。さらに、化学業界はヒューマンキャピタル(人的資本)の創造性に投資し、最も重要なシステム変革をもたらすことができるところに財源を配分すべきです。

これらの変革は、マルチステークホルダーの協力なしには実現しません。世界経済フォーラムは、変革を推進する大手化学企業を支援することができる立場にあります。

今、変革が求められる理由

私たちがどのような未来像を描こうとも、化学物質と材料がその本質的なビルディングブロックであることに変わりはありません。シェルター、輸送、栄養補給など、化学物質がほぼ暗黙のうちに提供する性能は次元を越えて変化し、製品ポートフォリオも進化する可能性がありますが、私たちが消費するもの、作るもの、計算するもの、身につけるものの本質は、依然として物質に根ざしています。

しかし、この業界がレジリエンスを有し、社会的・経済的価値を提供し続けられるかどうかは、前述の要素だけでなく、基本的な関係性にも左右されます。そして、成功のためには次の4つの基本的関係性を再定義する必要があります。

  • 現在の原料ベースとエネルギーベースとの関係 - 生産性を向上させるための排出削減努力は、原料への影響を考慮する必要があります。石油化学部門とその下流に位置するほとんどの部門にとって、エネルギーと原料はあまりにも密接な関係にあります。
  • パフォーマンス基準同士の関係 - 一部の製品で、環境面でのパフォーマンスを犠牲にして技術的性能を詰め込み過ぎているだけでなく、新たな性能基準が出現した(例えば、ある種の危険がよりよく理解されるようになるなど)ために、特定の作業に対する化学物質や材料の選択が難しくなっています。
  • 環境との関係 - 危険を前もって確実に管理すること。温室効果ガス(GHG)の排出から自然資本への脅威、そして人間の健康に対する派生的なリスクまで、危険はもはや化学産業を定義するものではなくなっています。
  • 化学産業と社会の関係 - 化学産業が社会の進歩に果たしてきた重要な役割をよりよく理解し、受け入れること。また社会がヘルスケア、建造環境、モビリティシステムにおける化学産業の重要性を認識すること。これらがなければ、より良い未来への変革を実現することはますます難しくなるでしょう。

私たちは、化学業界の変革という今この瞬間に期待を持っています。化学産業は極めて重要なのです。

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