製造業おけるデジタルツイン活用持続可能重視れるべき理由

BMW社は、デジタルツインを利用して工場間の国際的なコラボレーションを進めています。
BMW社は、デジタルツインを利用して工場間の国際的なコラボレーションを進めています。
イメージ: Image:REUTERS/Leonhard Foeger
  • デジタルツインにより、製造業は現実世界のシナリオでテストしているかのように仮想空間でテストを行い、そこから学習することが可能になっています。
  • 現在、製造業では、生産プロセスの改善や持続可能性といった面で、デジタルツインの活用に焦点が当てられています。
  • デジタルツインの発展に伴い、製造業は、生産と持続可能性の指標を一つのデジタルツインに組み込んで、そのモデルから最大限のメリットを得られるようにする必要があります

新しいテクノロジーではないものの、デジタルツイン(現実世界の物やシステムを仮想的に表現したもの)は、第四次産業革命を推進していく上で欠かすことのできない重要なものです。自動車から都市まで幅広い分野において、常にリアルタイムのデータ収集とフィードバックが繰り返されることにより、デジタルツインは現実世界を正確に仮想空間に表すことができるようになります。これにより、製造業は、実際の現場でテストしているかのようにデジタルツインを活用して、学習することができます。

現在、製造業がデジタルツインを活用する目的は様々ですが、最も多いのは生産プロセスの改善や持続可能性に焦点を当てたものです。生産デジタルツインは、コストの削減や効率性の向上によって製造工程の改善に役立っています。これらは有益な効果ではありますが、多くの場合、副次的な効果が見過ごされがちです。新たに効率的なオペレーションを行うことで、エネルギーや水の消費、廃棄物や排出物を削減し、環境フットプリントの縮小につながります。同様に、第一の目的ではないものの、持続可能性に焦点を当てたデジタルツインを導入することで、コスト削減や効率性向上も期待することができます。

生産デジタルツインと持続可能性重視のデジタルツインを別物として捉えることは、製造業にとって機会損失となり、生産のあらゆる側面を取り入れないと、不完全なモデルになってしまいます。デジタルツインの発展に伴い、製造業は、生産と持続可能性の指標を一つのデジタルツインに組み込んで、そのモデルから最大限のメリットを得られるようにする必要があります。

デジタルツインとは

デジタルツインは、情報ミラーモデルまたは現実世界のシステムの正確な3D仮想表現と表わすことができます。「双子」がさまざまなシナリオでどのように動作するかをシミュレーションし、オペレーションのボトルネックを特定。予想される結果をリアルタイムの生産と比較します。多くの場合、デジタルツインはこのように利用されています。

デジタルツインは、現実世界のツインを監視するさまざまなセンサーからデータを受け取ります。例えば、製造現場では、センサーによって性能出力(穴あけ数や消費エネルギーなど)や環境情報(気象など)といった幅広い情報を測定することができます。こうして収集された情報を機械学習やAI(人工知能)を使って分析します。

リアルツインがデジタルツインにデータを送り、デジタルツインが改善点を特定して解決策を提供する。こうした継続的な改善を可能にするのが、デジタルツインシステムの利点です。デジタルツインによって示された解決策を現実の世界で取り入れて、そこからまた新たなサイクルが始まります。このようなサービスの代表例が日立のデジタルツインソリューションです。製造現場の機械ごとにデジタルツインを作成し、常にデータを受信します。デジタルツインにより、工場では課題を早期かつ頻繁に特定することができ、重大なトラブルの発生を防ぐ働きをしています。

デジタルツインを活用しているもう一つの分野は自動車産業です。BMW社は多くの工場をデジタル化し、グーグルマップのストリートビューに似たデジタルツールBMW iFACTORYを構築しました。BMW社によると、このデジタルツインによって工場間の国際的なコラボレーションが促進され、それにより、生産チームはBMW iFactoryを使って世界中のあらゆる工場を訪問し、現場から定量的なデータを得て、ベストプラクティスを比較することができます。

製造業におけるデジタルツイン:生産性と持続可能性

世界中で多くの製造業が、デジタルツインを利用して生産効率を高めています。世界経済フォーラムのグローバル・ライトハウス(灯台=指針)・ネットワーク(Global Lighthouse Network (GLN))が最近発表した白書では、デジタルトランスフォーメーションの分野で先進的な取り組みをしている工場が紹介されています。これらの工場の多くは、ビジネスを成功させる重要な鍵として、プロセスに焦点を当てたデジタルツインを重視しています。

