アジア太平洋地域のAIレディネス、ベスト5カ国は
シンガポールは、その政策とビジネス環境により、AIレディネスにおけるアジア太平洋地域のナンバーワンとなっています。 Image: Unsplash/Mike Enerio
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AIとロボティクス
- 生成AI時代に、国として成功するためには、強力な制度、インフラ、組織、倫理的基盤が必要です。
- アジア太平洋地域では、シンガポール、中国、日本、韓国、オーストラリアなどが、生成AIによってもたらされるチャンスの獲得に役立つ政策を実施していることが分かりました。
- これは、アジア太平洋地域12カ国の「AIレディネス(AIを活用していくための力)」を測定した、セールスフォースの最新のアジア太平洋地域レディネス指数によるものです。
AI(人工知能)は、世界中の消費者、企業、政府にとって日常の現実となりました。2023年には、データの集合体を取り込み、それを利用して新しいものを作り出すテクノロジーである生成AIが登場し、急速に進化しました。世界中の消費者が、日常的な情報ニーズに生成AIを活用するようになり、組織も業務に生成AIを取り入れています。
生成AIは、これまでで最も革新的なテクノロジーの1つとして、ユーザーに新たなレベルの創造性、生産性、有効性をもたらし、政府や企業のAIに対する考え方にも変化を起こしています。最新の調査によると、ITリーダーの3分の2(67%)が、今後18か月以内に自社のビジネスへの生成AIの導入を優先事項としており、3分の1(33%)は、最優先事項と考えています。同じく調査対象となった企業の72%が、今後3年間でAIへの投資を大幅に増やすと回答しました。
生成AIへの投資とその導入の拡大が、世界的に莫大な経済的利益をもたらす可能性もあります。マッキンゼーによる最近の調査プロジェクトでは、生成AIが2030年までに世界経済に年間2.6兆ドルから4.4兆ドル(約37兆円から約62.5兆円)の利益をもたらすと予測されています。
アジア太平洋地域では、生成AIが大きな経済的機会をもたらすでしょう。今後の生成AIの採用や労働者の他の業務への移行状況によるものの、オーストラリアでは、2030年までに年間最大1,150億豪ドル(約1.1兆円)の経済効果があると見積もられています。日本では、生成AIが148兆7,000億円の生産能力を引き出すと推定されています。
AIレディネスを決定付ける5つの柱
生成AIの導入を含め、アジア太平洋諸国がダイナミックなAI環境で成功するためには、各国が「AIレディネス(AIを活用していくための力)」を十分に備える必要があります。AIを取り巻く強力な制度、インフラ、組織、倫理的基盤は、現在、そしてグローバルなAIの未来における成功に不可欠な要素です。AIレディネスを決定付ける5つの柱は以下の通りです。
1. インフラ
大量のデータが生成・利用されるため、生成AIモデルには膨大な計算リソースと専用ハードウェアが必要です。高い処理能力を得るために必要な、互換性のある技術インフラに関する意思決定こそがAIレディネスに向けた第一歩です。
2. データ
生成AIモデルは、意味のあるパターンを学習し、現実的なコンテンツを生成するために、大量の高品質な学習データを必要とします。このデータがモデルのアウトカムと成功を左右するため、質の高いデータの強固な基盤を構築し、継続的に学習を繰り返すことが極めて重要です。
3. 人材開発
生成AIは、あらゆる業界の労働力に影響を及ぼします。ただし、仕事を完全に置き換えるのではなく、特定の職務のフォーカスを変える可能性が高いでしょう。AI化の成功とは、人間の労働力を代替するのではなく、強化することです。とはいえ、AIのスキルに対する需要は大きくなるでしょう。政府と企業は、経済のあらゆる分野で必要とされる熟練したAI専門家に対する市場の需要に応えるため、層の厚いAI人材を育成する必要があります。
4. 倫理
生成AIは、私たちの生活や働き方を大きく変える可能性を秘めていますが、それにはリスクも伴います。偏ったコンテンツや有害なコンテンツが生まれる可能性など、倫理的な懸念があります。開発段階から責任ある倫理的なイノベーションを優先すること、市場に投入されるテクノロジーに包摂性があり、すべての人のためになるよう構築されているかを確認することが重要です。
5. 統合
AIレディネスには、生成AIモデルをリアルワールドでのアプリケーションやワークフローに統合する能力も含まれます。AIレディネスを獲得するためには他の4つの柱も重要ですが、今後、よりスケーラブルで柔軟かつ効果的なテクノロジーを実現するには生成AIモデルの統合が不可欠です。
2023年のアジア太平洋諸国におけるAIレディネス
セールスフォースは、アジア太平洋地域の経済がAIを導入、展開、統合するための企業や政府の準備態勢を評価する「2023年アジア太平洋地域レディネス指数(2023 Asia Pacific Readiness Index)」の第3版を発表しました。年2回発行される本指数は、アジア太平洋地域12カ国のAIレディネスと、各国の社会経済的機会への影響を15の統計指標を通じて測定したものです。
アジア太平洋地域のAIレディネスの総計は全体的に向上していますが、2023年版指数では各国の格差が拡大していることがわかりました。
2023年版の対象となった12か国のうち、5か国(オーストラリア、インドネシア、ニュージーランド、シンガポール、タイ)のAIレディネスは、2021年版のスコアから向上しています。これは、これらの国がこの2年間でAI関連のイニシアチブを数多く立ち上げ、実施してきたことが直接反映されたものです。
シンガポールは、2019年以来3年連続で1位を維持していますが、政策とビジネス環境が大きく改善したことが大きな理由です。続く2位と3位にランクインした日本と中国は、経済のあらゆる側面でAIの導入を枠組み化し、可能にするいくつかの前向きなイニシアチブを展開しています。韓国(4位)とオーストラリア(5位)も、AI分野で活発な2つの経済大国であり、これら5か国がトップ5を占めています。
2023年版同指数の調査結果は、アジア太平洋地域の各国のAIレディネスやアプローチに違いはあるものの、すべての国が、AIと生成AIの進展を優先していることを示しています。2019年および2021年と比較すると、AIは現在、あらゆる国の国家的な最重要課題であり、国家AI戦略の実施は順調で、AIが経済成長と発展をもたらす可能性があるという認識は過去最高に高まっています。
AIは、単なる技術的な課題にとどまらず、アジア太平洋地域全体の経済成長とデジタル貿易推進の中核的な原動力となりつつあります。資本と労働の関係に変革をもたらし、よりサステナブルで包摂性のある経済成長を促すことができるAIは、社会にとっても大きな意味を持っているのです。
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