公平性に欠ける、持続可能なモビリティへの転換:この課題に取り組む3人のCEOの見解

電気二輪車は、新興国市場におけるモビリティ転換の鍵となります。

電気二輪車は、新興国市場におけるモビリティ転換の鍵となります。 Image: Reuters/Monicah Mwangi

Maya Ben Dror
Industry Manager, Automotive and New Mobility & Advanced Manufacturing, World Economic Forum Geneva
Jasmeet Khurana
Lead, Climate Technology, World Economic Forum
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モビリティ

  • 道路移動による炭素排出量は、世界の総排出量の4分の1以上を占めており、気候変動の影響を緩和させるためには、道路移動の脱炭素化が不可欠です。
  • 新興国市場は、電気二輪車や電気三輪自動車の導入拡大、現地での自動車製造など、地域のソリューションに積極的に投資しています。
  • 3人の最高経営責任者が、インド、ブラジル、アフリカにおけるサステナブルなモビリティに特化したアプローチを紹介します。


エネルギー関連の世界の炭素排出量の約4分の1
を占めている道路移動による炭素排出量は、増加の一途をたどっており、世界規模で気候危機を緩和する上で、道路移動の脱炭素化は極めて重要です。自動車は、世界的に増加する炭素排出源の中で最も大きな割合を占めており、排気ガスゼロへの転換、特に先進国市場では、電気自動車(EV)への転換に関心が高まっています。

主な先進国市場が、内燃機関自動車の段階的廃止と電気自動車バリューチェーンへの投資に力を注いでいることは、驚きではありません。サプライチェーンの混乱や地政学的ショック、商品・エネルギー価格の高騰といった要因がありながらも、幸いなことに、昨年の電気自動車(ハイブリッド車および純粋な電気自動車)の販売台数は1,000万台を超え、2021年比で55%増加しました。

しかし、すべての市場が気候危機の緩和に必要なペースで自動車の電化を進められるわけではありません。いくつかの新興国市場では、自動車の所有率は極めて低い水準で推移しているにもかかわらず、販売台数は伸びています。こうした状況を踏まえると、モビリティを総合的な視点で捉え、市場によるこうした相違を反映させた協力的なアプローチをとる必要があります。

中国、欧州、米国が、電気自動車の販売を独占

2022年の世界の電気自動車販売台数の約95%を、中国、欧州、米国が占めています。中国以外の新興・開発途上国が、電気自動車のグローバル市場に占める割合はごくわずかです。

多くの主要新興国や開発途上国では、二輪車や三輪自動車のような都市中心部の小型のモビリティソリューションや、通勤のためのシェアモビリティが交通手段となっています。

2021年には、一日当たり石油需要のうち、電気二輪車と電気三輪自動車が100万バレルの需要削減を実現しました。これは、電気自動車によって年間に削減された全石油需要の66%に相当します。このセグメントの電化は、多くの人が想像する以上に、世界的に重要な意味を持つことがわかります。

しかし、新興国の大規模な自動車市場であっても、政府は、長期にわたり相対的に優位性のある自動車や部品の組み立て・製造に投資することがより魅力的だと考えています。

世界経済フォーラムは、この課題について、3人の最高経営責任者(CEO)およびシニアエグゼクティブに見解を求めました。以下にそれをご紹介します。

「電気二輪車の普及により進む、新興国市場のエネルギー転換」

TVSモーター 取締役兼CEO、K.N. ラダクリシュナン氏

二輪車は、アジアとアフリカの複数の新興国市場で最も重要な移動手段であり、インドは、世界最大の二輪車市場です。インドを含む多くの新興国市場では、電気二輪車の導入がモビリティのエネルギー転換を先導しています。

電気二輪車の販売に牽引され、インド産業における電気自動車の導入ペースは加速しており、販売台数は2022年に3倍に増加、その伸びは2023年に入っても続いています。インド政府と地方政府がインセンティブという形で支援を提供していることが、この成長を後押ししています。

政府は、電気自動車の導入加速に関してビジョンを掲げて取り組みを進めています。相手先ブランド製造企業(OEM)は、このビジョンの実現に貢献するため、テクノロジーへの投資と能力構築を進めています。

成長を促進する以外にも、政府は、2022年から2023年にかけて、一貫した政策および規制介入を行い、消費者を保護する目的で電気二輪車の品質標準化と安全水準の強化を図りました。

これが業界に対する公式の承認につながり、その結果、低品質、低コストという製品の選択から、品質および安全性要件への適合を優先した製品へと、製品構成が変化しました。

安全性の強化、ローカライゼーション、品質規範は、3つの影響を及ぼします。第一に、顧客が受け取る製品の品質を向上させます。第二に、業界の公認化が促され、企業の質が保証されます。第三に、製品の品質がグローバルな水準と並び、業界で海外輸出が実現します。

内燃機関の二輪車と同様、インドに対しては、その大規模な国内市場に加え、電気二輪車輸出の主要ハブとして台頭することも期待されています。

インドだけでなく、新興国全体で電気二輪車に対する消費者の関心が高まっている理由として、電気自動車の総運用コストとテクノロジー提案が魅力的なことが挙げられます。燃料価格の高騰により、この傾向は一段と高まっています。

