アグリフードへの革新的なアプローチに、起業家たちの力が必要な理由
持続可能な開発を進めるためには、気候変動がアグリフードシステムに与える影響に対処することが必要不可欠です。I Image: Unsplash/Adrian Infernus
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- 異常気象は、食物の栽培と、私たちの安全で健康的な食生活を脅かしていると同時に、コミュニティや農家を経済的苦境に追い込んでいます。
- 農業は、温室効果ガス排出量の3分の1と、淡水の取水量の70%を占めており、広範な森林破壊を引き起こしています。
- 世界経済フォーラムのニューチャンピオン年次総会2023で、リーダーたちは、今日のアグリフードに関する課題に対する革新的なソリューションを模索する必要性を強調するとともに、「スマーター・クライメート・ファーマーズ・チャレンジ」の開始を発表しました。
コミュニティと農家は、気候変動による厳しい影響を先頭に立って受けており、それに伴い食料生産と消費に及ぼす影響もますます大きくなっています。干ばつ、砂漠化の拡大、土地の劣化が進行していると同時に、不安定な降雨、大規模な洪水、強まる暴風雨、急激な気温変化などの発生頻度は高まるばかりです。
こうした課題により、食物の栽培と、私たちの安全で健康的な食生活は危ぶまれるようになってきました。同時に、気候変動により、主に農作物や収穫物から得られる収入源が脅かされ、経済的苦境に追い込まれる人々もいます。
「食料システムが占める今日の世界の総GDPシェアは、12%にあたる10兆ドル以上に相当し、全ての職業の40%が、食料システムに何らかの形で関係しています。これは、非常に大きな数値です」と、世界経済フォーラムの食料・水部門責任者であるタニア・ストラウスは、ニューチャンピオン年次総会2023で語りました。
アグリフードが抱える気候関連の課題への取り組み
アグリフードシステムは、農場から食卓を経て、その先にも続く食の旅路を網羅した概念です。食は、私たちの生活のあらゆる側面に関わり、地球の隅々にまで行き届いています。しかし、現在の食料生産は、計り知れない可能性をポジティブな影響として解き放つのではなく、気候環境に悪影響を及ぼしています。
農業は、温室効果ガス排出量の3分の1と、淡水の取水量の70%を占めており、広範な森林破壊を引き起こしています。農業が異常気象をエスカレートさせているということを、私たちは認識する必要があります。
SDGs達成に向け、課題解決に必要なアイデアや行動を触発する、世界経済フォーラムのオープンイノベーション・プラットフォーム、アップリンク・(UpLink)の「スマーター・クライメート・ファーマーズ・チャレンジ(Smarter Climate Farmers Challenge)」では、こうした課題に取り組むべく、食の企業家たちに行動を呼びかけています。
持続可能な開発を進めるためには、気候変動がアグリフードシステムに及ぼす影響に対処することが極めて重要であり、特に、2030アジェンダを達成するためにはすぐに行動を起こす必要があります。この課題に効果的に取り組むためには、気候変動への適応策と緩和策を、農業の実践に統合する包括的な戦略、すなわち、レジリエント(強靭)な作物品種、持続可能な土地管理技術、気候変動に対応した農業技術への投資が必要になります。
「これらの課題を解決するための技術やイノベーションは、すでに存在してはいますが、必ずしも適応されているとは限らず、大規模には展開されていません」と、ストラウス。「それが、私たちが今日ここに集まった大きな理由です。どうすれば、技術革新だけでなく、需要主導でボトムアップを図るソリューションを生み出すエコシステムやイノベーターに焦点を当てた、課題の対処ができるでしょうか」
既成概念にとらわれない思考
イノベーションは、ソリューションを飛躍させるために不可欠なものです。精密農業、垂直農業、アグロエコロジー(農業生態学)などの最先端技術を活用すれば、環境への影響を最小限に抑えながら、農業生産性を高めることができるでしょう。
しかし、現在の農業のあり方は、飢餓、貧困、気候変動に関する持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた道筋から外れているため、緊急に行動を取ることが求められます。