その一例が、韓国の昌原(チャンウォン)にある LGエレクトロニクス社の工場です。この工場では、30秒ごとに更新されるリアルタイムの生産データを継続的にシステムに統合することによって、組立ラインのビジュアルシミュレーションツールをデジタルツインに変換しました。その結果、生産性を17%、製品品質を70%向上させ、エネルギー消費量を30%削減することに成功しました。

また、中国の広州にあるプロクター・アンド・ギャンブル社の工場は、デジタルツインを導入して倉庫業務の改善を図り、三年間で99.9%の納期遵守、30%の在庫削減、15%の物流コスト削減を達成しました。

これらの例をはじめ、多くの生産デジタルツインでは、副次的な効果としての持続可能性が見過ごされています。新たに効率化されたオペレーションにより、エネルギー消費と廃棄物が削減され、環境フットプリントの低減につながっているのです。前述のように、LGエレクトロニクス社の工場では、エネルギー消費量を30%削減、プロクター・アンド・ギャンブル社の工場では、在庫を30%削減しました。これらは資源の消費を大幅に減らし、従来よりも持続可能な生産工程を実現しています。

同様に、持続可能性重視のデジタルツインは工場の持続可能性を高めることに加え、多くの場合、間接的に効率性向上とコスト削減にもつながります。例えば、シュナイダーエレクトリック社のル・ヴォードライユ拠点では、工場設備でデジタルツインを使用しています。「ノー・エクスキューズ」フレームワーク(The "No-Excuse" Framework”によると、シュナイダーエレクトリック社はデータを活用することで、エネルギー管理の最適化(-25%)、廃棄材料の削減(-17%)、二酸化炭素排出の削減(-25%)に至っています。デジタルツインの導入によって、2025年までにネットゼロ実現というシュナイダーエレクトリック社の目標達成への取り組みが促される一方で、費用対効果も高く、より効率的なプロセスが構築されています。

前進する:一つのデジタルツインへ

2022年の世界経済フォーラムとのインタビューで、シュナイダーエレクトリック社の最高経営責任者(CEO)であるピーター・ハーウェック氏はこう述べています。「デジタル化とサステナビリティを効果的に統合して、それらが適切に組み合わされると、より深く、より広い変化が生まれます」。

デジタルツインは、同じマインドセットで設計する必要があります。デジタルツインは、あらかじめ決められた指標や目標に基づいて解決策を導き出します。プロセスの効率性と持続可能性を主な指標として統合することによって、特定された課題と提案された改善策は事業全体に及ぶ影響を与えるものになるでしょう。

ウエスタンデジタル社が持続可能性を大きく向上させた方法。 Image:世界経済フォーラム、グローバル・ライトハウス(灯台=指針)・ネットワーク2022

数は少ないものの、デジタル化と持続可能性という二つの点を重視したデジタルツインは未来のアイデアではありません。マレーシアのペナンにあるウエスタンデジタル社は、デジタルツインを使って「完全自動化」システムを作りました。照明が消えていてもシステムを稼働できる「完全自動化製造」は、持続可能性と効率性の目標を統合することで、プロセス全体を変革するものです。過去四年間において、この施設は年平均成長率(CAGR)43%を達成した一方で、完全自動化製造によってエネルギー消費を41%削減しました。

持続可能性と生産効率は互いに補強し合うものです。すべての側面をデジタルツインモデルに取り込むことができなければ、不完全なデジタル化となり、継続的な改善を妨げることになります。持続可能性や効率性を結果ではなく副産物として捉えた場合、その情報はデジタルツインモデルには反映されません。その結果、得られた知見を基にしてさらなる改善を促すことができないのです。デジタルツインの発展に伴い、持続可能性と生産効率は、複雑なシステムの中で統合される構成要素、あるいは産業メタバースの中核的な構成要素として、捉えられなければなりません。

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著者:

Centre Coordinator, Shaping the Future of Advanced Manufacturing and Supply Chains, World Economic Forum Geneva

この記事は著者の意見を反映したものであり、世界経済フォーラムの主張によるものではありません。

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