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データとAIが推進する、アジアの持続可能な農業の未来

AIが農業の生産量向上に一役買うかもしれません。

AIが農業の生産量向上に一役買うかもしれません。 Image: Getty Images/KDP/Moment

Ahmed Mazhari
President, Microsoft Asia
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  • アジアは、世界の農地の5分の1の面積しかない中で、世界人口の半数以上を擁しているために、食料危機のリスクさらされています。
  • 気候変動と食料価格の上昇により、アジア地域では10億人以上が十分な食料を得ることができない状況にあり、長期的な食料安全保障が脅かされています。
  • データとAIは、農家がより多くの情報に基づいた意思決定を行い、生産性を高めて収穫を増やすのに役立ちます。

私は、シロンという小さな街で育ちました。「東洋のスコットランド」と呼ばれる美しい避暑地であるこの街は、お茶の栽培が盛んなアッサム地方からそう遠くないインドの北東部に位置しています。バングラデシュとの国境付近の世界で最も雨の多い場所からは、50マイルほど離れたところにあります。

経済的な不平等を目の当たりにして育ったことで、私は、より広いコミュニティが抱えている問題を理解しようと努めることと、多くの人々がただ生きのびるために日々何をしているかを理解することを学びました。私たちは皆、もっとできることがあるはずです。

アジアは、世界の農地の5分の1の面積しかない中で、世界人口の半数以上を擁しています。気候変動と食料価格の上昇は、長期的な食料安全保障に対する重大な脅威であり、アジア地域全体で10億人以上が十分な食料を得ることができていません。この状況は、国連が「前例のない食料緊急事態」と呼ぶ世界的なトレンドの一部です。

農業生産性の向上の鈍化と、天然資源の乱獲、水不足の深刻化が、アジアの食料需要を満たすことを困難にしています。供給が需要に追いつかない限り、この地域がより都市化し、豊かになるにつれて食料価格は上昇し続けるでしょう。増加するアジアの人口をより持続的かつ効率的に養うためには、食料の生産方法を変えなければなりません。

AI(人工知能)、センサー、ドローンなどのテクノロジーは、農業の生産性、食品の安全性、農業食品システムの持続可能性を高めるのに役立ちます。土壌が、より良い農法によって気候変動を緩和したり、カーボンフットプリントを最小限に抑えた製品を顧客に提供したりと、アジアの農業と食品のバリューチェーンは、イノベーションの呼び水となっています。

持続可能な未来の農場を作る

マイクロソフトの目標は、データ駆動型の洞察を民主化し、すべての農家や組織がより多くの成果を上げられるようにすること、そして、農業食品のバリューチェーンをより生産的で透明性の高いものに変革して、生産者に至るまで価値の共有を促進することです。


マイクロソフトは先日、マイクロソフト・アジュール・データマネジャー・フォー・アグリカルチャー(Microsoft Azure Data Manager for Agriculture)のプレビュー版を発表しました。農業データを収集し、変換するための野心的な研究イニシアチブ、ファームビーツ・プロジェクト(Project FarmBeats)から始まったものが、今、タイムリーな商用ソリューションへと発展しています。アジュール・データマネジャー・フォー・アグリカルチャーは、マイクロソフト・インテリジェント・データ・プラットフォームを拡張し、業界固有のデータコネクタと、異種ソースからの農場データを接続する機能を備えています。

例えば、業界のリーダーであるバイエル社のフィールド・ビュー(FieldView)プラットフォームは、アジュール・データマネジャー・フォー・アグリカルチャーの衛星および気象パイプラインからデータを取り込み、生産者の畑に潜在する収穫制限要因に関するインサイトを生成します。また、バイエルは、作物の健康状態、天気予報、作物の成長追跡などに関するタイムリーな洞察を提供する、企業顧客が利用できる一連のデジタルソリューションも開発しています。

データ駆動型農業は、サステナビリティツール「トゥルテラ」を含む、米ミーズリ州の農業協同組合ランド・オレイクのデジタルサービスの基本コンポーネントでもあります。この革新的なデジタルサービスは、さまざまな農法が、農場の水、窒素、炭素に与える影響についての洞察を農家に提供し、土壌の炭素貯留量を追跡できるようにするなど、さまざまな応用が可能です。

一方、インドの農業スタートアップであるバラートアグリ社は、衛星画像からのデータを活用して作物の健康状態を監視し、1/40エーカーという小さな農場を分析しています。今年だけでも、5万人以上の農家がバラートアグリから農場の衛星画像を受け取り、10万エーカー以上の農地での作物の損失を減らすことができると予想されています。

