ケア(思いやり)、シェア(分かち合い)、デア(大胆さ) – オープンサイエンスが地球を救う鍵となる理由
オープンサイエンスは、気候イノベーションを支える力です。 Image: Unsplash/NOAA
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科学
- オープンサイエンスは、気候イノベーションを促進する鍵となります。
- 国連気候変動枠組条約第28 回締約国会議 (COP28)において、気候変動の緩和策を前進させるためには知識の共有が不可欠です。
- 政府と大学は、公的資金が投入された研究を普及させる上で重要な役割を担っています。
今日の最大の地球規模課題である気候変動。持続可能な未来の構築には、「ベーシック・ヒューマン・ニーズ(人が生きていく上で最低限必要なもの)」と持続可能な気候変動対策を調和させることが重要です。人々の意識やグローバルなコミットメントの高まりにかかわりなく、進展は遅々としており、時に不十分でさえあります。この課題に対処する上で不可欠なのがオープンサイエンスです。イノベーションを促進し、変革的なソリューションの開発を加速させ、行き詰まりを打破するために重要な役割を担うことができるのです。
地球は、全ての生命に深刻な影響を及ぼすいくつかの後戻りできない転換期を迎えようとしており、そのことからも、気候変動は、緊急かつ広範な行動を必要とする非常事態であることがわかります。ポツダム気候影響研究所のヨハン・ロックストローム所長は、あと6年で地球の炭素予算を使い切ってしまうと警告しており、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えるためには、年間排出量の急激な削減が不可欠です。
ドバイで開催される国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)は、本格的な気候変動の緩和に向けた転換点となるでしょう。11月に開催されたフォーリング・ウォールズ・サイエンス・サミットにおける行動に関するセッションで、ロックストーロム所長は次のように語りました。「今、成果を出さなければなりません。公正な方法で、説明責任を果たし、科学と協調し、資金を用意することが急務です。COP28は、『緩和のためのCOP』となることが期待され、化石燃料を段階的に廃止するための信頼できる道筋を示す必要があります」。
同サミットでは、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)グローバル・イノベーション・ハブのマサンバ・ティオエ氏も緩和、説明責任、公正な行動の必要性に同調し、パラダイムシフトが必要であると強調しました。私たちのアプローチの中核に、「ケア(思いやり)、シェア(分かち合い)、デア(大胆さ)」を据える必要があります。つまり、人と地球を真に思いやり、オープンサイエンスを通じて知識を共有し、ニーズに基づく野心的な目標を設定することを軸に置くのです。科学的な洞察に従って行動し、資源を公平に分配する時が来ています。
知識の普及を促進するオープンアクセス
気候危機に対処する上で極めて重要なのは、科学的な知識に広くアクセスできること。現行のシステムでは、ザブスクリプション制度により科学研究の3分の2が有料でアクセス制限があり、気候変動に関する研究の多くもここに含まれます。こうした制限は、行動の進展を妨げます。一方、知識の普及を促進するオープンアクセスモデルを用いることで、重要な研究成果をすべてのステークホルダーに広めることができます。新型コロナウイルスワクチンの迅速な開発と世界的な普及は、オープンな協働とアクセス可能な研究の力を証明しました。
フロンティアーズ・リサーチ・ファンデーションは、オープンサイエンスと知識へのアクセスを促進させるため、「オープンサイエンス憲章(The Open Science Charter)」を発表し、2030年までに、公的資金を受けたすべての学術ジャーナルを完全なオープンアクセスモデルに移行することを、政府、研究機関、資金提供者に呼びかけています。同団体は、科学研究へのより公平なアクセスと、研究成果の普及に充てられる公的資金の透明性を確保することで、科学に対する市民の信頼回復を目指しています。この憲章は、12月2日、ドバイで開催されるCOP28のパネル「Open Science for Inclusive and Transformative Climate and Sustainability Innovation」において、提示される予定です。(憲章の詳細はこちら)
持続可能な未来の構築には、オープンサイエンスとそのアプローチにより生まれるソリューションが極めて重要になります。フロンティアーズ・リサーチ・ファンデーションは、2022年に「フロンティアーズ・プラネット賞(Frontiers Planet Prize)」を創設し、持続可能な地球のための優れた科学研究を表彰しています。選ばれる3人の受賞者には100万スイスフランが贈られます。「この賞は、『バタフライ効果』を生むこと、つまり、持続可能な地球の未来に向けた、革新的な科学的アプローチやソリューションの開発を加速させることを目的としています」と、フロンティアーズ・プラネット賞のディレクター、ジャン=クロード・ブルゲルマン氏は述べています。
パブリックセクターの役割
クリーンエネルギー経済への移行は、科学的知識への幅広いアクセスと、エビデンスに基づく政治的意思決定にかかっています。イノベーターが実用的なソリューション生み出すためには、政府と大学が、税金で賄われた研究の成果を即時かつ無制限に共有する必要があります。これを義務付けることは、科学に基づくソリューション開発を飛躍的に加速させるでしょう。欧州委員会をはじめとする研究への資金提供者は、公的助成金を得た研究をオープンなリポジトリやジャーナルで公開することを目的とする「プランS(Plan S)」などの取り組みを進めています。
英国研究・イノベーション機構(UKRI)、欧州研究評議会(ERC)、ウェルカム・トラストなどの研究助成機関も、資金提供する研究にこうした方針を適用しています。2022年には、米国ホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)が、税金で賄われた研究の成果を2025年までにすべて一般公開することを義務付けるガイドラインを策定しました。また、現在NASAは、公的資金が充てられた科学研究の透明性、包括性、アクセシビリティ、再現性を促進し、オープンサイエンスの文化の育成を目指す「オープンソース・サイエンス・イニシアチブ(Open-Source Science Initiative)」を推進しています。こうした流れは、世界中に広げられていく必要があります。
迅速な行動が求められる気候危機への持続可能なソリューションを生む上で、科学は中心的な役割を果たし、また、知識の共有を約束するオープンサイエンスは、気候変動対策を前進させ、ソリューションの提供を可能にします。COP28を目前に控え、言葉に行動を伴わせる時が来ています。地球の存続を左右するのは、ケア(思いやり)、シェア(分かち合い)、デア(大胆さ)なのです。
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