サウジアラビア王国の経済・計画大臣である、ファイサル・アリブラヒム閣下は、ニューチャンピオン年次総会2023で次のように述べました。「私たちはSDGsの達成に向けた取り組みを加速させており、長期的な持続可能性のために食料システムの変革を推進するため、食の分野の起業家精神を持つステークホルダーたちと協力してきました」
気候とアグリフードのネクサスに関する課題に取り組み、農家を中心とした、あるいは農家によって推進される革新的なソリューションを取り入れるための協調的な努力を積むことで、私たちは、持続可能でレジリエントなアグリフードシステムへの道と、すべての人にとってより良く、より安全な未来を切り開くことができるでしょう。
スマーター・クライメート・ファーマーズ・チャレンジ
中国の天津で開催されたニューチャンピオン年次総会2023で、スマーター・クライメート・ファーマーズ・チャレンジの開始が発表されました。これは、アップリンクとサウジアラビア王国経済計画省とのパートナーシップによる「乾燥気候におけるフードエコシステム・チャレンジ(Food Ecosystems in Arid Climates Challenge)」に次ぐ、食料に関するチャレンジの第二弾です。
私たちは、気候変動に効果的に対処し、農業の持続可能な未来を確かなものにするために、食料生産における変革を推進する決意をもち、このチャレンジに取り組みます。これは、SDGsと強調するものです。私たちは、このチャレンジを全面的に支持し、経済的機会を提供する形で達成することを目指しています。
「私たちは、共に飢餓と闘い、生活を改善し、すべての人のための持続可能な未来を創造することができます」と、アリブラヒム閣下は、ニューチャンピオン年次総会2023で述べました。
スマーター・クライメート・ファーマーズ・チャレンジでは、食料生産を改善、より良い暮らしの促進、気候変動への対応、フードエコシステムにおける地球資源の効率的な管理につながる気候スマートな農業のアプローチを支持するソリューションを求めています。
複雑な課題に対する強力なアイデア
このチャレンジでは、1つまたは複数の重点分野に焦点を当てたソリューションを世界中から募集しています。
知識、技能、教育:食料生産、気候適応テクニック、レジリエンス、テクノロジー、市場、投資とコミュニティ形成、教育と気候スマートで栄養豊富な食の行動に向けた意思決定に関する農家の知識と技能の拡大を目指します。
資源効率と持続可能性:食料生産において、持続可能で効率的な土地利用ソリューション、水効率、再生可能農業、炭素隔離、CO2排出量を実質ゼロもしくは低排出を実現する農業を目指します。
包括的テクノロジー:生産から消費に至るまで、テクノロジーは、農家が、気候変動の影響に負けない食料生産と、温室効果ガス排出を抑制する手助けとなります。モバイル接続、ドローン、AI(人工知能)、垂直農法、土着技術、持続可能なガストロノミーなどのソリューションは、手頃な価格で、現場での新たな雇用機会を創出します。
革新的な資金調達:過酷な条件下での農業が、気候変動によるインパクトや長引くダメージに対処するために必要とする多くの資金を、革新的な方法で調達することを目指します。
今こそ、行動を起こす時
応募されたソリューションは、対応方法、インパクト指標、ビジネスモデル、ステージ、経営陣、女性リーダーの役割、社会経済的・環境的インパクト、公正な農村移行、パートナーシップ、革新性、再現性、投資可能性、そして、このチャレンジが取り組む特定の気候課題との関連性などに基づき、その質が評価されます。
このチャレンジには、バルカ・ファンド、カカオ・キャピタル、第四次産業革命サウジアラビアセンター、エフェカ、サウジアラビア商工会議所連合会、サウジアラビア水・環境・農務省、ネオム、ネスレ、ルーツ・ベンチャーズ、国連砂漠化対処条約(UNCCD)、世界経済フォーラムが、支援パートナーとして参加しています。
ネスレのグローバル・パブリック・アフェアーズ・マネージャーであるクリスチャン・ヴースヴーラス氏は、世界的な食料危機を気候危機が悪化させていると指摘し、再生可能な食料システムへの大規模な移行を実現するためには、緊急に行動を起こす必要があると強調しています。
「食料を効率的に栽培し、増加する人口を養う良い方法を見つけるためには、より多くのアイデア、テクノロジー、そして、資金が必要です」
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