データ駆動型農業

世界的に、データ駆動型農業は、食料安全保障の課題に対処するための最も有望なアプローチの1つとして、その勢いを増しています。国際食糧政策研究所によると、データ駆動型農業の技術は、2050年までに農業の生産性を67%も向上させ、同時に農業と食糧のロスを削減することができるとされています。

しかし、低・中所得国にとっては、新技術を採用するための高いコストが障壁となることも。特に、零細農家が主要なグループであり、4億5千万人がこの地域で消費される食料の80%以上を生産しているアジアでは、これは大きな懸念事項です。

データ駆動型農業は、農場に関する情報を収集することから始まりますが、デジタルインフラが整っていない農村部にとっては、ハードルが高いままです。このデータは、センサー、ドローン、トラクター、気象観測所、衛星画像など、さまざまなソースから取得されるため、手頃な価格のインターネット接続が必要となるのです。

これらのデータストリームは、長期的に使用することで有用なプラクティスを示し、これまでの作物サイクルに基づく提案ができるようなります。それにより、投入量を削減しながら、生産量はより高く、そして、環境への影響を少なくすることができるようになります。

最大限の効果を得るために必要なのは、適切なデータを適切な目的、適切なタイミングで活用すること。しかし、農業・食品システムは、巨大かつ複雑で、断片的な性質を持つため、東南アジアだけで1,000億ドル以上と見られているビッグデータの潜在的な経済価値を引き出すことは、大きな挑戦です。より包括的な成長を確保するためには、零細農家が現代の農業食品バリューチェーンに参加できるようにする必要があるでしょう。

AIで農業データを実用的なインサイトに

土中のセンサーから地球を周回する衛星に至るまで、取得される農業に関する多くのデータが農場全体で生成されていますが、多くの農家や組織は、これらの大量のデータを効果的に活用するための適切なリソースを持ち合わせていないのが実情です。また、農業食品のバリューチェーンは、ステークホルダーや活動が複雑に絡み合っているため、データセットを管理するための相互運用可能なシステムがないまま、サイロ化したままになっています。

しかし、AIはデータのサイロ化を解消し、膨大な量の複雑な農業データを実用的なインサイトに変換することができます。マイクロソフト・リサーチでの長年の研究と、ファームビーツ・プロジェクトで確立したソートリーダーシップに基づき、私たちは「FarmVibes.AI」という、農業のあらゆる段階での意思決定を導くことを目的としたツール群をリリースしました。

クラウド技術で実行されるFarmVibes.AIのワークフローは、土壌の健康状態、気象パターン、炭素隔離、廃棄物の追跡などに関する豊富な予測的・規定的な洞察を提供します。農家が、理想的な肥料の量・使用場所や、気温と風速を予測したり、植え付けや散布のタイミングや場所を知らせたりと、さまざまな農業アプリケーションを支援することができます。

これらの洞察は、気象台のデータ、ドローンや衛星画像などのソースからのデータストリームを組み合わせる、AIを搭載したデータフュージョン技術なしには実現しません。また、AIを活用することで、コスト効率の良い利益を引き出し、デジタル農業ソリューションへのアクセス性を向上させることができます。AIの活用により、必要なセンサーやドローンの数を減らすことができ、農場内のハードウェアのコストを削減することができます。

また、今日の大規模言語モデルの自然言語機能は、テクノロジーに詳しくない農家がこれらの技術をより利用しやすくするのに役立ちます。例えば、「Project FarmVibes.Bot」を通じて、零細農家はシンプルかつ効果的にコミュニケーションをとり、データを照会したり、洞察を伝えたりすることができます。

データとAIが農家をサポートする

クラウド技術とAIに支えられた安価なインターネット接続センサーが利用できるようになると、農家は土壌、機器、家畜などの作業データを取得・追跡できるようになります。AI技術を使えば、農家はそのデータに基づく洞察を得て、貴重な資源を節約しながら、精密農業や収穫量向上のための予測を適用することができます。

また、データとAIは、農家が持つ農場に関する特別な知識や直感を補強し、より多くの情報に基づいた意思決定を行うことができます。より優れた洞察力により、農家は、収穫と生産の効率を高め、食品廃棄物を減らし、栄養価が高く高品質な製品を作ることができるだけでなく、環境への影響を減らし、利害関係者に透明性を提供することができるようになるのです。

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2024年10月4日

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