積極的な政策支援によって消費者の関心が高まるにつれ、電気自動車業界は急成長を遂げると予想されます。電気二輪車は、新興国市場の数百万の人々に低コストのモビリティを提供するだけでなく、クリーンな都市やネットゼロの移動手段、エネルギー安全保障を実現するパズルの重要なピースにもなるでしょう。

「租税優遇措置と刺激策が脱炭素化を加速」

ランドンコープ 社長、ダニエル・ランドン氏

新興国市場で道路輸送の脱炭素化を加速させる上で最も困難な課題は、現地の現実に対する共通理解が不足していることです。次の2つの基本的な提案が、この課題を乗り越える足掛かりとなるでしょう。

企業が進出していない、または、企業の競争力がまだ十分ではない新しい市場の発展を促進するプログラムを考案する

租税優遇措置を導入し、サステナブルという観点から、製品の開発および製品への変革に対する現地起業家の一層積極的な投資を促す

この提案は、該当業界のチェーンはもちろんのこと、インフラ企業や関連サービスなど他業界のチェーンにも利益をもたらすでしょう。これが最も適切な道筋であることは、ブラジルにおける私たちの経験から明らかです。

ブラジルがグリーン経済をリードする潜在能力を持っていることが、そう言える理由の一つですが、それだけではありません。ブラジルが多様な特性を持ち、未だに官僚主義に直面していることを考慮すると、私たちは適応できる水準が高いというのも、その理由です。

例えば、ガソリンとエタノールの両方で走行可能な多燃料エンジンを搭載した自動車は、ブラジルで強い存在感を示しています。ブラジルでバイオ燃料を開発できる可能性も高まっています。

もう一つの例は、ランドンコープがパートナーやスタートアップと共同開発した電動副車軸システムです。このシステムは、トラックの化石燃料消費を最大25%削減することができ、バスやトラクターなどほかの重車両でこのソリューションを活用できる可能性も秘めています。

このメカニズムは、南米、アフリカ、中央アジアの国々で幅広く適用できるかもしれません。これらの地域では、救済のための条件が極めて多岐にわたり、インフラが乏しいため、副車軸をより集中的に活用することが可能であり、その結果、自然に有害なその他の消費を減らすことができます。

これは、当社が生んだテクノロジーの一つに過ぎません。当社はこのほか、合成材などの軽量材を用いた自動車部品や、ニオブをナノメートル規模で利用する自動車部品の設計にも多額の投資を行っています。このテクノロジーは独占的特許を取得しており、塗料や鋳造部品を中心とする多数の素材の特性を向上させることができます。

「2023年はアフリカの自動車産業にとって段階的変化の年」

アフリカ自動車企業連合(AAAM)CEO、デイブ・コフィー氏

アフリカの自動車部門には、産業化と成長を実現する態勢が整っています。ハブ国となるガーナ、コートジボワール、ナイジェリア、エジプト、ケニアの5カ国が先進的な自動車政策を実施、あるいは、そうした政策を承認、実施する予定であり、2023年は、アフリカの自動車産業にとって段階的変化の年になるでしょう。

他のアフリカ諸国は、自国の競争優位性を模索しています。これまでのところ、モロッコと南アフリカのみが自動車産業の産業化に成功し競争力をつけており、生産台数はおよそ100万台に達しています。

自動車の組み立ては、どこの国でもできるわけではありません。この理解に基づき、ハブ国が自動車を組み立て、近隣諸国とバリューチェーンを共有します。このバリューチェーンは、競争力やサステナビリティに関わる優位性によって決定されます。バリューチェーンを模索、構築させるために、地域間の協力のもと多くの取り組みが行われています。

アフリカには、年間300万台から500万台の中古車が輸入されています。そのため、路上走行に不適格な車が多く、排気ガス基準も時代遅れで、規制のない環境がいまだ広がっています。中古車エコシステムは、手頃な価格のモビリティの鍵ではありますが、中古車は今後、最低基準に適合したアフリカ産車両へ転換していく見通しです。

新しいエネルギーで走行する車への転換への道のりは、価格の手頃さに左右され、モビリティのセグメントによっても異なってくるでしょう。大都市では、二輪車と三輪自動車が公共交通機関とともに転換ペースを設定することになります。

アフリカに輸入される中古車の条件を規制することも、初期段階では炭素排出量の削減に有用でしょう。また、自動車業界を効果的に産業化して成長させ、手頃な価格のモビリティを提供することは、アフリカ大陸に数多くの雇用機会をもたらします。

アフリカ自動車企業連合、アフリカ大陸自由貿易圏事務局、アフリカ連合委員会、国連アフリカ経済委員会、アフリカ輸出入銀行、アフリカ標準化機構は、アフリカ大陸のための自動車戦略を策定しました。この戦略は、2023年2月にボツワナで開催された、アフリカ諸国閣僚評議会において、生きた文書として採択されました。

この戦略には、戦略実行のためのAfCFTA自動車タスクフォースの結成が盛り込まれています。このような提携は、アフリカでは初めてのことであり、アフリカ各国政府による支援が拡大する中で、適切なプレーヤーのための環境が整いつつあります。

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