注目すべき2020年代の宇宙ミッション

宇宙開発への支出は、2020年に90億ドル引き上げられています。

宇宙開発への支出は、2020年に90億ドル引き上げられています。 Image: Unsplash/NASA

Ian Shine
Senior Writer, Forum Agenda
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  • 2020年代に計画されている多くの宇宙ミッションと共に、月やその他の宇宙空間への到達を目指す勢いが世界中で高まっています。
  • NASAの「アルテミス3」は、人類を再び月面へ戻すことを目指し、他の宇宙機関は、火星や水星などへのミッションを計画しています。
  • 世界経済フォーラムのブリーフィングペーパー「宇宙技術が地球上の生活に恩恵をもたらす6つの方法(Six Was Space Technologies Benefit Life on Earth)」によると、宇宙での科学研究は、健康科学、材料科学、ロボット工学、その他の技術への理解の新境地を開拓する手助けをしています。


「私たちは皆、月とその先を目指すことができる」

8月にインドの無人月面探査機が月の南極に歴史的な着陸を果たした後に、同国のナレンドラ・モディ首相が語ったこの言葉は、今、現実のものになりつつあります。

月およびその他の宇宙空間への到達を目指す勢いが世界中で高まっており、2020年代には多くの宇宙ミッションが計画されています。

日本は、インドの後を追うように、月面着陸を目指す探査機「SLIM」を搭載した「H2A」ロケットを9月初旬に打ち上げました。インドのチャンドラヤーン3号が将来の月探査を支える可能性のある水氷の発見を目指しているのに対し、日本のSLIMは、降りたい場所をピンポイントで狙って精度100メートル以下で降下することができる特徴を生かして、月への「高精度着陸」が可能であることを証明しようとしています。

増加する宇宙開発への支出

宇宙財団によると、各国政府は、2022年に宇宙開発への支出を90億ドル増加させています。これは、国防費の45%を占めるようになったことを意味し、1年前の41%から増加しています。そして、宇宙探査は国だけのものではなく、企業による宇宙プログラム開発も勢いを増しています

こうした流れは、宇宙探査の可能性を広げ、地球が直面している最大の課題のいくつかに取り組む手助けになるかもしれません。

宇宙研究は、地球が直面している最大の課題への答えを見つける鍵となっています。
宇宙研究は、地球が直面している最大の課題への答えを見つける鍵となっています。 Image: World Economic Forum

「地球を周回する人工衛星は、最も正確な気象情報を提供し、迫る暴風雨を警告します。毎日気候を観測することで、気候変動の進行速度とその影響を追跡する助けとなります」と、世界経済フォーラムのブリーフィングペーパー「宇宙技術が地球上の生活に恩恵をもたらす6つの方法(Six Was Space Technologies Benefit Life on Earth)」では述べられています。「軌道上で行われる科学研究は、健康科学、材料科学、ロボット工学、その他の技術への理解の新境地を開拓する手助けをしています。」

本稿では、2020年代に計画されている最も重要な宇宙ミッションのいくつかを紹介します。

NASAのアルテミス3:人類を月に戻す

2025年の実施が予定されている、有人月面着陸プロジェクト「アルテミス3」ミッションが成功すれば、50年ぶりに人類が月面を歩くことができるかもしれません。

インドと同様に、米国の宇宙機関NASAも月の南極付近の探査を計画している。宇宙飛行士は、着陸後、地質調査のために写真やビデオを撮影する予定です。また、太陽系全体の理解を深めるため、サンプルの採取も行うことになっています。

アルテミス3は、人類を再び月面へ戻すことができるかもしれません。
アルテミス3は、人類を再び月面へ戻すことができるかもしれません。 Image: NASA


「このミッションは、人類が一貫して月にアクセスし、有人惑星探査ミッションが手の届くところにある未来を切り拓くでしょう」と、NASAは述べています。さらに、アルテミス3により蓄積された知識と技術発展は、人類初の火星探査への道を拓く助けになるだろうと強調しています。

ヨーロッパのエクソマーズ:赤星の探査

火星に生命は存在するのでしょうか。あるいは、生命は存在していたのでしょうか。2008年に打ち上げられた欧州宇宙機関(ESA)の火星探査機「エクソマーズ」のミッションは、それを突き止めようとしています。

この火星探査ミッションの目的は、自走型の火星探査車「ロザリンド・フランク」を火星の表面に送り込み、地質学的サンプルを採取するために地下2メートルまで掘削を行うこと。別の探査車は、火星の大気に含まれている微量ガスを調査します。

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エクソマーズの着陸は2030年に予定されていますが、そのタイミングが重要になります。ミッションは6ヶ月の研究期間を要しますが、火星の北半球の冬は大量の塵が舞い上がり、探査機の機能に支障をきたす可能性があるため、冬が到来する前に出発する必要があります。

また、アラブ首長国連邦(UAE)も火星でのミッションを手がけています。UAEは、2021年に火星探査機「ホープ」を火星周回軌道に投入。ホープが撮影した写真は、火星全体を一望できる新しい地図の作成につながりました。UAEは、2117年までに火星に人類が居住できる最初の都市を建設するという長期目標を掲げています

日本のMMX: 火星の衛星に向かう

宇宙航空研究開発機構(JAXA)による火星衛星探査計画「Martian Moons eXploration(MM X)」は、2025年に火星周回軌道に投入され、火星の衛星フォボスを探査する予定です。

フォボス表面には、隕石衝突により火星表面から吹き飛ばされたサンプルが降り積もっていると考えられており、JAXAは、生命の痕跡を含む火星表層からのサンプルを世界で初めて地球に持ち帰ることを目指しています

国だけでなく、企業も進める宇宙開発。
国だけでなく、企業も進める宇宙開発。 Image: Visual Capitalist

「このミッションの主要な目標は、2つの火星衛星の起源や火星圏(火星、フォボス、ダイモス)の進化の過程を明らかにすることです」と、JAXA。「このシステムは、太陽系の惑星形成の謎を解く鍵を得ることに貢献します。」

スペースXのファルコン9:宇宙にインターネットを

イーロン・マスク氏の会社、スペースXは、軌道に乗るためのコストを劇的に削減する再使用可能なロケットが、宇宙探査におけるブレークスルーとなるだろうと述べています

現在、ほとんどのロケットは一度しか使用されないが、スペースXは、世界で初めて商用用ロケットの再使用を成し遂げました。

スペースXの「ファルコン9」は、スターリンクと名付けられた宇宙ベースのインターネット通信システムを構築する計画の一環として打ち上げられる予定です。これにより、世界中で高速インターネットが利用できるようになると、同社は述べています。

ベピコロンボ:水星へ向かう

水星は太陽系で最も小さい惑星であり、太陽系の中では最も探査が進んでいません。2018年に打ち上げられたESAの「ベピコロンボ」は、一連の惑星スイングバイを経て2025年に水星周回軌道へ投入される予定です。

ベピコロンボは、水星周回軌道に入る史上2番目のミッションです。太陽に最も近い惑星でその表面は最高430℃にも達する水星に、磁場があるのか、なぜ極地のクレーターに氷があるのかなどについて調査をします。

「水星は、他の恒星を周回する太陽系外惑星を研究する科学者にとって、特に興味深い存在だ」と、NGOの惑星協会は述べています。「何千もの既知の太陽系外惑星が、恒星に極めて近い軌道を周回しています。私たちの裏庭にあるとも表現できる水星を研究することで、これらの軌道が近接している惑星がどのようなものかをより理解することができるでしょう。」

中国の嫦娥6号:月の岩石サンプルを採取する

2024年5月に打ち上げが予定されている中国の月面探査機「嫦娥6号(Chang’e-6)」は、4つの宇宙船で構成されており、このミッションは、月の裏側の南半球のアポロ盆地として知られる地域の岩石サンプルを採取することを目的としています。

この盆地は、幅538kmのクレーターで、玄武岩質の溶岩が月面の窪みに流れ込んで形成される「(月面の)海」に覆われていると考えられています。

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嫦娥6号は、月の歴史をより詳しく知ることを目的とし、2kg泥やその他サンプルが採取される予定です。2026年と2028年には、嫦娥7号と8号のミッションを計画している中国は、2030年までに月面に宇宙飛行士を送り込みたいとしています

NASAのドラゴンフライとダヴィンチ:土星と金星への旅

NASAの「ドラゴンフライ」は、2026年に打ち上げられ、2034年に土星圏に到着します。このミッションは、2年をかけて地表のサンプルを採取し、ハビタビリティ(居住可能性)を調査します。

ドラゴンフライは、土星に向かう途中で金星を通過しますが、2029年に打ち上げが予定されている金星探査ミッション「ダヴィンチ」は、太陽系で地球に最も近い金星にまっすぐ向かいます。

このミッションの目的は、金星の大気の起源と進化を解明し、そして金星と地球や火星の違いやその理由をより良く理解すること。また、金星にかつて海があったのかを探り、火山活動のレベルも調査します。

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